江上 剛著 『渇水都市』

 

              2017-09-25



(作品は、江上剛著 『渇水都市』   幻冬舎による。)

          
 初出 「PONTOON」に2008年8月号から2009年6月号まで掲載に加筆修正。
 本書 2009年(平成21年)9月刊行。

 江上 剛(本書より)
 
 1954年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。旧第一勧銀時代に総会屋事件を収拾し、映画「金融腐食列島 呪縛」のモデルとなる。2002年に「非情銀行」で作家デビュー。著書に「起死回生」「異端王道」「腐食の王国」「失格社員」「合併人事」など。   

主な登場人物:

海原剛士(たけし) 北東京市に本社のあるウォーター・エンバイロンメント社(WE社)勤務、26歳。所属は地域営業部で水道料金の集金を行っている。
ワン・フー

WE社のCEO。ウォーター・バロン=水男爵。
WE社はフランス資本の水道事業のグローバル企業。アジア進出は中国、次いで日本に。本社を日本に置く。

山口稔 地域営業部のマネージャー、30歳。
水神喜太郎(すいじん) 地域営業部に入った新人、剛士とペアを組む。女みたいな美形、ワン・フーに似ている。将来の幹部候補生。
タン・リー ワン・フーの秘書。ワン好みの目鼻立ちの整った美しい若者。WE社のナンバー2だが、藤野と結託しワン・フーを倒し、ナンバー1を目指している。
木澤勇 水道の水の監視センターの長。ワン・フーの命で水道水の調査をしている。
藤野林太郎 北東京市の市長、62歳。まるで北東京市は彼の所有物か何かのよう。
水上照美(みずかみ) ジャーナリスト。青斑病の原因を調べている。
ウルフ 反WE社、反グローバリズムの闘士。汚れた水を浄化して飲める浄水器機を提供して人々から信頼されている。一方で、タン・リー、藤野と組んでいる謎に満ちた人物。
警察署長 市の安全を守ることに使命を感じていて、市長の「ウルフは逮捕するな」に、たとえ義賊であっても逮捕すべきと主張、首になる。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 多国籍企業WE社が水資源を牛耳る北東京市。深刻な水不足でテロが頻発し、幼児には謎の病が蔓延。WEの社員・海原は、原因究明のため訪れたダムで高波に飲まれ「水の国」に辿り着く…。近未来サスペンス。  

読後感:

 水資源は人が生きて行くに欠かせないものは分かっていても、日頃その有り難みを見直すのは、最近各地で起きている地震や台風、竜巻、集中豪雨とかで起きるインフラ破壊が起きたとき。それも度々起きているので真実みがある話題である。
 本作品、2040年、未来のこととはいえ、ひところ中国人が水資源を買いあさっていることが騒がれていたが、その後マスコミが取り上げることもなく果たしてどうなっているのやら。

 物語は国や自治体が水資源の管理を民間に委託したため、企業側のポリシーで大企業や富裕層には利用できる値段で、貧しい層には利用料金が高すぎて飲めない状態になっているような、WE社が一手に取り仕切った状態にある北東京市を舞台に、水の国の王なる王を頂いてWE社を襲う一派(水の国の戦士)と、一方WE社内部でCEOのワン・フーに対し、ナンバー2のタン・リーと市長の藤野が追い出しを仕掛けて自らがトップになって水資源を武器に牛耳ろうとする闘いが繰り広げられる。

 ただ、ワン・フーなる人物は映像でしか姿を現さないことと、ウルフというタン・リーと組んでいるようであり、一方で民衆の味方で尊敬されている不可解な人物が物語を不可解なものにしている。
 なんだか痛快物語とは思えない中途半端な筋書きが気になった。
 

  

余談:

 水の問題は世界的に考えてみると本当に恐ろしい問題で、海水が地球の大半を占めていることから、海水を飲料水にできるような技術がもっともっと重要視されなければいけないと思う。
 作品にあるように、中国が日本の良質の水を買い占めるようなことになる世の中が来ないように願いたいものである。
  
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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