堂場瞬一著 『親子の肖像』
          (アナザーフェイス 0)


              2017-10-25



(作品は、堂場瞬一著 『親子の肖像』(アナザーフェイス 0)文春文庫による。)

          
 初出 取調室         「オール読物」2013  8月号
    薄い傷(「傷」を改題) 「オール読物」201310月号
         親子の肖像        「オール読物」201312月号
    隠された絆       「オール読物」2014  2月号
    リスタート               「オール読物」2014  4月号
    見えない結末(「見えない捜査」を改題)
                   「オール読物」2014  6月号
 本書 2014年(平成26年)10月刊行。

 堂場瞬一(本書より)
 
 1963
年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年に「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズのほか、「内通者」(朝日新聞出版)、「傷」(講談社)、「グレイ」(集英社)、「ターンオーバー」(角川春樹事務所)、「虚報」「衆」(文藝春秋)などがある。   

主な登場人物:

大友鉄
妻 菜緒
息子 優斗
義母 聖子

大学出て警察官になって5年目、交番勤務から本部捜一に移動。妻が不慮の交通事故死後、優斗を育てるため福原課長の計らいで刑事総務課に。福原の指示で捜査の仕事に入り込む。
・妻の菜緒 学生時代に付き合い始め。雪の降り始めの夕方、車がスリップ、歩道に乗り上げはねられて亡くなる。

柴克志(かつし) 大友と同期。飢えた猟犬のように犯人を追いかける。
福原 本庁捜査一課長。福原の支援者。
<取調室> 所轄での最後の仕事。知能犯の嶋田を相手に大友の取り調べは果たして。
嶋田高弘 詐欺常習犯。いつも柔和な笑みをたたえる難敵。
<薄い傷> “刑事に密着24時間”の報道番組で大友が対象になり、女子アナの行動に違和感を感じる。
塚原千鶴 女子アナ、27歳。
<親子の肖像> 人質になった子供の父親と連絡が取れない・・。

安斉幹郎
(あんざい・みきお)

借金がらみで殺人、警察の尾行のミスで子供を人質にアパートに立てこもる。

永沢晃生(あきお)
父親 有
(ながさわ・ゆう)

人質になった子供。小学2年生、8歳。父親との二人暮らし。
<隠された絆> 愛人を張り込んでいるが変わりがない?毎日スーパーに行くことに奈緒の助言が・・・。
八木孝義(たかよし) ホストクラブで働く29歳。先輩ホストを視察して逃亡中。
大沼翔子 八木の愛人。
<リスタート> 奈緒が不慮の交通事故で亡くなり、大友、刑事を辞めることを考える・・。

福田知哉(ともや)
父親

優斗の通う幼稚園で知哉がジャングルで後ろから突き落とされたと怪我。
父親が殺人未遂と騒ぎ出す。

<見えない結末> 完落ちの殺人事件、刑事総務課に異動の大友、初めて捜査本部に乗り込む。

小原透
三橋祐介

専門学校に通う20歳の若者。酔ったサラリーマンからバッグを奪う際、殴打し運悪く頭を打ち死なせてしまう。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 初めて明かされる「アナザーフェイス」シリーズの原点。人質立てこもり事件の表題作ほか、若き日の大友鉄の活躍を描く、珠玉の6篇!

読後感:

 長らくアナザーフェイスのシリーズを読んできたが、本作品はその原点ともいうべき文字通りゼロ編に当たる。
 大友鉄が同期の柴克志と高畑敦美(あつみ 本作品ではちらっと出てきただけだが)との友情ともとれるコンビで活躍すると共に、一方で妻を亡くし一人息子の優斗と義母の聖子のきつい支援を受けながら刑事生活を過ごす物語であるが、その背景を垣間見る作品である。
 
 <リターン>では妻の菜緒が亡くなったこと、優斗が通う幼稚園での子供の怪我に隠された父親と子供の姿がいかにも風に描かれている。
 本の題の<親子の肖像>では警察の尾行ミスから人質に取られた少年のことで、親のことを考える大友が父親と連絡を取ろうとして探しても見つからない点に違和感を覚える。そんな何気ない所に違和感を覚える感性が事件解決に役立っている。そんな能力を見出している捜査一課長の福原の存在がこの後も存在感を示している。やはり力を持っていないと動かせないということ。  

  

余談:

 NHKマイあさラジオのサタデーエッセイのコーナーで、作家の川上未映子が(新潮新人賞の審査員?)審査する際のポイントを話されていた。その中で心に留まったのが、書いた物の推敲にどれだけ時間を掛けたかで文章の質が決まるという様なことを話していた。
 我が原稿もさらっと書いて次の作品に移ってしまい、じっくりと読み返したり、思った表現を推敲したりすることが少ないので反省しきり。
 深く感動したりした本の場合は感想もすんなり出てくるが、極ありきたりの感想しかない場合どう書けばいいかなあと悩んでしまう。
 どうも月5冊位を目処に来月分の原稿のこともと、先のことを考えてしまって、早く次の本に進んでしまうのがまずいかも。少しペースを落としてみようかな。  

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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