藪と吹雪の赤岳・天狗尾根

 

 何度も通った冬の八ヶ岳〜だが、東面はまだ足を踏み入れた事がなかった。今年のミニ集中では東面のどこかを、と考えていた。すると天狗尾根ならば、という事でカキさん、タカさんの三人でパーティを組むことができた。

KITADAKE201001.JPG - 121,518BYTES小淵沢で寝て、朝一番の小海線で清里駅に降りた。タクシー会社はシャッターが下りていたが、電話をかけたらすぐに車を出してくれた。美しの森駐車場で降りると、朝日に北岳が染まって美しい。今日はドピーカンだ。0710出発して林道をたどると、やがて堰堤工事の現場に出た。ここからは、河原を右に左にとペンキマークを見ながら堰堤を越えて、出合小屋に向かうが、河原の平地に吹きだまった雪の重たいラッセルとなった。ズボスボとはまりなかせら、1000到着。小屋は、内部が改装されたらしく、小奇麗になっていた。

DEAIKOYA.JPG - 28,496BYTES一息入れてから赤岳沢に向かうと、腐った雪はいっそう重たくなった。ワカンをつけたが、しばらくしたら左足のワカンのテープが切れてしまった。しまった、これは手入れ不足だ。タカさんがトップで重たい雪を進むが、ラッセルというより、下の石や藪の上を歩いているような感じだ。

ほどなく左手に立ち木のない沢のような斜面が現れ、テープや赤布がたくさん巻いてあった。天狗尾根への上り口のようだ。しばらくは沢筋をラッセルしたが、笹藪の上に雪が少し乗っている感じで、滑る。トップを変わった途中から、左手のブッシュに逃げ込んだ。シャクナゲの藪こきで一気に登ると、1200頃に獣の踏み跡が散乱する天狗尾根の上に出た。尾根上は、やはり雪が少なく、岩や藪の上に雪がかぶさっている感じだ。後続がここで追い付き先に進んでいった。

GONGEN2.JPG - 27,303BYTES尾根上を一時間ほど進み、刃渡りのような露岩帯を通過した。左手に権現岳・三つ頭などが美しい。そろそろテント場を考えながら進もう…と話していたら、標高2080mあたりにちょうど四人テントの張れそうな台地があった。少し時間は早いが先はわからないので、1330頃にテントを設営した。雪を整地すると、すぐにブッシュが出てしまうので、テントはずいぶん斜めになった。堅めの雪をさがして雪袋に入れた。これでも住めば都である。夜までの長い時間も、少しばかりの酒も入って楽しく語らって過ぎた。

夜中は、樹林の中にあるテントが揺れるくらい風が吹いた。しかし、朝には風は少し弱くなった。0530起床としたが、少し遅かったようで出発0730となった。下から空身に近い軽装で登る人たちが数組、横を通過していった。テント場がずいぶん下だったもので、カニの鋏まで二時間近くかかった。雪が舞い、弱いが吹雪となった。DORORUNZE.JPG - 20,715BYTES

カニの鋏の前でハーネスなどを支度した。しばらくすると正面に岩峰が迫り、右にトラバースしてルンゼを登る泥ルンゼがやってきた。立ち木を利用した固定ロープがあったが、念のためにザイルを出した。右に岩場をトラバースする所が微妙だったが、その後はなんという事はない急な雪のルンゼ登りだった。後続には出口の立ち木でビレイできた。

しばらくザイルをたたんで進むと、大天狗が迫ってきた。これも右にややトラバースして抜けると、その後は歩いて巻くことができる。トラバースする所だけザイルを使ったが、よい位置に残置ハーケンとシュリンゲがかかっていた。ここで昨年12月にこのあたりで亡くなった京都のお二人に手をあわせた。今日は風が弱いが、それでもビレイしていると風が冷たい。さぞ大変な風だったのだろう。

YENGUONE.JPG - 20,724BYTESSHOUTENGU.JPG - 13,508BYTES続く小天狗は左側から巻いて進み、急な雪稜状を登ると赤岳からの稜線に出た。なんだかあっけない感じがした。右に赤岳をめざす。稜線の風は強くはないが、やはり冬の八ヶ岳だけあって冷たい。真教寺尾根との分岐で一息入れて行動食をむさぼるように食べたが、空腹感が癒えない。

赤岳山頂には14時。握手をして完登を祝してから、そのまま行者小屋に地蔵尾根をたどる。赤岳の下りは意外にも雪が多くて歩きやすく、どうやら西面の方が雪が多かったようだ。地蔵尾根を下る途中、上部でカキさんが去年の遭難者とでくわした場所を教えてくれた。もうあれから一年がたったのか、早いものだ。「事故」を見つめ続けることになった一年だったように思う。

下りは割とゆっくりだったので、行者小屋で15時半となった。最終バスには間に合わないが、タカさんは忙しいで帰りたいとの事で、そのまま美濃戸に向かった。なんだか、荷物が肩と首に痛い。軟弱になったな、と思っていたら、あたの二人とも同じだと言う。全装備を担いでの登攀で、力が入っていたから皆同じなんだな、と笑っAMIDA201001.JPG - 18,828BYTESた。美濃戸からは阿弥陀岳が綺麗に見えていた。

美濃戸山荘でお茶と野沢菜をいただき、美濃戸口にたどりついたら、ちょうどタクシーが止まっていた。なんという幸運だろう。おかげで茅野で小宴会をして、「次は旭岳東稜に」なんて話をしてから、帰途に着くことができた。