須賀しのぶ著 『また、桜の国で』
               


              2017-11-25



(作品は、須賀しのぶ著 『また、桜の国で』   祥伝社による。)

          
 初出 月刊「小説NON」(祥伝社発行)平成27年12月号から28年4月号まで連載したものに、加筆、訂正。
 本書 2016年(平成28年)10月刊行。

 須賀しのぶ(本書より)
 
 1972年、埼玉県生まれ。上智大学文学部史学科卒業。1994年、「惑星童話」でコバルト・ノベル大賞の読者大賞を受賞しデビュー。2010年、「神の棘」が各種ミステリーランキングで上位にランクインし、話題となる。13年、「芙蓉千里」(三部作)で第12回センス・オブ・ジェンダー賞大賞、16年、「革命前夜」で第18回大藪春彦賞を受賞。近著に「くれなゐの紐」「エースナンバー」など。   

主な登場人物:

棚倉慎(まこと)
<主人公>
父親 ゼルゲイ

中学卒業後外務省留学生試験を受けハルピンに渡って10年。1938年の10月、マルセーユ港から欧州に上陸、外務書記生としてポーランド日本大使館に赴任。
・父親はロシア人の植物学者。革命で祖国を失い、日本にとどまる。

ポーランド日本大使館の人物

・酒匂(さこう)秀一 駐ポーランド日本国特命全権大使。
・後藤副領事 各国外交官がワルシャワ脱出時責任者として残る。
・織田 ポーランド在住15年の書記生。ポーランドに深い愛情を抱く。
・マジェナ 事務員、ポーランド人。マジェナの彼はラディック、予備役の将校。

大島浩

駐独大使、中将武官。ナチ礼賛。
外務省の方針が従来の英米追随外交から,軍部を中心とする革新論者が提唱する打倒英米、独伊礼賛路線に大きく傾く。

白鳥敏夫(としお) 駐イタリア大使。革新派官僚のリーダー。
イエジ・ストシャウコフスキ

極東青年会会長、27歳。ワルシャワ大学卒業後司法省勤務の俊才。
かってシベリア孤児たちのリーダー。ドイツと戦うイエジキ部隊(極東青年会の若者たち中心に編成)の指揮官。

ヤン・フリードマン

カメラマン、慎がポーランドで初めて出来た友人。ポ軍の下士官。
赴任の為ベルリンから首都ワルシャワに向かう列車の中で知り合う。

レイモンド・パーカー
<呼称 レイ>

アメリカの大手新聞シカゴプレスの記者。6月にベルリン支局から移ってきた。ナチとも親しい。
慎に先を見た忠告を述べる。自ら見たものしか信じない。

カミル シベリア送りのポーランド人。日本にやってきた子供たち(福田会)で慎の家の庭に入り込み慎が匿ったことのある子,当時10才。カミルには祖国に帰れない秘密がある。慎にとって生まれて初めてのポーランドの友。

ハーニャ
(ハンナ)

両親を殺されたユダヤ人の女性。「人間としての生を全うしたい。日本に亡命することは可能ですか」と慎に。レイの恋人?。
カミンスキ夫妻 ワルシャワでの慎の下宿先の大家。人柄は好ましい。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 
第二次世界大戦勃発。ナチス・ドイツに蹂躙される欧州で、“真実”を見た日本人外務書記生はいかなる“道”を選ぶのか。ショパンの名曲「革命のエチュード」が、日本とポーランドを繋ぐ。

読後感:

 主人公は父親がロシア人、研究のため日本にやってきて,革命で祖国を失い、以降ずっと日本に住み続けた人物。その息子慎(まこと)は幼少の頃は日本に居たが、その顔立ち(立派なスラブ人)から周囲からはじろじろと見られる存在。中学卒業後ハルピンに渡り、やがて外務書記生(大使館などで庶務に従う職員)として1938年10月、ポーランドの日本大使館ワルシャワに赴任する。

 その時から第二次世界大戦へと発展する中で、ハルピン学院での先輩の言葉「大使の手足となって動く我々は、情報を扱う。情報をもたらしてくれるのは、人だ。信頼されなければ、彼らは私たちに何も教えてくれない。金で買収された人間の情報など、その程度のものでしかない。彼ならば信じられる。そう思わせる人間になりなさい。人には誠心誠意、尽くしなさい。人は真心で動くのだから」という外交の本質を教えられ実行する。

 さて、本を読み終えていざ感想を書こうとしても
頭の中はただただ混乱状態で収拾がつかない。なんと表現していいのやら纏まらない。
 第二次大戦のことを良く理解しているわけでもないし、ましてや舞台がポーランドで、いわゆる外から日本の動きを見たり、ポーランドの人が日本を師として信頼しているなど思っても見ないことだし。

 ポーランドの国がいかに虐げられ、おとしめられた国民であるかを知り、歴史をもっと知らないといけないと思うばかり。
 さて、慎、レイ・パーカー、ヤンの三人がポーランドで行われている実情を外の国や人々に知らせるべくドイツ軍の壁を脱出するラストの場面から、終章で新聞記事となって発行された記事を囲んで、ゼルゲイ・棚倉とレイ・パーカーが交わす会話で、彼らの行く末が語られることで終わるけれど、物語の余韻がいつまでも胸に残った。 
余談:

 ちょうど本作品を読んでいる時にNHKのBS放送で「刑事フォイル」なるドラマが再放送されていて、また見ている。
 時代が第二次大戦のイギリスで、独逸との戦争が行われていて、窮地に立たされる状態の中、刑事の仕事に従事する面々が、慈悲と厳しさを兼ね備えた上質のドラマ、そして流れる物悲しい音楽がその時代にぴったりである。
  そんな中、本作品を読んで歴史を知り、一段と当時の様子が思われ、ドラマの良さを実感する事になった。
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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