八ヶ岳・阿弥陀岳中央稜(南稜のハズが…)

 

 凍った道をSさんの車がタイヤにキリキリ言わせながら登り切ると、船山十字路には他に車が一台止まっているだけだった。支度してゲートからまっすぐ林道をたどる。沢を渡って、トレースは明瞭だった。だが、いつになっても旭小屋は出てこない。「変だな」と言いつつ進んだが、沢は狭く氷床となってアイスクライミング風になってきた。「南稜は左にあるはずだ」と上にあがるトレースを見つけてひと登りすると、10時過ぎにやっと小ピークに出て、青空と権現につながる稜線が目に飛び込んだ。

AMIDA2012FEB1.JPG - 22,081BYTES 「尾根に出たね」とモナカ雪をだましだまし登って行くと、岩峰が正面を塞ぐ。直登かと取りつくが無理そうだとルートを探し、右に大きく巻いた。さらに次の岩峰もルートを探すと、今度は左からややきわどいムーブで露岩を回り込み、ルンゼを登って越えた。ルートは皆の文殊の知恵で探していく。誰かがルートを見つけ出せて、本当に信頼できる仲間たちだ。太陽に輝く八ヶ岳の峰々、そして青空が目にまぶしく、シャツ一枚で行動できる。

それにしても、P1P2はこんなではないハズだ。それにテント場らしき所がさっぱりない。ルート経験者も二人いるのだが、どうも皆そろって腑に落ちない。高度は2600m近くに達してしまった。そして、答えはルンゼ状を回ってやせ尾根に出た所でわかった…「これは中央稜だ」。南稜が私たちを笑うように、権現への主稜線よりも手前にはっきりと見えた。

AMIDA2012FEB2.JPG - 23,911BYTESここまで来たら中央稜から山頂を越えて行くしかテント場はない。「じゃあ、赤岳鉱泉まで行って、集中に合流しよう」とOさんの提議に衆議一決した。御小屋尾根と合流して14時半過ぎに山頂に着き記念写真を撮った。後は注意してコルまで下り、雪質を見てから中岳沢をかけ下る。行者小屋前で元会員のMさんと話してからひと歩きすればもうそこは赤岳鉱泉だった。

 翌日は、朝のうちは雪と風。硫黄岳に行くパーティについて途中までを往復した。すっかり晴れた空の下で撤収して美濃戸まで走るように降り、本日の最大の核心部=船山十字路への凍った道と車でのその下りに向かった。

 複雑でスリリングなルート探し、モナカ雪をだましだましの登行、美しい八ヶ岳の白き峰々…悔し紛れではなくとても充実した楽しい山行だった。でも、悔しさが残る。ちなみに旭小屋へは、どうやら十字路を最初に右に行かねばならなかった模様だ。来年こそ、南稜から山頂を越えよう、と四人で誓いを立てた八ヶ岳だった。

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