道尾秀介著 『ソロモンの犬』




 

              2017-04-25





(作品は、道尾秀介著 『ソロモンの犬』   実業之日本社による。)

          

 初出 「別冊文藝春秋」代67号〜271号に連載。
    単行本 2007年8月 文藝春秋刊行。

 本書 2016年(平成28年)11月刊行。

 道尾秀介(本書より)
 
 1975年生まれ。2004年「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。05年に長編第二作としてミステリー界に衝撃を与えた「向日葵の咲かない夏」は、08年に文庫されベストセラーに。07年「シャドウ」で第7回本格ミステリ大賞を受賞。09年「カラスの親指」で第62回日本推理協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。10年「龍神の雨」で第12回大藪春彦賞を受賞。「骸の爪」「片眼の猿」「ラットマン」「鬼の跫音」「花と流れ星」「球体の蛇」など著書多数。ミステリーに限らない幅広い活躍で今もっとも注目される作家の一人である。 

主な登場人物:


<大学の仲良し4人組> 平塚市にある相模野大学、応用生物学部。

秋内静(せい)
<主人公>
祖父 秋内明夫

羽住智佳のことが好きだが、どう行動したらいいかわからない。京也と智佳の関係を疑うことも。実家は仙台。下宿。
バイト ロードレーサーでACTの自転車便。
・祖父 先祖代々の平塚にいる。仙台の静の父親とは断絶状態。

友江京也 ハンサム、大人びているがその一方で他の友人にはない脆さのようなものを。無愛想で気遣いに欠ける。小さいときに母親に死なれ、父親とは仲は良くない。父親(四国在)から会社を継ぐよう言われているも・・。
巻坂ひろ子 いかにも女っぽい女の子。元彼(木内某)とは別れ、今は友江京也を好いている。
羽住智佳(ちか) 北海道生まれ、巻坂ひろ子とは高校時代の友人。姉のように振る舞っている。ひろ子の元彼を殴るほどの性格。秋内のことを好いているもはっきりとは・・。
間宮未知夫 相模野大学で秋内の所属する学部の助教授。秋内の下宿のすぐ近くのアパートに住む変わり者の動物学者。クリスチャン。

椎崎鏡子(しいざき)
息子 陽介
(10歳)
ワン公 オービー
元夫 悟
(さとる)

相模野大学で微生物学を教える助教授。去年夫と離婚し陽介と二人暮らし。
・陽介 体はチッチャな大人びた息子。オービーと小さいときから一緒に過ごしている。
・悟 元は高校の国語の教師、教え方上手でなく、1年で辞め、樹脂加工工場で働く。

阿久津 自転車便「ACT」の社長。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 さっきまで元気だった陽介が目の前で死んだ。愛犬はなぜ暴走したのか。大切な人たちを喪った、夏の日…。アイロニーあふれる筆致で“僕らの夏”を描く。一文一文から鮮烈な驚きと感動が立ちのぼる傑作ミステリー。

読後感:

 四人の若者たちの青春謳歌というところ、お互いの気持ちが素直につながらない。そして陽介という10歳の大人びた男の子が、愛犬のオービーの突然の行動でトラックに轢かれてなくなるという事件を巡り、様々な憶測と自戒の念もからみあって、さらに意外な展開を見せる。

 そんな中で秋内のバイト先の阿久津社長のユニークなキャラ、動物学を研究している間宮未知夫の動物に関する博学さが事件の真相解決に、並びに人間的な洞察力でこのミステリーの解決に重要な役目を果たしている。

 加えるに著者の描写の仕方は人の気持ちの機微を表現すると共に、ミステリーさを思わさせるテクニックに優れているのでついつい引き込まされてしまう。そんな中ユーモアもあり、興味深い動物にまつわる知識や古事の知識のことも出ていて飽きさせないでラストまで読まされた。ラストの展開にもやられたっという印象も。

  

余談:

 覚えておきたいこと:
「バベルの塔」 旧約聖書の「創世記」にある話。――大昔、人間はみんな同じ言葉を話していた。あるとき人間たちは、天まで届く塔を建設しようと目論んだ。でも、これが神の怒りに触れた。神はこの涜神(トクシン)的な行為(神を恐れぬ行為)を許さなかった。そして塔の建設を阻止しようと考えた。神は、人間たちに別々の言葉を与えた。すると効果覿面、人間たちは塔の建設ができなくなり、さっさと世界各地に散っていった。そして、今の世の中ができた。
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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