こちらズッコケ探偵事務所

原作本あらすじ

解説


<原作本あらすじ>

花山駅前の広場。虫垂炎にかかったハカセを見舞うため、プレゼントを持ってハチベエと待ち合わせるモーちゃん。待ち合わせの間、ベンチにすわってソフトクリームと少年雑誌に夢中になっていた。するとひとりの女性がやってきて、モーちゃんのとなりにすわり、横に置いてあったプレゼントの箱を別の箱にすりかえて行ってしまった。

やがてハチベエがやってきて、いざハカセのもとに向かおうとしたとき、モーちゃんは箱がちがっていることに気づく。どうしようとまごつくモーちゃんに、ハチベエは、どうせハカセにあげるのだからなんでもかまわないと言うので、そのままそれを持って病院に行くことにした。

ハカセの病室。そこでその箱を開けてみると、中にはピンクのブタのぬいぐるみが入っていた。

数日後、モーちゃんが家に帰ると、アパートのかぎは破られ、部屋の中がめちゃくちゃに荒らされていた。しかし盗まれたものはなにもなく、犯人はなんの目的でモーちゃんの家に入ったのかわからない。

目撃情報によると、お昼ごろモーちゃんのアパートに女性が来ていたという。
ハカセは、もしかしたらモーちゃんのプレゼントの箱をすりかえたのはその女性ではないか、そしてモーちゃんの家を荒らしたのは、このブタのぬいぐるみを取り返すためではないかと言う。

また公園にいたときも、モーちゃんと同じような体格の少年が箱を持っていたのをハチベエが見ていることから、この女性は、なにかの犯罪組織の秘密の取り引きで、この少年と箱を交換するところを、間違えてモーちゃんの箱ととり代えてしまったのではないかと。

ブタのぬいぐるみの中になにか重大な秘密がかくされていると思ったハカセは、このぬいぐるみのお腹を開けてみた。だが中にはスポンジしか見当たらなかった。

モーちゃんには災難が続く。
学校帰りの道、1台の車がモーちゃんのもとにやってきた。車の女性は、モーちゃんの母親が交通事故にあったからいますぐ同乗してくれと言う。それを信じて車に乗ったとたん、モーちゃんは目かくしをされ、ロープでしばりあげられ連れ去られてしまった。これが誘拐であることに気づくには遅すぎた。

モーちゃんはうす暗い地下室に連れ込まれた。ここには覆面の男がいて、ぬいぐるみの箱のことを問いつめてくる。それはいまハカセが持っていると言うと、男はモーちゃんに電話をさせ、ハカセにこの箱を持ってこさせるようにした。

問題の箱をかかえて女が戻ってきた。ハカセはちゃんとこの女にその箱を渡したようだ。それにしてもモーちゃんが電話してから15分もたっておらず、異常な速さだった。男はその箱を開けるなり、ぬいぐるみには目もくれず、箱の底の板を開けていく。なんとそこには宝石がいくつも入っているではないか。

犯人たちの要求は満たされたので、モーちゃんは無事に開放された。

三人組は、モーちゃん誘拐の犯人を探すべく、捜査を開始したのである…。


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<解説>
ズッコケシリーズ第8作目。初版は1986年。
今回は探偵物ということで、あらすじの後半、つまり三人組の犯人探しのお話は、あえて割愛させていただきます。ぜひ本編を読んでみてください^^。

これは児童書とはいえ推理小説なので、物語の構成もしっかりと決まっており、ズッコケシリーズのミステリー物としては、もっとも完成度の高いものだと思います。

小道具にブタのぬいぐるみを使うところなど、子ども向けの読み物という前提をしっかりと押さえていますが、一方で、モーちゃんが犯人たちに誘拐されるといったストーリー展開は、当時の児童書にしてはかなり大胆だったのではないでしょうか。

三人組は、犯人捜査に右往左往しながらも、モーちゃんの連れこまれた館を見つけだします。これは、モーちゃんが監禁されたときトイレに行きたくなり、そのトイレの外から偶然聞こえた子どもの声をもとに、館の場所を探しあてるというものです。こうした日常のふとしたこと、どの子どもでも極めて身近に思えるようなできごとを使うことが、この本のポピュラリティー(大衆性)を高めているのでしょう。

もちろん探偵物といっても、三人組の軽妙さ、ユーモアは失われていません。それどころか、事件捜査にあっと言わせるような手段を使い、笑わせてくれます。
例えば、犯人の館にしのびこむために、ハカセ、モーちゃんには女装までさせます。この部分は、読んでいて本当におかしくて、前川かずおさんのユーモラスなイラストとあいまって、ついつい笑いがこぼれてしまいます。

しのびこんだ地下室で、男たちに見つかってしまうハチベエ。やってきた警察に、逆にハチベエたちが泥棒の濡れぎぬをきせられ危機一髪のところを、ハカセのとっさの行動で一気に犯人逮捕に結びつけるあたり、まさに痛快の一言です。



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