三浦しをん著 『あの家に暮らす四人の女』



              2018-02-25


(作品は、三浦しをん著 『あの家に暮らす四人の女』 中央公論新社による。)

          

  初出 「婦人公論」2013年11月22日号〜2015年4月14日号。
 本書 2015年(平成27年)7月刊行。 

 三浦しをん:
(本書より)
 
 1976年東京生まれ。2000年「格闘する者に◯」でデビュー。06年「まほろ駅前多田軒」で直木賞を、12年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。その他の著書に「秘密の花園」「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「光」「神去なあなあ日常」「天国旅行」「木暮荘物語」「政と源」など。「悶絶スパイラル」「お友だちからお願いします」「本屋さんで待ちあわせ」などエッセイ集も多数。  

主な登場人物:

<牧田家に住む人物> 東京の杉並区、庭付きの古い洋館。台所と風呂場だけは数年前にリフォームして1年が経つ。
牧田鶴代 「箱入り娘」のまま70近くに。嫁いだこともない。気まぐれで、菜園の世話を住人に手伝わせて。
牧田佐知(37歳) 刺繍に夢中、自宅に生徒を取って教えている。野心や向上心の欠如、もっと言えば気概の欠如した女性。

牧田幸夫
(旧姓 神田)

牧田鶴代の夫、佐知の父親。牧田家に婿入り、佐知が生まれてすぐに出て行った。
谷山雪乃(37歳) 保険会社勤務、5年前佐知と知り合い友だちづきあいが始まる。大学進学時牧田家に転がり込んできた。独身。物静かなくせに、毒舌。たおやかな外見に反し、極度に不器用。
多恵美(27歳) 雪乃の会社の後輩。小柄で仕事も出来る人気者。手芸好きで佐知の刺繍教室話見学に来て生徒に。ストーカー被害で牧田家に非難。
山田一郎(80歳) 納屋兼書斎の守衛小屋に住み始め二人のお守りの使命感に燃えている律儀者の独り者。
本条宗一 多恵美の元彼。多恵美から別れを告げられた後もストーカー行為を繰り返している。
雪乃の部屋が水浸しになり、リフォームを手がける内装業者の男性。刺繍が好きな人物と言うことで佐知が、話し相手と好意を持つ。
カラスの善福丸

善福寺川大ケヤキをねぐらのカラス。鶴代にまつわる生い立ちを語る。また、宙をさまよう神田幸夫の牧田家を見守りたいとの願いをかなえる役。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。いつしか重なりあう、生者と死者の声…。古びた洋館に住む女4人の日常は、今日も豊かでかしましい。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。  

読後感:

 現代版「細雪」とあるが、牧田家に住む四人の女性たちと同じ屋敷内の守衛小屋に住む老人山田さんの人物が織りなす物語。とはいえそこは作者の三浦しをんの計らいか、牧田家の夫牧田幸夫の生死が定かでなかったのが、実は死んでいて、宇宙から見守っていて牧田家の一大事にしゃしゃり出ようともがく当たり、はたまた、牧田家の夫婦の間の経緯を語るのが、善福寺のカラスとはいったいこの小説の素性はなんと言えば良いのか。

 でもそんなことはどうでも良く、鶴代と娘の佐知と他人の雪乃と多惠美の四人の女たち、年齢は佐知と雪乃が同い年の40前、多惠美は10歳若い女性の織りなす恋の行方であったり、家族というつながりの意義のようなものを著者独特の描写で面白おかしく、時にしっとりと感じさせる物語となっている。
余談:

 ちなみに谷崎潤一郎の「細雪」だが、2008年(平成20年)に掲載していた。
 四姉妹は蒔岡家の長女鶴子(養子を迎える)、幸子(中姉ちゃん 近代的な女性)、雪子(雪姉ちゃん 本当の箱入り娘、内気ではにかみや、引っ込み思案で人前では満足に口もきけない)、妙子(こいさん 一番西洋趣味、舞、洋裁に興味を持ち、ハイカラで実践主義)。
 果たして本小説の、誰が誰に相当するのやら。


余談2:
 
 最近にはNHKBSプレミアムで「平成細雪」なるドラマが放映されていた。それぞれの女優さんの個性も適役でなかなか面白かった。

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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