佐々木譲著 『砂の街路図』

 

              2017-03-25



(作品は、佐々木譲著 『砂の街路図』   小学館による。)

           

  初出 「本の窓」2012年3・4月合併〜7月号、2013年3・4月合併号〜2014年2月号に収録された同名作品を単行本化に当たり加筆修正したもの。
 本書 2015年(平成27年)8月刊行。

 佐々木譲(本書より)
 
 
1950年、札幌生まれ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞を受賞。90年、「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年、「武揚伝」で新田次郎文学賞を受賞。2010年、「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。他に「ベルリン飛行指令」「疾駆する夢」「警官の血」「代官山コールドケース」「獅子の城塞」「地層調査」「憂いなき街」など著書多数。  

主な登場人物:


岩崎俊也(しゅんや)
<ぼく>
父親 裕二
母親 響子(没)
(旧姓 中道)

東京の私立高校の国語教師。
父親:俊也12歳の時行き先も告げず学生時代を過ごした街に。警察より運河に落ちて溺死の報。郡府法科大学卒、漕艇部に2年間。
母親:郡府法科大学卒。父の死後母も変わった。口数が少なくなり、明るさが少し消えた。

桜井美由紀 岩崎俊也の恋人。彼女とのつきあいはもう1年以上になる。

佐久間透(とおる)
妻 美加
(旧姓 石黒)

郡府法科大学卒、硝子町酒房のマスターを30年以上。(not 漕艇部)
美加:郡府法科大学中退、漕艇部の女子マネージャの一人。心を病んでいて自殺。

野口 流しのギター弾き。もともとクラシック音楽の演奏家。

高瀬
妻 優子

郡府法科大学卒、岩崎裕二の2年先輩。
優子:ピアノ教室をやっている。

岡田哲夫 群府日日新聞代表取締役、編集主幹。
原島幸則(ゆきのり) 運河町家具工房の店主。郡府法科大学卒。岩崎裕二の1つ年下。漕艇部メンバー。
牧野邦彦 定年まで郡府法科大学で刑法を教えていた。漕艇部が昭和44年(1969)全日本選手権舵なしフォアで優勝した当時の学科主任。
増田公子(きみこ) 郡府法科大学卒、漕艇部の女子マネージャ−。美加の1年上。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 なぜ父は幼い息子と母を捨てて失踪し、この街で溺死したのか。母の四十九日を追えた岩崎俊也は、父の死の真相を知るために、北海道の運河町へと旅立った…。直木賞作家が挑む、まったく新しい家族ミステリー。

読後感:

 ぼくや母を置いて、勤め先にも休むという電話一本、突然北海道の地方都市(郡府 グンプ)に出向き、そうして死んだ父。ぼくが12歳の時の話。
 それから20年、母の死を契機に父に何があったのかを知りたくてひとり父が4年間青春時代を過ごした街を訪れる。

 昔のまま残る街中の情景(主に地域図)が描写されていて、読者は本の内表紙に記された地図を頼りにその様子を頭の中に描いていくことに。
 父の死の謎を求め、次々と訪ねていく先での情報を読者も味わいながら、次第にその核心に迫っていく。核心について訪ねる相手はいずれも知ってか知らずか、答えてくれない。そこに隠されたこととは?

 俊也と同じく、繰り返されて語られる街の地図や情景描写から読者も頭の中に想像が膨らみ、20年前の情景と現在の情景(ほとんど変わらないのだが)を背景に、父親の苦しみが明らかになると共に、俊也がこの街にもっと逗留したい、ひいてはこの街に住みたいと思うようになる感情は読者にも伝わってきて、悲しい事件とは対照的になんだか安らかな気持ちになった。

  

余談:
 
 旅情ミステリーということで若い頃内田康夫の浅見光彦シリーズを好んで読んでいた。各地の旅行場面とか光彦の謎解き、恋愛もどきの話にとその表現の巧みさが好みであった。本作品も読んでいるとその場の情景が浮かんでくるようでなかなか面白かった。

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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