谷村志穂著 『リラを揺らす風』



 

              2017-05-25



(作品は、谷村志穂著 『リラを揺らす風』   実業之日本社による。)

          

 初出 「月刊ジェイ・ノベル」2009年6月号、9月号、12月号、2010年3月号、6月号で連載されたものに、著者が大幅な加筆、訂正を行った。
 本書 2011年(平成23年)3月刊行。

 谷村志穂(本書より)
 
 1962年北海道札幌市生まれ。91年処女小説「アクアリウムの鯨」を発表。以降、小説を中心に、エッセイ、紀行、訳書など幅広い分野で活躍している。2003年「海猫」で第10回島清恋愛文学賞を受賞。主な著書に「十四歳のエンゲージ」「カーテン」「ムーヴド」「余命」「黒髪」などがある。

主な登場人物:


香田はるか(21歳)
<わたし はる>

話し方遅く、鈍くさい。
みっちゃんと小学、中学と一緒、卒業後札幌の美容師専門学校に行くも先生に怒られ、辞めて家を出、みっちゃんの所に住み着く。

坂本光代(20歳)
<ぼく みっちゃん>

心はほとんど男の子。小樽のじいちゃんばあちゃんに預けられ、“さかもと壮”(3階建て)の部屋に住む。
支配人 キャバー・レッドの支配人。結構従業員の面倒見の良い人物。
松本さん キャバレー・レッドに働くはるのお得意さん。

篠山真衣子
母親 玲子
父親 隆弘

高級住宅地のしおさいの丘に住むメンタル・クリニックの医師の娘。はるとみっちゃんに誘拐される。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 幼馴染みの香田はるかと坂本光代。ふくらんだ借金返済のため、ふたりは、7歳の少女をさらって身代金800万円を要求する誘拐劇を実行に移した…。犯人の心情に迫る、著者新境地の長編犯罪サスペンス。 

読後感:

 みっちゃんに、突き放されては寂しがり屋のみっちゃんを思い、好きで離れられないはる。わたしとぼくが交互に語りつぎ、その時々の感情を綴っていく。
 みっちゃんの金遣いは荒く、なくなるとはるをキャバレーで働かせ、客を取らせたり、果てはアダルトビデオにまで出演させる。一方でそんなことをはるにさせることはいやだと言ってみたり。
 
 はるの方はというと、足蹴りにされ、青痣をつけられても、みっちゃんを好く様はどうしたことか。そんな二人が車のローンに苦しみどうにもならなくなり、車を買ったときに隣にいた三つ編みの女の子の幸せそうな家族のことをはるが見ていて、誘拐を言い出す。
 
 後半の誘拐をする時の様子は、二人とも止めるチャンスを望んでみたり、自分は疑われないようなことを企てたりとその心境の揺らぎが興味深い。
 みっちゃんの、言うことと実際の行動とのギャップ、はるの弱そうに見えて、その実大胆で思いっきりの良い行動力、その差を感じながらもその心の中の暗い穴ぼこが切ない。

 

  

余談:

 谷村志穂作品はこれまでに「海猫」と「余命」を読んでいるが、内容は真摯な内容が印象的であったと思う。そんな中本作品はシチュエーションや主人公たちの内容が大変異なっていて面白い。そんなことからやはり真摯な内容として印象に残った。 
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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