「一年生になったら、一年生になったら友達百人できるかな」と大きな声を残して卒園児たちが幼稚園を巣立っていきました。
二年。三年前に入園したころは心細そうな表情を見せることがあった子どもたちが、堂々と胸を張り、大きな声であいさつして小学校に向かって歩み出す様子は、毎年のことですけれどもああ良かったと感激いたします。
今年卒園した子どもたちが小学校を卒業するのはちょうど西暦2000年、21世紀の幕があきます。

卒園式のステージで証書を受け取ったあとで、一人ひとり「大きくなってなりたいのは」と紹介してもらいました。
「大きくなったら川崎ベルディの選手になります」
「鹿島アントラーズのゴールキーパー」とJリーグ選手に男の子の人気が集まりました。
「宇宙飛行のパイロット」「パトカーのお巡りさん」にも人気が集中しています。
「ケーキ屋さん」「看護婦さん」「幼稚園の先生」など女の子の希望はあまり変化ありません。
「やすくておいしいおすし屋さん」などお父さんの仕事の跡継ぎ宣言をしたり、「富士通」「オリンパス」など地元企業入りを表明するなど、それぞれの生活環境に幼いなりに影響を受けているようです。
少子化時代ですから親の願望が伝わりやすいのかもしれません。
数年前まで多かった巨人や西武などプロ野球選手の希望はすっかり減りました。そういえば野球帽の姿も少なくなったような気がします。

幼児のころの「大きくなったら」という願望は、現実の壁やら大人の忠告などで、夢と消えるのも少なくありません。
しかし願望を少しずつふくらませ、理想と努力、自分の能力や特性を上手に生かして幼児期の心に芽生えたものを実現していった例がたくさんあります。
持病の小児ぜんそくでベッドのお世話になることが多かったK君は、入院中お世話になった先生や看護婦さんの励ましを忘れずに成長を続け、医学の道を歩むようになりました。

入園してしばらくは少しのことで涙ぐみ泣き顔が多く、おばあちゃんにとても心配をかけたA子さんがいました。ご両親とも教職で忙しく寂しさや不安があったようですが、卒園して小学校卒業のころにお母さんと同じ教師の道を進むことを決心しました。
寂しかったり不安だったりした時にやさしく励ます先生の役割を心底から評価したようで、お母さんがとても喜んでおられました。

保護者の思い出文集にはこんな文章がありました。
「もりもり食べて健康に、スポーツ万能、頭脳明晰、思いやりを忘れず、困った人を助けてあげる優しい人。はっきり自己主張そして状況に流されない強い意思の人になってほしい」
お母さんのいろいろな願いがすべて含まれている、期待感あふれる内容です。
そのお子さんの希望は「幼稚園の先生」
頼もしい母と子、頑張ってください。幼稚園の先生は期待して応援します。



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