今野 敏著 『 真贋 』

 

              2017-06-25



(作品は、今野 敏著 『 真贋 』   双葉社による。)

          

 初出 「小説推理」2015年4月号〜2016年3月号
 本書 2016年(平成28年)6月刊行。

 今野 敏(本書より)
 1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て執筆活動に入り、ミステリーから警察、伝奇、格闘小説まで幅広く活躍。2006年「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞を受賞。08年「果断―隠蔽捜査2―」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。<ST 警視庁科学捜査班><東京湾臨海署安積班><任侠>シリーズなど、多くの人気シリーズがある。近著は「防諜捜査」「マル暴総監」など。
 
 

主な登場人物:

萩尾秀一 警視庁捜査第三課盗犯捜査第5係 盗犯一筋の警部補。
武田秋穂 同上、巡査部長。萩尾の相棒。仕事に対して前向き、楽天家、いつも明るく振る舞っている。
本庁関係者

・猪野勝也 警視庁捜査第三課盗犯捜査第5係の係長、警部。
・戸波市郎 捜査第三課の課長。
・舎人真三
(とねり しんぞう)捜査二課特別捜査第二係、警部補35歳。 学芸員の資格を持つ。萩尾より一回り以上年下。
・柏井良吉
(かしわい りょうきち)中年男、舎人の相棒巡査部長。

茂手木進 目黒署刑事課盗犯係の係長、警部補46歳。ダケ松を逮捕した所轄。
林崎省吾 渋谷署盗犯係の係長、警部補。
上条篤志 渋谷のデパートの催事担当事業課長。
久賀良平 トーケイ株式会社の警備企画部長。元警察(警備畑)出身。
音川理一 美術館の専属キュレーター(学芸員)。

ダケ松
(本名 松井栄太郎 )

錠前破りのプロ、鍵福こと福田大吉に教えを受けた。金目のある場所を一目で看破出来る常習犯。もう年で刑務所に入りたがっている。

八つ屋長治
(本名 板橋長治)

大物の故買屋。美術品の贋作見破ることに関しては、現在右に出る者いない。特に焼き物の目利き。表向きは八丁堀の質屋。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 国宝が展示される陶磁器展が絡み、二転三転する捜査。果たして真犯人は…。“盗犯捜査の職人”警視庁捜査三課の萩尾が、相棒の秋穂とともに“盗みの職人”に対峙する人気シリーズ、第2弾。 

読後感:

 国宝の曜変天目(南宋時代に焼かれた茶碗で、世界に3つないし四つしかなく、しかも日本にしかない)の展示がらみで、警備体制にまつわる様子と、茶碗の真贋に関する本物と偽物の真意がらみでのやりとりが面白い。
 そのことに絡んで空き巣の常習犯プロのダケ松と萩尾の駆け引き、萩尾と目黒署盗犯係の茂木係長とのぶつかり合い、そして前作「確証」からの相棒の秋穂の成長ぶりもまた興味深い。

 特に秋穂のしれっとした発言ぶり、相手の秋穂に対する好意ぶり(?)もなごませる。
 デパートでの展示品が偽物であると故買屋の八つ屋長治に指摘されて、それまで本物と確認していたのが覆されることですぐにキュレーター(学芸員)の音川が怪しいと思ったが果たして・・・。
 
刑事物としての小説は数多いが窃盗を扱った作品は身近なだけに内容も参考になり面白い。
 また、二人一組で行動する刑事物の中で、一人単独行動的な舎人という若くして警部補の、相方となる柏井と萩尾が交わすやりとりもなかなか好ましいし、秋穂が舎人の言動を指弾したり、本事件を経験して変わっていく姿も読みどころである。 

  

余談:

 会話と会話を短い言葉でバシバシとたたきつけるような調子で進む展開は、軽快でこの感じは佐々木譲の作品で始めて感じたのが印象的だったが、今野敏作品でもこんな調子だったかなあと思った。
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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