ズッコケ三人組ハワイに行く 原作本あらすじ 解説 |
<原作本あらすじ> スリースターガムの懸賞で、モーちゃんがハワイ旅行を当てた。 旅行には3名招待されるという。もちろん、ハチベエ、ハカセが一緒だ。 三人組は、旅行に必要なものを準備することにした。 まずはパスポートの申請だ。申請書の記入項目の多さにげんなりするハチベエ。それでもなんとか書類を書き上げ、稲穂県庁に書類を出しに行った。ところがハチベエとモーちゃんは5千円の手数料ですんだのに、ハカセだけ1万円もかかってしまった。どうやら12歳になると旅券の手数料が倍額になるらしい。ハカセはほんの4日前に12歳になったばかりなのに。 そしてとうとう夏休み。ハワイ出発の日がやってきた。 新幹線に乗って東京へ。東京駅では迷いそうになったけれど、なんとか成田行きの特急に乗ることができた。 空港のロビーで他の参加者たちと合流。空港使用料を払い、両替も済ませ、いよいよ飛行機に乗って飛び立つのだ。 所要時間7時間、三人組を乗せたジャンボジェット機は、無事ホノルル空港に着陸した。 初日は、午前中は休憩、昼食後はホノルルの市内観光だった。 ツアー一行はバスに乗って、ダイヤモンドヘッド、ヌアヌ・パリ展望台などを見学し、モール街で30分の自由時間が与えられた。しかし三人組はここで道に迷ってしまった。ハカセはためらいながら一人の少女に拙い英語で道を尋ねたところ、日本語で返事が返ってきた。そばに少女の父親がいたので、車に乗せてもらいホテルまで送ってもらうことになった。 その少女の名はキャシー、父親はジャック・有村という。車中、三人組がミドリ市花山町からやってきたことを話すと、なんとキャシーの曽祖父も花山町の出身なのだという。ハチベエが自分の名前を言うと、有村氏は、ハチベエの家が八百屋をやっていることを知っていた。 こうして無事ホテルまで送り届けてもらったが、引率の大人たちにはこっぴどく叱られてしまった。 翌日午後、ホテル前のビーチで遊んでいると、きのうの有村親子がやってきた。 キャシーは、自分の祖父がハチベエに会いたいと言っているので、家に来てほしいという。 ハチベエが花山町の出身ということを聞いて、ぜひ話を聞きたいというのである。三人は有村氏の車に乗ってキャシーの家に向かった。 キャシーの祖父、マイケル・有村はこの地で高級ホテルとゴルフ場を経営する資産家であった。マイケル老人の話によると、彼の両親は花山町の出身で、ハチベエの曽祖父である八谷良吉と深い関係があるという。明治時代、マイケルの母親は八谷良吉と婚約の取り決めを交わしていたのだが、母親はその約束を破って、マイケルの父親と駆け落ちし、ハワイに移住してきたらしい。 ハチベエのひいおじいさんにそんな失恋話があったとは!ハチベエがもてないのは、そのひいおじいさんの遺伝子のせいではないかと、ハカセにからかわれたりもするが、ハチベエは内心納得してしまった。 その翌日、こんどはマイケル老人からハチベエに電話がかかってきた。 一緒に西オアフの海岸に行かないか、というのである。しかもきょうはハチベエだけ招きたいという。 ツアー一行はハワイ島に行く日だったのだが、ハチベエはキャシーが同行すると聞いて、ハカセ、モーちゃんとは別行動をとってマイケル老人の誘いに乗ることにした。 コ・オリナのリゾートホテル。マイケル老人の所有するホテルである。 午前中、ハチベエはキャシーとそのいとこのエイミーに連れられて、海岸で遊び、昼には、ホテルのレストランでフランス料理をふるまわれた。 昼食後、マイケル老人はハチベエを引き止めて話を始めた。 マイケル老人はハチベエに、ハワイで暮らさないか、そしてゆくゆくは自分のホテルとゴルフ場の経営を継いでくれないか、と言うのである。キャシーと結婚してくれたらなお嬉しい、というマイケル老人の言葉に、さすがのハチベエも動揺する。莫大な財産が手に入り、美女キャシーとも結婚できるのだ。しかし、このときばかりは両親のことが頭に浮かぶ。ハチベエの父親と母親はなんと言うだろうか?我が子の幸運を喜んでくれるのだろうか、それとも行かないでくれと泣いてたのむのだろうか? 一度帰国してよく考えてみてくれ、と老人に言われ、ハチベエは複雑な思いを胸に、日本に帰国することになった。 そして帰国後、ハチベエは両親にハワイでのできごとを話すのだが… ページトップへ <解説> ズッコケシリーズ第35作。1997年刊。 この本のカバー、「作者からきみたちへ」によると、この本は「これから海外旅行をしてみようという人のために書かれた入門書」であるという。 なるほど読み進めていくと、物語前半は、三人組がハワイツアーに参加するまでの、海外渡航に必要な手続きのことなどことこまかに書かれており、海外旅行の手順をおなじみ三人組を使ってわかりやすく本にしたという感じです。 しかしもちろん、単なるツアー体験記にとどまっているわけではありません。 ハワイの歴史や文化、さらには日系ハワイ移民の歴史にまで踏み込み、三人組(とくにハチベエ)が移民の人たちとかかわっていくところから、物語の色は濃くなっていきます。 物語は、三人組がホノルルの街中で道に迷ったときに、偶然一人の少女と出会うことによって展開していきます。その少女キャシー・有村は日系移民の子孫で、先祖はミドリ市花山町出身の移民だったことから、ハチベエと有村家との交流が始まります。ここでその詳細は省きますが、有村家と八谷家との間にはかつて深いつながりがあったことがわかり、ハチベエは有村家の祖父に気に入られて、ハワイに移住しないか、という話を持ちかけられます。 単純なハチベエのことだから、美少女キャシーとの結婚、有村老人の有する莫大な資産の相続の話をちらつかせられて、ハワイで暮らすことも本気で考えてしまいます。でもそうするとハチベエは自分の両親を日本に置き去りにすることになるから、さすがに迷うんですよね。この辺りのハチベエの気持ちの描写は、繊細かつリアリティーがあって、デフォルメされたキャラクターとはいえ、読む者をちょっと切ない気持ちにさせます。 まあ、シリーズの読者には、三人組は何があっても必ずもとのさやにおさまる、という安心感?みたいなものがありますから、まさかハチベエが本当にハワイに行ってしまうなんて、だれも考えないのですけど。案のじょう、有村老人の話していた祖先は、ハチベエの祖先ではなかったということが帰国後判明して、結局はちょっとした笑い話で終わってしまうわけです。 この作品は、シリーズの他の作品にみられる「ストーリーのズッコケ的展開」からすると、やや軽い印象を受けます。ただ、それは物足りないということではなく、その代わりに南国の風とズッコケ三人組というミスマッチを十分堪能することができますし(笑)、帰国後ハチベエが、「ああ、夢のハワイかあ」と花山町の町並みを眺めながらつぶやく幕切れなど、憧れのハワイ、楽しかった旅の思い出がこの一言に見事に凝縮されており、読者にある種の感慨を呼び起こすのに十分なものです。 これ以外でも、この作品では作者の筆が乗りに乗っていて、所々にユーモア(いやブラックユーモアと言ったほうがいいかもしれない)のセンスがちりばめられていると言えます。 全体としては読後感が非常にさわやかな、ズッコケシリーズ最高傑作の1つではないかと私は思っています。 さて、この物語でちょっとした設定ミスらしきものを見つけました。 そもそもあら探しをする気はないのですけれど、読んでいてアレ?と思ったので記しておきます。 それは三人組の年齢に関することです。 三人組がパスポートを申請に行ったとき、ハカセだけ旅券の手数料が倍額で悔しがっている場面がありましたね。ハカセは申請の4日前、つまり6月6日に12歳になっていたために、そうなってしまったのです。 これはいいのですが、問題は三人組がハワイに出発する日、つまり7月25日のことです。 空港で空港使用料を払う場面があるのですが、これも11歳までが1200円、12歳以上は2400円ということで、またもやハカセだけが倍額を払わされるはめになるのですが、実はこのとき、モーちゃんはどうだったの?ということになります。本の裏表紙を見ると、モーちゃんの誕生日は7月15日。パスポートを取得した時点ではまだ6月なので11歳だったのですが、成田を出発する日にはもう12歳になっていたはずなのです。だから本文54ページのハカセのセリフ、「きみたちはいいよ。ぼくだけ12歳だもの。きみたちの倍払わなくちゃいけないんだからね」はというのは間違いではないか、と思うのです。 ここの部分は、またもやハカセだけが倍額払わせられるところに可笑しさがあるので、もしここでモーちゃんが、「いや、ぼくもこないだ12歳になったから、ハカセちゃんと同じだね」なんて言ったら、この場面は全然可笑しくなくなってしまいますけれどね。 また、モーちゃんは普段学校を遅刻してばかりいるので、ひょっとしたら留年しているのではないかという噂もあるので(笑)、そうなってくると、モーちゃんは一体このとき何歳だったのかますますわからなくなってきます。あるいは、モーちゃんは歳をごまかしているのではないか、という極論も成り立ってしまいそうなんですが…(笑)。 みなさんは、どう思いますか? ページトップへ |
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