北岳バットレスDガリー奥壁

 北岳バットレスは2010年秋に大崩壊があり、第四尾根の最終地点に近い通称「枯れ木テラス」付近が消失した。そこで今回は、第四尾根の左側にある城塞ハング側を登るDガリー奥壁を目標にでかけた。

8/20 朝 町田を出て、甲府9時のバスで広河原。ウエケンの荷物に少しばかり肉を移してから出発。そして御池小屋まで14時着。テントを張ってから、明日への元 気を…と豪華なすき焼きで夕食。心配は天候が、「曇り・霧・雨」の予報なこと。こりゃあ、午後3時過ぎには雨かも知れないから、下部フランケは絶対無理だ なぁ。(天気でも無理っぽいが)

8/21 朝 3時起床。4時半出発。二俣からD沢出合まで大樺沢を上がり、D沢をつめて五尾根支稜に7時に取り付く。雪渓はほとんど残っていなかった。8時にはDガリーを登りだすが、広くて、ルートに迷いつつ進む。途中でロープを出したが、タイミングは難しかった。

BADRESS1.JPG - 16,172BYTESBADRESS2.JPG - 20,111BYTESBADRESS4.JPG - 22,904BYTES
 10時40分頃に奥壁出合付近に到達。でも、どこがルート??としばし悩む。少し進んだら、顕著な四段ハングがあったので、ようやく確信が持てた。

1p目 四段ハングを熊、ウエケンがそれぞれリード。もっとも、迷いなく残置支点を使ってA0してしまう。四段目にはお助け紐もあったが、本当に怖いのはその出た先がツルツルのスラブで、しかも支点が無い事だった。

BADRESS3.JPG - 13,269BYTES

2P目は、ミツコさん、ノリさんがリード。最初は快適なハンドクラックだが支点は無い。上部は指が入らない様なクラックとツルツルのスラブだが、ハーケンがベタ打ちなので、遠慮なく使った。

BADRESS6.JPG - 20,690BYTES

3P目は、私の番だったが、少し2P目が短かったのか、変な切り方になったので、草付スラブを出て、身体が入る位のクラックに少し入った所でピッチを切った。ウエケン・ノリサン組の組は、2p目でやや上まで登ったので、切り方が変わった。

BADRESS5.JPG - 14,860BYTES

4P目は(上村組3p目)、ミツコさんの番。広い身体が入るクラックの内側から表面に出て、登るのだが、ここで苦しみ、「落ちるよ〜」と本当に2m位ずり落ちてしまった。クラックから身体を立てて出れば、フリクションが効くのだが
岩に身体がよってしまったので、滑ってしまった様だ。支点から1mと少し上だったので、2mから3mの間位は、滑り落ちて、クラックの片側にぶつかった。打撲はあったが、幸いにも怪我は無く、登攀も続けられた。
 ここで、内面登攀の得意なウエケンに先行してもらい、補助してもらってミツコさんも通過した。W程度の所だから、何ということなく登れる所なのだが、精神的に「あれっ、どうしよう」となってしまうと、ホールドやスタンスがうまく目
にはいらなかったりする事になりがちなのかもしれない。

 さて、このクラックを抜けると、「チムニー(煙突みたいな中を登る)」があるはずなのだが、なんと無くなっていた。どうやら、大崩壊で、チムニーの片側の岩が全部すっぽり消失した、という事だったらしい。代わりに左に進んだ所に、
被った岩溝から登るルートができていた。第四尾根の最終ピッチもこちらになっている。ちなみに、枯れ木テラス側はスパッと切れた崩壊地。かつてのチムニーのピッチの最初と思われる支点も、なんだか怪しい岩についていた。
 こりゃあ、中央稜側には岩山が一つ落ちた様な崩壊があったんだなぁ…と実感できた。

5P目(4P目)、先行したノリさんは、ここで内側に入り込み、「手が無い」「落ちる」と苦しんだので、シュリンゲを鐙にして通過した。ウエケンに 続いて行ってみたら、被ってはいたが、背中を押しつけて反対側の岩にフリクションを効かせると、スルリと抜けられた。ここを出ると、ハイマツの横を進んで も平坦地に。

6P目 おまけみたいな所だが、一応、ビレイしてミツコさん・ウエケンのリードにて本当の終了点に到着。14:30だった。

 腹減ったなぁ…という事で、ロープと装備を解いて大休止。終了点から山頂までは25分程度だが、その間の御花畑は最高にすばらしい。登山道では無 いので、踏み跡をそっと歩いた。山頂でもう一度休憩。後は、北岳頂上小屋から小太郎尾根を経由して、テントに18時前に戻った。途中で雨が降り出したが、 幸いに小屋に着いたら止んでくれた。小屋で生ビールを買えたので、外で乾杯に盛り上がった。晩飯は、夏野菜カレー。おいしくてよく食べた。


8/22 朝 のんびり起きて、7時に出発。下山して、入浴。そして帰るだけだ。お互いの健闘を喜びながら、ついついビールに手が伸びる帰り途だった。それにしても、下界は暑いなぁ。