滝谷ドーム中央稜

8/25 夜、アルパイン計画会を終えてから新宿に向かった。平日とあって、夜行バスが出る都庁駐車場の人は少なめだった。一杯やって乗り込んだ。

2010AUG1.JPG - 20,199BYTES8/26 朝、上高地に到着してウエケンと合流する。朝飯を食べてから、0600出発とするが少し遅れて0615となる。河童橋から先までは朝モヤが立ち込めていたが、だんだん晴れてきた。徳沢で休憩、横尾で登山靴に履き替えて、涸沢に向かった。涸沢で10時45分頃となったので、「北穂小屋の昼食営業には間に合わないな」と悟る。晴れていた空にまたまた雲が沸いてた。北穂高の登りで雨もパラバラと落ちてきたが、なんとか本降りにはならないであがってくれた。
 でも、登攀具などをかついでの北穂高の登りは結構大変で、北穂高小屋1430着となってしまった。小屋で光子さん・円乗さんと合流する。乾杯したいところだが、今日は何としてもドーム中央稜への取り付きを下見したいので、1500から取り付き点の確認に出発した。

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 縦走路を南峰を過ぎてドームを左から巻くと、下りに最初の鎖がある。この鎖が終わった所の先から踏み跡がたくさん残されている。ちょうど矢印が曲がる所で直進して、少し進むとほぼ消えたペンキの跡と古い空き缶のある所で、右下へのトレースが続いているのが、一番歩きやすそうだ。そこからルンゼを横切って下り、しばらく降りるとケルンが積んであった。その裏側でハーケンのあるルンゼまでを確認して小屋に戻った。「しめしめここが懸垂地点だろう」と思っていたが、本当はもっと下まで降りなけ2010AUG5.JPG - 9,356BYTESればならなかった。さて、これで安心して生ビールが飲める。携帯メールをチェックしたが、アンテナは立つのだが何も来ていない。やっぱり平日だから無線に付き合ってくれる人はいないか、と安心して前祝いを始めた。(不思議な事に、メールを送れたのに、この日のメールが到着したのは上高地に降りた後だった。こんなの不思議だなぁ。スイッチオンの時間が短かったからだろうか。)
 天候はしばらくガスっていたが、夕方には晴れてバイトのお姉さんも「こんな綺麗な夕日は小屋にあがって初めて」と写真を撮りに出てきた。さあ、これで明日は晴れだろう。

8/27 日の出を見てから朝食となり、朝0610に小屋を出発した。約30分で下見した分岐点に到着した。その後、取付をめざして下降したが、昨日確認したルンゼをクライムダウンした先で、踏み跡が判然としなくなった。こっちでいいかなぁ・・・と相談しながらトラバースと下降を続けると、リッジ状の尾根の手前にハーケン2本と残置シュリンゲの支点があった。そこで、ここを懸垂支点と考えて降りる事にした。しかし、この周辺はこれ以外にも多数の古い懸垂支点がある。うーん、きっとこの先が取り付きにつながるT2なんだろう・・・と、ウエケンが懸垂をセットした。
 しかし、どうもなんだかロープの具合がおかしく見える。試しにロープを引っ張ると、二本のシュリンゲを通したはずのロープは、スルッと抜けてしまった。くわばらくわばら・・、こりゃあ怖いぜ。結び直してウエケンが降りた。しかし、おりる途中にさらにハーケン三本と多数のシュリンゲのついた支点がある、と言う。さらにその下がバンドの様に見えたが、ウエケンいわく、結構、トラバースが微妙だと言う。ふーん・・・。
 しかも、二番手の光子さんが懸垂するのを見ていたら、ハーケンのうちの一本が揺れて動いている。手で試すとすぐに抜ける事はないようだが、衝撃をかけてはいけないようだ。もう一本はよく効いているので落ちることはないがなんだか心地よくない。光子さんは途中の支点で止まり、私もそこまで三番手で降りてからロープを次の支点に掛け替えた。ウエケンには一本のロープで確保してテラスまで行ってもらう。私・光子さんの順で下まで降りて、コンテで結んでテラスに移動してみると、そんなに悪いわけではなかった。ともあれ、ここがT2であることは間違いない。さて、中央稜の取付きはどれだろう。

2010AUG6.JPG - 27,006BYTES よく考えたらわかったはずなのだが、T2に2010AUG7.JPG - 17,025BYTESてルートを探す時に気持ちが焦っていたのか、上に立派な確保支点が見えたのもので、なんと第三尾根をそのままをルートと誤認してしまった。私がトップでロープを結び、登攀開始・・・何のことは無い、懸垂支点に登り返してしまった。でもついた所には、立派な懸垂用のリングやカラビナがペツル二本で止めてある懸垂支点だった。 「ありゃあ、これはT1だよ」・・・と気がつく。多分、先ほど懸垂した地点からさらに上部でトラバースすると、岩の第三尾根を乗り越えて、この立派な懸垂支点に着いたのだろう。2010AUG8.JPG - 34,177BYTES

 誤認に気がついたので、上からウエケンに叫んで、もっとトラバースした先を見てもらう。すると立派な踏み跡がつづら折りに登っており、もう一つ先の岩尾根を回った先にちゃんとしたドーム中央稜の取付があった。このために、都合一時間程はロスしてしまった。これで今日も、北穂小屋の昼食営業を逃しまった。残念だ。でも、こうしてともあれ0930にドーム中央稜をスタートした。

1p目 熊 リード。クラッ左のフェースから登って、上部でチムニーに入る。ところが、チムニーにザックがつかえて身体が入らず苦戦した。なんとか入ったり出たりしながら中間支点をセットして、チムニーの外側のスタンスを拾って登っていった。後で調べたら、ザックをぶら下げて登ると詰まらずに登れるらしい。

2010AUG9.JPG - 35,256BYTES2p目 熊 リード。カンテからほぼリッジ状を登る。すぐにいったんテラスに出て、核心部と思われるリッジ上部に出る。ここが多分X級部分だが、残置シュリンゲもあり、左側のフェースに確かなスタンスがあった。ここは高度感があり、下を見ると滝谷出合、上からは太陽と青空、横を見れば槍がとてもきれいにほほ笑んでいる…というご機嫌なピッチだった。その上部で細かいフェースに出るが、ここの斜度はそんなにない。岩のビナクルでビレイする。

3p目 平凡な岩尾根。一応、ザイルで確保のまま進んだが確保はいらないだろう。

2010AUG10.JPG - 35,258BYTES4p目 熊 リード。うっすら赤いペンキの矢印が取付にあった。古い缶詰の缶もこのルートでは目立つ。しかし、最初の凹角は良いのだが、その先でルートが左右にあり複雑に入り組んでいる様に思った。このクラックには新しい残置フレンズが有った。しかし、その上もいやらしいルートに見えたので左に行ったら、腕力登攀のかぶったツルツル岩となってしまった。ここは、右のクラックをそのままジャミングなどで登るのが本当だと思う。このピッチの途中からガスが出てきた。

2010AUG11.JPG - 25,365BYTES5p目 最終ピッチだ。広々としたガレ場のテラスから、凹角をスッキリと登る魅力的なルートだ。ここでウエケンがリードしたい、と言うのでトップを交代する。全部を自分でリードすることにこだわるより、皆でトップを登る楽しみを分かち合った方がずっと良い、と私は思う。
 それにしても、この最後のピッチはスカッとした素晴らしいラインだ。最後にハングを右に抜け、クラックを使って乗り越えると終了点だ。40mと書いてあったが、実際にはロープは25mほどだった。でも、こんなラインならあと百メートル続いても楽しいだろうと思う。ガスに空は2010AUG12.JPG - 19,277BYTESおおわれて見晴らしはなくなったが、私たちは終了点で握手を交わした。13時前に終了。私たちのレベルで三人なので、まあまあの時間だろう。

 ドームの肩から踏み跡をたどって縦走路に出てから、靴を履き替える。ドームを巻く前に出るので、今度は近い。片づけをやっても、14時に小屋に戻ることができた。

 昼食営業には間に合わなかったけど、行動食などを持ち寄って、何よりも生ビールで乾杯だ!!でも、雨が降って来たので、テラスではなく小屋の食堂での宴会がしばし続いた。あれま、でも、雨だと山頂で無線ができないなぁ。せっかく、1200M/5G/10Gと持参したのだけどなぁ。まあ、いいか、その分、うまいビールを飲んじゃえ!!

 でも、北穂高小屋にて連泊すると別のお楽しみがある。 その1)料金が割引になる。嬉しいなぁ。 その 2)食事は連泊の人は別のメニューになります。なんと、私たちの時はサーモンのムニエルとシューマイ、それにサラダの野菜も大盛りとなって、フルーツまでデザートに登場した。もともとこの小屋のご飯は、北アルプスで最高なのだが、ついつい食べて太ってしまう心配をしなくてはならない。さらに、翌日の朝食も他の方とは別メニューで手をかけたものを出していただいた。 

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夜は雨が音をたてて降っていたが、夜中にはあがった。

2010AUG15.JPG - 13,541BYTES8/28 朝6時過ぎに小屋を出る。「もうお腹一杯」と涸沢に下山して、横尾・上高地を経由して帰宅することにした。歌じゃないけど、「穂高よさらば、また来る日まで」だ。

 今年夏の課題とした滝谷を登攀できて、大変に充実した三日間だった。何よりも取付点への行き方が難しく、今回もT1には当初は行けず、別の懸垂支点にてT2に到着した。ポイントは第三尾根を見て、これをトラバースして越えた所にT1がある、という事の様だ。でも、「滝谷に行ったけど、取り付きがわからず敗退した」という
人が結構いるなかで、初めての三人だけでちゃんとたどり着けたのは、前日の下見が成果をあげたのだと思う。また、私の技量では滝谷ドーム中央稜をスマートには登れない事はわかっていたが、それでもなんとか登ることができて長年の宿願を果たすことができた。積雪期でも滝谷第二尾根などは、そう困難では無いみたいなので、次には雪稜クライミングを楽しんでみたいと思う。

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