最高裁判所大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は昨年12月16日、夫
婦同姓規定は憲法に違反しないとする初めての判断を示しました。ただ
し、審理に加わった15人の裁判官のうち5人が違憲と判断しました。
夫婦双方が氏名を保持する権利及び婚姻の自由を保障されるためには、
民法750条を改正して、夫婦別氏という選択肢を新設することが必要
不可欠であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこ
れを怠っているとして、国の立法不作為を、憲法13条、24条や女性
差別撤廃条約(上告審からは憲法14条も追加)に照らして国家賠償法
上の違法性を真正面から問いましたが、訴えは認められませんでした。
判決は、憲法13条について、「氏の変更を強制されない自由」は憲
法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない、憲法
14条についても「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存
在するわけではない」として、いずれも合憲と判断しました。憲法24
条については、「夫婦同氏制は、我が国の社会に定着してきたものであ
り、家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる」とし、
「氏を改める者にとって、アイデンティティの喪失感を抱くなどの不利
益を受ける場合がある」などと女性に偏る不利益を認めながら、「これ
らの不利益は、氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得
る」と判断、「規定は憲法24条に違反しない」と結論づけました。た
だし、「選択的夫婦別氏制度に合理性がないと断ずるものではない」と
した上で、「この種の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべ
き事柄である」と、議論を立法府に委ねました。一方、女性差別撤廃条
約に違反するかどうかについては判断しませんでした。
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