東野圭吾著 『天空の蜂』

 

              2017-03-25



(作品は、東野圭吾著 『天空の蜂』   講談社文庫による。)

         

 初出 1995年1月、講談社より単行本として、1997年11月ノベルスとして刊行。
 本書 1998年(平成10年)11月刊行。

 東野圭吾(本書より)
  
 1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤務の傍ら、ミステリーを執筆。1985年「放課後」(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年「秘密」(文春文庫)で第52回に日本推理作家協会賞、2006年「容疑者χの献身」(文春文庫)で第134回直木賞。近著に好きな人物「新参者」や「麒麟の翼」(ともに講談社)、「真夏の方程式」(文藝春秋)、「マスカレード・ホテル」(集英社)などがある。  

主な登場人物:


湯原一彰(かずあき)
妻 篤子
息子 高彦

錦重工業小牧工場で(航空機事業本部技術本部回転翼機研究開発課)新型ヘリコプターの開発を主な仕事に従事。入社16年。
・高彦は小学4年生。

山下
妻 真知子
息子 恵太
(けいた)

湯原一彰の職場の同僚。
・恵太は小学3年生、9歳。

発電所関係者

・中塚一実所長、飯島副所長
・西岡運転課長

原子炉・核燃料開発事業団(略称 「炉燃」)関係者

・筒井理事長
・坂本敦賀事務所所長

福井県関係者

・金山滋(しげる)知事、山根副知事
・諸田防災課長
・長内原子力安全対策課長
・佐久間消防本部特殊災害課長

錦重工業関係者 ・笠松技術本部長(航空機事業本部)
警察関係者

・今枝警備部長
・木谷刑事部長
・吉岡捜査一課長
・石橋公安課長
・小高小牧警察署長
・高坂特捜班長、警部。
・関根刑事

三島幸一
妻 秋代(自殺)
息子 智弘(轢死)

錦重工業プラント開発事業部原子力機器設計課所属。湯原一彰と同期入社。研修で一緒になったことあり、輝きがあった。
息子の智弘(小学生)の事故死で・・・。

赤嶺淳子 三島幸一と付き合っている。エンジン開発一課勤務。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

読後感:

 巨大ヘリ”Bシステムプロジェクト”の計画するヘリコプターに予期していない子供が乗り込み、犯人がそのヘリを遠隔操作で動かして福井県の高速増殖原型炉「新陽」の真上でホバリング。犯行声明で全国の原子力発電所の停止を要求するという驚愕のミステリー。

 ヘリ開発者の湯原、山下を中心に、福井県、警察、防災関係者が対応に追われる一方、政府側、犯人側、錦重工業そして防衛庁もと、めまぐるしく人々が交差関連してきて、どのように収束するのかが難儀。こういう複雑な展開を纏める手腕は東野圭吾作品の得意とするところである。
 ところで小説が書かれた時代を考えると、今日の原子力の取り扱いについての警鐘を鳴らしているところは先見の明がある。原子力発電の内容も知るところとなり、分かりやすい。

 さて、犯人側の行動も緻密に描かれていて、思いも理解できるところでもある。単にミステリーだけでなく内容としても意味のあるところであろう。ちょっとエンジニアー向きという点は否めないかも。

  

余談:

 解説で真保裕一が東野圭吾作品の魅力、他の作家のミステリーの違いを記しているが、その内容も1998年程度までの話で、その後の有り様はどうだったのかと考えると、その評価の変化も見てみたいものである。
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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