貫井徳郎著 『悪党たちは千里を走る』

 

              2017-09-25



(作品は、貫井徳郎著 『悪党たちは千里を走る』   光文社による。)

          

 初出 「GIALLO」(小社刊)2004年春号〜2005年夏号連載。
 本書 2005年(平成17年)9月刊行。

 貫井徳郎(本書より)
 
 1968年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、不動産会社に勤務、25歳で書いた「慟哭」が、第4回鮎川哲也賞最終候補作となり、’93年にデビュー。精度の高い文章とプロット、読者を殴るような衝撃のラスト、社会性の高いテーマなどに特に定評があるが、意欲的にさまざまな分野や手法に挑み、作品の幅を次々に広げている。その他の作品にね「殺人症候群」ほか症候群シリーズ、「さよならの代わりに」「追憶のかけら」など。
   

主な登場人物:

高杉篤郎(34歳)
(別名 山本)

インチキ経営コンサルタント。超高級生活を目指す身で古いが高級マンションに住む。カード詐欺師。
園田 高杉の舎弟。強面の割に気が小さい、高校時代の後輩。

三上菜摘子(32歳)
みかみ・なつこ
(別名 三枝晶子)

美人の女詐欺師。渋井家に出入りしている。

渋井巧
父親 隆宏
母親 亜也子
犬 レックス

こまっしゃくれた小学生、「僕を誘拐してよ」と高杉のマンションに出現。
・隆宏 外資系証券会社勤務、インサイダー取引で年収3千万。
父親からの遺産で、成城の豪邸住まいの資産家。吝嗇家。
・亜矢子 美人で上流階級の貴婦人。

金本
妻 
息子 智則

田舎の成金。門構えは威圧的なまでに立派なるも、悪趣味の調度品の豪邸住まい。曲がりなりにも食品販売会社経営。
・妻は大粒の真珠のネックレスを三組も首から下げている中年女性。
・息子にフェラーリを買い与える。

ジョン 高杉たちに巧を預かったので渋井宅から金を取るよう要求してくる。
警察関係者

・陰木(かげき)捜一特別斑刑事、43歳。人格者を自認。
・天王寺 蔭木の部下、大男、言葉を発せず表情変えず泰然といるだけ。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 いたいけな子どもをさらって、親を脅迫する…。真面目に生きることが嫌になった3人が企てる、「人道的かつ絶対安全な」誘拐とは。『慟哭』の著者がユーモアとスピードたっぷりに贈る、誘拐ミステリの新境地。  

読後感:

 奇想天外というか、なかなか微笑ましくもユーモア溢れる誘拐事件と言える。
 まずは高杉篤郎なる詐欺師とコンビを組む、がたいは立派だが少々馬鹿ぶりが目立つ園部が裕福そうに見える家で可愛がっていそうな犬の誘拐を計画する。
 
しかし豪邸に出入りするこれまた女詐欺師の三上菜摘子にバレバレで、三人でのコンビが成立。

 そんな折、犬を散歩させる役の息子の渋井巧から自分を誘拐するよう持ちかけられる。
 ところがその上をゆく誘拐犯が高杉たちをして誘拐を起こさざるを得ないシチュエーションに立たされる。
 元々そんな極悪な悪党でない高杉たちは両親の嘆きにも気をもみながら、一方で誘拐された渋井巧の頭はいいが家庭内での寂しさを漂わせる小学生の命を助けたがる思いで一文も得にならない誘拐を実行することに。

 前段の展開は快調に三人プラス巧少年の間が抜けたシーンも随所に織り込みながら進んでいく。いよいよ誘拐の進行は緊迫感(?)溢れる風に展開、さてどういう結末が待っているやら。 

  

余談:

 こういうシリアスなストーリーでもない小気味よい物語も読んでいて楽しい。コンビでもない三人プラスこまっしゃくれた子供とちょっと抜けたところもある犯人との駆け引きも興味津々である。 
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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