三浦しをん著 『政と源』



              2017-11-25



(作品は、三浦しをん著 『政と源』   集英社による。)

          

  初出 「政と源」―――――――――― 雑誌Cobalt 2007年8月増刊 別冊Cobalt
    「幼なじみ無縁」――――――― 雑誌Cobalt 2008年6月増刊 別冊Cobalt
    「像を見た日」―――――――― 雑誌Cobalt 2011年7月号
    「花も嵐も」――――――――― 雑誌Cobalt 2012年3月号/5月号(前編後編)
    「平成無責任男」――――――― 雑誌Cobalt 2012年7月号
    「Y町の永遠」―――――――― 雑誌Cobalt 2012年9月号
            単行本化にあたり、加筆・修正。

 本書 2013年(平成25年)8月刊行。

 三浦しをん(本書より)
 
  1976年東京生まれ。2006年、「まほろば駅前多田便利軒」(文藝春秋)で直木賞受賞。2012年、「舟を編む」(光文社)で本屋大賞受賞。近著に「神去なあなあ夜話」(徳間書店)、「本屋さんで待ちあわせ」「お友だちからお願いします」(ともに大和書房)など。  

主な登場人物:

有田国政(くにまさ)
   73歳
妻 清子
長女 蕗代
次女 光江

東京の東部墨田区Y町に住む。堀源二郎とは幼なじみ。大学を出て銀行勤務、源二郎が結婚後1年遅れで妻と見合い結婚。
今妻は家を出て娘の家で同居生活。さみしさで源二郎の家をしばしば訪れている。
・妻の清子は「これからは自分のしたいことだけをする」とY町を出た。

大原蕗代(ふきよ)
夫 輝禎
(あきよし)
娘 聖良
(せいら)

国政の長女。横浜に住み34歳で結婚、それまで建設会社に勤務していた。
母親の清子と旨くやっていて、国政に対して「源さんちの子だったらなあ」と冷たい。
・夫は彼が入社時、蕗代が研修担当者だった、年下。
・娘の聖良は7歳。

堀源二郎(73歳)
妻 花枝(没)

つまみ簪(かんざし)の職人。川沿いの問屋に商品を卸す。
妻の花枝は40代で亡くなり、子供も無し。戦争で家も家族も全て焼け死に、今は弟子の徹平と楽しそうに暮らしている。

吉岡徹平

源二郎の弟子。元チンピラ、源二郎と国政の計らいで足を洗えるように。
気がよく、明るい性格。マミに惚れ、結婚を夢見ている。
・父親は一部上場企業のエリート。

マミ

美容院のナンバーワン美容師。心優しい美人。
・父親は厳格で虎のように凶暴。清澄白河の大工。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 
つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが…。どこか心温まる人情譚。 

読後感:

 政と源は共に73歳、幼なじみでY町という水路に挟まれた情景といい、いかにも人情話にふさわしい環境での物語。三浦しをんの面目躍如たる仕立てである。あの「まほろば駅前」シリーズの伝統をしっかりと受け継いでいるようで、たまらない。

 しかも年代が死をも考えられる年頃でお互いの生い立ちや家庭の事情が織りなす背景を感じさせながら、若い弟子の徹平とマミのほほえましさ、源二郎の粗雑に思える言動の底にある思いやりのある優しさもいい。また国政の、妻に対する配慮の無さを反省、源二郎の生き様をうらやましく思ったり、それでもこの小説では主人公の座にあるさまが面白い。
 国政の妻の清子の貫禄も素敵で、娘のこれまた母親譲りの言動が頼もしい限り。
 

  

余談:

 源二郎の妻花枝との飾らないお互い言いたいことを言い合い、それも愛し合っていることがベースにある所や、清二郎の弟子徹平とのやりとりで清二郎が妻亡き後暖かい家庭を夢見ている姿に国政が自らの家庭の姿を見るにつけうらやましがる。
 けれど源二郎のすすめで妻清子にせっせと毎日ハガキを書き、自分の思いや源二郎の家の様子やらを書き送る。それに対する音沙汰はないが・・。

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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