植物雑記

       
      番外篇 '08年1月1日
       

      『サボテン・多肉植物の
       自生地へ行ってみませんか』



 
 サボテンや多肉植物に惹かれる人は、ほかの園芸分野以上に自らが愛培する植物の故郷に思いを馳せることが多いのではないでしょうか。刺だらけだったり、岩石のような堅い表皮に覆われていたり、その特異な姿は、多くの植物が生存を諦めた過酷な環境に適応してきた結果であり、栽培するうえでも自生環境への想像力は欠かせません。私もこれまで幾度か自生地を訪ねてきましたが、回を重ねるほどにますます彼らの故郷である無辺の荒野への憧憬が募る一方です。そして、こうした旅の記憶にと時に持ち帰った種子から実生育成した植物は、どんなにお金を出しても決して買うことの出来ない、かけがえのない標本として栽培場でもひときわ輝いています。それらを前にすると、今でも自生地を訪ねたときに感じた野生の風が記憶のなかで蘇り、温室は漠々と広がる原野とひとつづきになるのです。

 

 私がこれまでもっとも多く旅したのは、白虹山や天狼、英冠、月想曲など、北米高地産サボテンの自生地であるアメリカ合衆国南西部の乾燥地帯です。アリゾナ、ユタ、カリフォルニア、ネヴァダ、ニューメキシコ、コロラドなどの各州ですが、この地域はそもそも植物密度が低く、サボテンの種類も少ないため、一日に2種類も見られれば能率が良いほうで、ひどいときにはどの山を歩き回っても団扇サボテンひとつ見つからず、丸三日探し回ってやっと1種類、などということもありました。何種類ものサボテンが一カ所で見られるメキシコなどとは大違いで、そのせいか日本人でこのエリアを訪ねている人は少ないようです。しかしヨーロッパにはこのグループの専門家(もちろんアマチュア)が結構いて、彼らと現地で合流して自生地情報を交換したり、ともに星空を見上げながら夜を明かした(海外組はだいたいテント旅行で、モーテルなどに泊まらない人が多い)こともあります。アメリカ西部は有名なグランドキャニオンのほかにも壮大で美しい峡谷が多数あり、景観ドライブ旅行としてもじゅうぶん楽しめますが、そうした場所には必ずと言っていいほど公営のキャンプサイトがあります。一泊10ドルくらいで、トイレやシャワーも使えるところが多く、下手なモーテルよりもずっと素敵です。もっとも、欧州の猛者たちはキャンプサイトは好まないようで、だいたいホントになんの寄る辺もない荒野に唐突にテントを張って野営しますが、それはそれで野趣があって悪くありません。サボテンになんの関心もない?家内を連れて旅したこともありますが、「アメリカ大自然の旅」という解釈で楽しんでくれたように思います。
 同じアメリカでも、もっとたくさんのサボテンが見たい向きには、メキシコ国境に近いアリゾナ南部〜テキサス南部が良いロケーションです。マミラリア、エキノケレウス、エスコバリア。コリファンタ、テロカクタスなどの多数の種。そして人気の太平丸やアリオカルプスの亀甲牡丹も無数のコロニーがこの地域にあります。それらしい山を見つけて駆け上がれば、必ずと言っていいくらい、なにかしらのサボテンに出会えます。万人向けのサボテン旅行としては最適ではないでしょうか。このほか私が訪ねた場所としてはメキシコのバハカリフォルニア半島で、ここはいわゆる強刺サボテン(フェロカクタス属)の一大産地です。なかでも、小さな漁村で漁民に交渉してボートを出して貰い、コルテツ海の無人島にわたって対面した紫禁城(F.diguetii)の偉容は生涯忘れることの出来ぬものです。ただし、バハ半島をレンタカーで縦断する際には多少治安の悪いエリアも通過せねばならず、若かったとはいえ単独行は少々無謀だったかと思います。メキシコのサボテン黄金地帯や、コピアポアとエリオシケのチリ・アタカマ沙漠、さらには多肉の宝庫である南アやマダガスカルなども是非とも訪ねてみたい場所ですが、単独行では治安面、予算面でなかなか実現が難しいため、未だ果たせていません。愛好家団体主宰の旅行もタイミングがいつもあわず、参加できずにいます。しかし、これらの地域も是非とも訪ねたい場所です。
 
  

 今回、こうしたことを書こうと思ったのは、このサイトを訪れてくれる方のなかにも、自生地に行って野生のサボテンたちに会ってみたいと感じている方がきっとおられるのではないかと思ったからです。ひとりでふらっと訪ねる沙漠行も悪くないですが、数人が集まればガイドも雇えますし、より広く、深く自生地を訪ねることが可能になります。そこで、いつ、どこに、という具体案は何もないのですが、そのうち自生地に行ってやろうじゃないか、という者同士が、沙漠旅行のプランを実現性の高低に関わらず楽しく語り合えたらよいと思うのです。自分はいついつここに行ってみたい、どこだかわからないが野生のサボテンをたくさん見たい、なんでもアリなので是非お声がけを・・・。あまり大がかりでなく、数人規模で計画すれば、日時や場所も比較的融通がきき、身軽な感じで出掛けられるかと思います。行き先としては、「サボテン黄金地帯メキシコを行く」「チリ・アタカマ沙漠でコピアポアに会う」といったサボ好きなら誰でも楽しめるものもいいですし、「ブラジルでユーベル・ディスコを見る」「アンデス高地で幻のギムノ探し」あるいは「南アでメセン祭り」などなど少々マニアックなものでも楽しいと思います。当方は「北米難物、1週間で2種類しか見られない旅」に慣れていますので、だいたいの沙漠行は楽しめると思います。・・・とまあ、こんなことを書きつづるだけでも夢がどんどん広がりますが、まずは思いつきの願望希望でもよいので皆さんがイメージする自生地の旅、メールでもBBSの書き込みでも結構です。ぜひお聞かせ下さい。




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