私のしらない人と私

近年、私が二日酔いになる前夜、決まって周辺に現れる人物がいます。
多い時には週に二回は目撃されるものの、その正体は未だ、謎につつまれています。
そして、実は私自身は一度たりともその姿を見たことがありません。まったくもって不思議な話ではありませんか。
そんな人間につきまとわれて、私は不安で不安でたまりません。
以下はそんな不安感をセキララに描いた作品(1996年)です。
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とりあえず最新情報が知りたいという人はこちら (事件発生は2009年8月ですがレポート掲載は10年4月です。)


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その後の「私のしらない人」
結局この人にお気に入りのダイバーウォッチもなくされた。ホイヤーの……
近年の「私のしらない人」
2000年4月 右手(指3本と手の甲)が血まみれになっていた。その直前、深夜の新橋駅構内で「しらない人」がキックボード(スケータースクート)に乗っいて転倒したとの目撃情報あり。はたして関係があるのか?
2000年/6/23 夜中の帰宅途中、しらない人にドブに落とされたらしい。気がついたら暗闇の中、側溝に仰向けではまってた。見上げると通行人がぎょっとしてたので「大丈夫でーす、いま起ききまーす」と答えておいたが、なんだか気持ちがよかったのでしばらくそのままでいた。
朝になって見てみたら手と足が傷だらけになっていた。なぜだかサイフが泥まみれだった。

2002年/5/17
 銀座で知人の結婚披露パーティに参席。21:30にビールとテキーラとあとなんだかわからないものを5杯くらい「早飲み」して6000円をゲットしたのが最後の思い出。そこから翌朝7:30にかけて記憶が大幅に、というかほぼ完全に消失。その間、久々に「しらない人」が出現して爆裂していたらしい。
主な行状としては、とったばかりの6000円でアイスをおごると豪語したり(結局おごらなかったらしい)、トイレに閉じこもって救出班を出動させたり、頭に落書きされていたり、銀座の電柱にあやまったりしていた(意味不明)という数々の目撃談あり。それでもちゃんと家に帰って朝起きて、10時のブルームボール練習会に出たんだからえらい(しかも中止にはなったが本当は夕方から野球の試合もあった)。まあ、実際には二日酔いでただの歩くシカバネではあったが。ちなみに頭の落書きはいつのまにか消えていたようだ。よかった……

2004年/4/11 「そんなことがあるとは聞いたり読んだりしたことがあったが自分の身にふりかかるとは思わなかった」の巻。
それは初めて訪れた釧路の街で起こった。夕刻から飲み騒いだあげくホテルの部屋(一人部屋)に帰った直後、
深夜3時ごろであろうか、ふと気付くとパンツ一枚で部屋の前の廊下に立っていた。ここで言うパンツとはズボンをおしゃれに言い換えたパンツではない。いわゆる下着としてのパンツ、しかもこの日はブリーフである。なんだこりゃ! 無人の廊下にパンツ一枚でぽつり。「なんだかわからないがとにかく部屋に戻ろう」とドアノブを回すと、部屋のドアはオートロックされている。驚愕とか狼狽とかはない。パンツ一枚で廊下に閉め出されて立っているという事実を理解できず、意識は朦朧としたままなのである。そのまま佇むことしばし、「ああ、カギを開ければいいのか」とポケットに入っているであろうキーを出そうにも……パンツにはポケットがない。いちおうドアを押したり引いたりはしてみた。が、開くわけない。いまだモヤのかかった頭にはなにも考えが浮かばない。しかたがないのでドアを押したり引いたりはしてみました。が、開くわけない。なにしろいまだモヤのかかった頭にはなにも考えが浮かばない。しかたがないのでドアを押したり引いたりはしてみました。が、開くわけない。なにしろ…………しかたがないのでドアを押したり引いたりはしてみました。が、開くわけない。なにしろ…………(呆然と立ちつくすパンツ一枚の男)
バカになったまま考えついたのは、この場こうしていてもなにも解決しないということだった。
あ、カギがあればいいんだ。しかしカギは部屋の中だ。ということは、もうひとつカギを手に入れるには……
そこで。
パンツ一枚で廊下を走り(けっこういいホテルなので廊下が長い!)、パンツ一枚でエレベーターに飛び乗り(けっこういいホテルなのでエレベーターはガラス張りで
外からまる見え!)、一階でそのドアが開くやパンツ一枚でフロントへ走った(けっこういいホテルなのでフロントロビーはガラス張りで外からまる見え!)。フロントの人は(男でよかった)「カギ持たずにドア閉めてしまいました」とつぶやく怪しいパンツ一枚の酔っぱらい(←酒臭い)にカードキーを再発行してくれました。
そして、外かまる見えのロビーを走り抜け、外からまる見えのエレベーター乗り、部屋のドアを開け、パンツ一枚のままベッドに倒れ込んで朝まで寝た。朝8:00に出発の予定だったが、目が覚めたのは7:58だった。「昨夜のあれは夢だったのではないか」と朦朧としたまま考えたが、ふと見るとテーブルの上には
カードキーが2枚あった……
なんでパンツ一枚で部屋の外にいたのかは謎である。しかし、この事件にも「私のしらない人」が関係していると思っている。

で、ここんとこしばらくおとなしくしてるな、と思ってたら

というか、それなりに出没していたようだが、大事件はなかったようだ。だがしかし

2009年/8月某日 「歯が……」の巻
有明の高級マンションに部屋をお持ちの知人から東京湾花火大会見物のお誘いがあった。まぁそういうものも一度くらいは体験しておこうと、お邪魔させてもらったのだが、花火大会自体はなかなかのものだった。問題は、こちらの体調にある。体調というか、

実はその数日前に前歯が外れてしまったのだ。しかも上の門歯2本である。差し歯なのだが保険で安く作ってあるので、しばしば外れてしまうのだ。とりあえず「ぐっ」と押し込んでおけばはまっているのだが、密着しているわけではないので、なにかの拍子にポロっと外れてしまう。再固定のための歯科医院の予約はさらにその数日後なので、とりあえずはそのまま過ごすしかなかったのだ。
それで花火見物の宴席である。そもそも最初から外しておけばよかったのだが、人前に
歯抜け顔をさらすのもなんだかな、という見栄もあり、外れても外れても歯を差し込みつつ花火と料理と大量のビールとなんかいろんな酒を
(空白の時間)
目覚めると家にいた。
前歯はなかった。おほろげな記憶を辿ると……、どうも帰路のモノレールに向かう途中で2度落とした気がする。暗い路上で這いつくばって歯を探していた気がする。親切な人が「そこに落ちてるよ」と教えてくれた気がする。でも時間をロスしたために終電ギリギリになった気がする。最終のJR中央線の駅から40分かけて歩いて帰った気がする。その途中の坂道で転んだ気がする。そしてそこで歯が飛んだ気がする。
そんなことを二日酔いの中で断片的に思い出し、歯抜けのまま、自転車で事件現場の坂道まで
捜索に行ってみた。しかしもちろん歯が見つかろうはずはなかった。
歯は新しく作り直した(でもやっぱり保険適用内)ので、今はちゃんと前歯が元通りにある。
しかし、この事件にも「私のしらない人」が関係していると思っている。


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