志水辰夫著 『疾れ、新蔵』

              2018-01-25


(作品は、志水辰夫著 『疾れ、新蔵』      徳間書店による。)

          

  本書 2016年(平成28年)6月刊行。

 志水辰夫:(本書より)
  
 1936年、高知県生まれ。1981年、「飢えて狼」でデビュー。1986年「背いて故郷」で日本推理作家協会賞を、1990年「行きずりの街」で、日本冒険小説協会大賞を受賞する。1994年「いまひとたびの」で日本冒険小説協会短編部門大賞を、2001年「きのうの空」で、柴田錬三郎賞を受賞。「裂けて海峡」「尋ねて雪か」「狼でもなく」「深夜ふたたび」「情事」「青に候」「みのたけの春」「ラストラン」「つばくろ越え−蓬莱屋帳外控」「引かれ者でござい−蓬莱屋帳外控」「夜去り川」「待ち伏せ街道−蓬莱屋帳外控」など著書多数。 

主な登場人物:

新蔵(20代半ば) 3千両の金子を江戸に運ぶため須河が雇い入れた若者。背丈6尺近くある頑健そのものという男。木刀を操る。
須河幾一カ(すごう) 酒匂藩国元の大目付のひとり。前触れもなく新蔵を連れ上京。
志保姫(10歳)

殿がお国入りをしているとき、手を付けた侍女に生ませたもの。
・侍女は在郷の大地主、小此木唯義(おこのぎ・ただよし)の娘佐江。

羽村隆之(たかゆき)
(23歳)

勘定奉行の配下。須河の引きで取り立てられ恩人であり剣の師。生まれは三笠郡の沢渡村。

酒匂近江守忠純
(さかわ・ただすみ)

越後岩船の城主。
高木幸衛門 国元の城代家老、58歳。国元で支える裏方。
網淵春彦(つなぶち)

江戸上屋敷の留守居、49歳。江戸生育ちで外交面を受け持つ。
高木とは犬猿の仲。留守居は酒匂家の中で一番高禄の家臣。

小此木唯義
(おこのぎ・ただよし)

春日莊の主ともいえる存在。地元では領主より遙かに有名。
佐江

春日莊小此木唯義の娘。唯義は隠居後当主を佐江に譲る。
佐江は須河の江戸行き時、新蔵を供にするよう勧める。

武井半兵衛

物頭の番方。しお姫を連れ戻すための追っ手方の責任者。
追手:10名
・羽村隆之(23歳)
・宮本乙次郎(27歳)
・小谷国重
・清之助(腕を見込んで、武井の小者)
・紋吉 町方、上屋敷に出入りの飯田町の御用聞き。他
別の追手
・臼井銑十郎
・柴田平内
・浪人 藤堂兵馬(六尺の大男)と藤堂逸馬
(いつま)小男兄弟

政治と銀次

駕籠屋。志保姫が足をくじいて歩けなくなったために雇われた籠かき。道中随伴する。

ふさ 旅の途中で現れた謎の女、イノシシの仔(うり坊)を連れる。金子を胴巻きに仕込んでいる。

忠治郎
妻 おかじ
長吉、ゆう
父親 徳兵衛
母親 

普賢村の東の端に住む。ニンジン作りを本業。江戸者で故あって新潟に逃げてきた。いつまでたっても村の寄り合いに入れてもらえない。
・妻のおかじは子供の頃患った疱瘡の痕のあばたが顔にあり、かわいそうなくらい。忠治郎に出会い幸せに。
・おかじの父徳兵衛は忠治郎を信用していない。

普賢村の住人

・敬真 普賢村の長老、満寿寺の住職、81歳。
・繁作 猟師。新蔵と親しい友。猟犬の宍丸を伴う。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 新蔵は越後岩船藩の江戸中屋敷に向かった。姫を国許すに連れ戻す手はずであった。街道筋には見張りがいる。巡礼の親子に扮し、旅が始まった…。名手が描く、痛快エンタテインメント時代長編。 

読後感:

 物語は、足をくじいて歩けない姫を籠かき駕籠屋を雇って逃げる新蔵を、江戸の留守居役が放った追手との駆け引き、道中物語が展開する。果たしてこの展開だけで終わってしまうのかと思いながら読み進む。大した盛り上がりもなく展開する話に、止めようか次の本に移ろうかと考えたりしながら。
 登場する人物では羽村隆之がちょっと面白い存在かと。他には駕籠屋の政吉と銀次のコンビ。
 ふさという謎めいた女も。このあたりのキャラがもう少し濃厚だと良かったのに。
 途中に関係が無い様な人物の出現に違和感を覚えていたら、後半ラスト近くでの展開で意外性が明らかに。
 春日莊にたどり着いた後の新蔵の出生の秘密、ラストの決着と締めくくりはきっちりとしていた。 
  
余談:
 
 姫を連れて江戸から故郷の新潟春日莊に戻る新蔵と追手の一行の道中描写。地名が色々出てくるが、やっぱり地図が欲しかったとつくづく思う。ちょっと不親切すぎる。
背景画は、森、木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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