綿矢リサ著 『私をくいとめて』




 

              2017-04-25





(作品は、綿矢リサ著 『私をくいとめて』   朝日新聞出版による。)

         

 初出 朝日新聞 2016年4月1日から12月16日。
 本書 2017年(平成29年)1月刊行。

 綿矢リサ(本書より)
 
 
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年「インストール」で第38回文芸賞を受賞しデビュー。2004年「蹴りたい背中」で第130回芥川賞を受賞。2012年「かわいそうだね?」で第6回大江健三郎賞を受賞。ほか著書に「夢を与える」「勝手にふるえてろ」「ひらいて」「しょうがの味は熱い」「憤死」「大地のゲーム」「ウォークイン・クローゼット」「手の平の京」がある。  

主な登場人物:


黒田みつ子(33歳)
<私>

会社勤めのおひとりさま。一人で生き続けてゆくことに何の抵抗もない。恋人と呼べる男性も特にいない。
A:もう一人の私。頭の中の住人。Aと話すのは、いつも一人ぼっちでピンチのとき。

ノゾミさん(38歳) 先輩。私より入社時期は遅いが年上。独身。
多田くん(30代) うちの会社の取引先の営業マン。図体が大きいわりに子供っぽい。無愛想。出世しそうにない(ノゾミさんの評価)。私にとってちょっと大切な存在くらい。

片桐直貴
<呼称 カーター>

真性のイケメン。私より入社時期は遅いが、年上。おそろしく目立ちたがり屋でわがまま。ノゾミさんは社内で唯一彼のファン。私がカーターの短所と感じる点を、ノゾミさんは全部彼の長所と感じるみたい。
(さつき)さん 私の大学時代のお友達、同い年。27歳でイタリア人と結婚、イタリア在住。
中畑遼(47歳) 「スマイル歯科」の医者。Aが私とは別に恋愛にのめり込み大失態を犯す。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 黒田みつ子、もうすぐ33歳。男性にも家庭にも縁遠く、ひとりで生きていくことに、なんの抵抗もないと思っている。ただ時々迷ってしまうことも。そんな時は、もうひとりの自分「A」に脳内で相談をするのだが…。

読後感:

 30代前半の微妙な位置にある私と先輩のノゾミさんとのやりとり、私の頭の中にいるAとのやりとりから見えてくるのは、ひとり身の、結婚か、ひとりで生きていくことの揺れる気持ちがあちこちに覗かれて、この年頃の女性も色々悩み事があるんだなあと興味深い読み物であった。

 なかでもおひとりさまの困るシチュエーションの描写が面白い。これは女性だけでなく、男女にかかわらず感じるものなだけに共感ものである。
 ・おひとりさま難易度の高さ 一人焼き肉店入り
 ・最難関のひとりディズニー
 ・初めてのおひとりさま 美容院
 ・おひとりさまの総本山 一人海外旅行

 そのシチュエーションでの話を読んでいるとこの物語はエッセイ集なのか、小説なのかと。まあどちらにしても面白いからいいか。
 多田くんと私、ノゾミさんとカーターとのハッピーエンドへの予感、それとは別に私とAの関係もラスト近くで絡んでくる。 

  

余談:

 ちょうどこの小説を読んでいるとき、身の回りで色々な出来事が集中。まとまりなくなってしまった感が否めない。人生にはこういう時もあることから、良しとしよう。
 読書をしていて中味がすんなり胸に入ってくる時というのは実はすごく素敵な時を過ごしているんだなあと感じた。

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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