エム研

ホーム

 

川端康成


  川端は疑いなく日本を代表する作家の一人である。彼の感覚が日本的だからである。彼の作品が日本的な感覚のすべてではないとしても、日本人の感覚の本質をついている。

 「伊豆の踊子」「雪国」「山の音」などが彼の代表作とみなされている。

 有名な割りに、三島由紀夫同様、最近ではあまり読まれているとは言えないが、渡辺淳一は影響されたと述べている。


 

 後期の「みずうみ」「眠れる美女」「片腕」と続く物語はひとつ間違うと危うい材料を扱っているにもかかわらず、独特の感覚のために不思議な雰囲気を醸している。われわれはこれらをもっと研究すべきである。

 

 「みずうみ」

 いわゆるソープの物語である。思えば、川端は、庶民の風俗を若いときから取り上げてきた。それを、いやらしいものにせず、ひたすらまっすぐな感性で写し取っているように見える。

 庶民は、思えば、単にいやらしいのでもなく、ただ自分の感覚に忠実なだけなのだから、川端の捉え方は、おかしいと思うほうがおかしいのだろう。彼の感覚は研ぎ澄まされている。それがより高貴な水準ということなのである。

 

「眠れる美女」

 世界の小説を見渡しても、これほど静謐な性の小説はないのではないだろうか。

 そもそも性はいやらしくない。それをいやらしくするのは捉え方である。性行為を中心に据えてはいなくても、これほど性的な小説もないと思われる。性は異性を意識することが原点だから。

 川端は男の視点で女という性を見つめ、触れ、いつくしむ。それは男が生き続けるための最低の条件である。

 性は暗い所に押し込めたままにはしないほうがいいだろう。愛をたしかなものにするためのもの、なのだから。

 

「片腕」

 ほとんど概念の世界に見えながら、エロチックである。川端は考え抜き、意識した上で書き始めた。であればこそ、素材は片腕でありながら、女性そのものに感じられ、読者はとめどなき性的なものへと誘い込まれる。

 

ホーム    


 古本Bluetrain川端康成コレクション


(c)エムコーポレーション all rights reserved.  web by おとぎや