堂場瞬一著 『 献心 』
             警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ(第10弾)
 

              2017-02-25



(作品は、堂場瞬一著 『 献心 』   中央公論新社による。)

          

  本書 2013年(平成25年)6月刊行。書き下ろし作品。

 堂場瞬一(本書より)
 
 
1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年秋「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「汐灘」サーガの他、「ラストコード」「共鳴」「神の領域 検事・城戸南」、「約束の河」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「衆」(文藝春秋)、「解」(集英社)、「歪」(角川書店)、「暗転」(朝日新聞出版)、「over the edge」(早川書房)、「穢れた手」(東京創元社)などがある。
  

主な登場人物:


<警視庁失踪人捜査課三方面分室の面々>

高城賢吾(50歳)
 <私>
(たかしろ・けんご)

警部。失踪人捜査課三方面分室のナンバー2(管理職)。
娘の綾奈が7歳で失踪行方不明になって12年。
妻(弁護士)とは離婚。元妻は50歳で再婚を決心。
綾奈の件が片付けば室長に昇格の噂あり。

阿比留真弓 室長、警視。女性で本部の課長アピールで失踪課課長に昇格の噂あり。

明神愛美(めぐみ)

巡査部長。栄転が吹っ飛び金町署刑事課から失踪課に。突っ張り、頑なな心、冗談が通じない。愛美の中には凶暴な本性が潜んでいるのは間違いない(高城の評)。高城との間は信頼と、きつい眼差しとが入り混じっている。
醍醐塁 大柄な男。元プロ野球選手。
森田純一 最年少。射撃の腕は一流。
小杉公子 庶務。三方面分室で最年長(室長と同い年)。
田口英樹

法月の後釜に交通部交通規制課から配属の警部補。やる気の無い人間風。”サボリの田口”で有名らしい。

石垣徹(とおる) 失踪課課長、警視正。多摩北署長への移動の噂あり。
西署捜査本部の人々

・藤村係長 仕切り役。一課。
・西川大和 追跡捜査係 徹底した書斎派タイプ。分析能力定評。
・沖田大輝 目つき悪い、猟犬のようなタイプ。

法月大智
(のりづき・だいち)
娘 はるか

渋谷中央署警務課勤務。定年間近のベテラン刑事。心臓に持病。
・娘 はるかは弁護士。「氷の女王」の異名を持つ。

竹永 3方面がある警視庁失踪人捜査課の、一方面分室のナンバー2、警部。

長野威(たけし)(50歳)

警視庁捜査一課の刑事、係長。高城と同期、事件を食べて生きている男。綾奈失踪当時から何かと高城を支援。

平岡真之(45歳) 綾奈の最後の目撃者。携帯電話会社の営業部課長。

黒原弥生
息子 晋
(しん)

母子家庭。
黒原晋は綾奈と同級生。綾奈が行方不明になってすぐに練馬の方に引っ越し、その後も居所が掴めず・・・。

羽村望都子(もとこ) 綾奈や黒原晋の担任。

物語の概要:(本書の紹介記事を参考に。)

 娘綾奈の死の真相を知ることに高城は情熱を燃やす。十数年を経て得られた新しい証言に飛びつくも目撃者の男の言動に振り回される。地道に当時の状況を洗い直す高城は、綾奈の同級生母子を追って一路東北へ向かう。 

読後感:

 いよいよこのシリーズも今回の「献心」でラストを迎えることに。すなわち高城賢吾の娘奈獅ェ行方不明となって12年、遺体で発見され杉並西署に捜査本部が立つ。高城本人は身内の人間ということで動きは封じられ刑事と父親との間で葛藤し悶々としている。
 目撃者として浮上した平岡に面会し、長野達に話したときと明らかにトーンダウンしている様子に不信感を抱くが、そのことで平岡の逆襲に遭い窮地に陥る。しかも平岡の弁護士が法月はるかということでますます事態は悪化の方向に。

 捜査本部も手詰まりの状態で担当からは高城に「知恵を貸してくれ」と助けを求めてくるほど。黒原晋に綾奈のことを知っていることがあるのか聞きたいが、居所がなかなか掴めないのと、どうも母親の弥生の動向が不自然な程身辺を他人に語らず、逃げ回っているような様子に高城は東北の地でひとり追跡をするハメに。

 一帯どんな結末が待っているのやら。いよいよ最後のクライマックスが迫ってくる様子に興味が湧いてくる。明神愛美も駆けつけて愛美の鋭い言葉が高城に突き刺さる。
 このシリーズもラストと思うと一行一行の表現、特に東北の地の描写も相まって懐かしさがこみ上げてきた。
 作品中にアナザーフェイスシリーズの大友鉄や東日記者の沢登有香も登場してきてこれまた嬉しい限り。

  

余談:

 長くこのシリーズを読んでいる内に、単発作品とは違ってそれぞれの登場人物に感情移入が起こり、新しい発見とか、いつもの仕草に愛着が湧いてきて、こんな感情で読むのも結構良いと思うように。
 覚え書きとして警視庁失踪課・高城賢吾シリーズをリストアップしておく。
 ・第1弾  蝕罪   2009.2
 ・第2弾  相剋   2009.4
 ・第3弾  邂逅   2009.8
 ・第4弾  漂泊   2010.2
 ・第5弾  裂壊   2010.6
 ・第6弾  波紋   2011.2
 ・第7弾  遮断   2011.10
 ・第8弾  牽制   2012.12
 ・第9弾  闇夜   2013.3
 ・第10弾 献心    2013.6  

背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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