物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
いつの間にか蝕まれていた一家の理想。誰もがそれに気づかないふりをしていた。次々と襲い掛かるそれぞれの現実とは。著者が全霊を込めた、ノンストップ・エンタテインメント長編。幻冬舎創立17周年記念特別作品。
読後感:
読んでいて苦しいが目を離せない。母親が余命いくばくか分からない脳腫瘍に犯され、物忘れからとりとめもない自暴自棄の発言をしたり、相手を冒涜するような言葉を発したり。
若菜家の家族は父親の借金生活の頼りない姿を始め、長男の浩介とその嫁の深雪との深まっていく溝、次男の俊介の外の状態に流されることなく、自分流に生きる姿。
借金に自分たちの家庭も危うくなる状態であることを始めて知り、絶望的な思いに思わず早く死んでくれと口元まで出かかってしまう浩介。浩介の嫁深雪は若菜の親を「少し自分に対して甘いんじゃない?絶対この子にはこんな思いをさせたくない」と不満をぶつけられその間で苦しむ。俊介はというと母親にことあるごとに無心、生き方は”何にも縛られていない”ことに縛られている。
母親の余命いくばくもない病気を目のあたりにし、浩介、俊介のそして父親の克明の行動に変化が。
□印象に残る言葉:
新婚旅行先の景色を見ながら克明が玲子に「いま幸せか?」と問うたときに玲子が返事するシーン。:
「幸せかどうかは、いつか死ぬときにしかわからないんだと思う。今を幸せがってる人を、私はなんとなく信用できない。一つ一つ積み重ねて、たとえそれが何歳の時だったとしても、私は最後に笑って死んでいきたい」
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