秋の前穂北尾根

2008年10月12日 人数 三人

 何度も岩トレに通ってめざした8月末のバットレスは、雨が続き取付けなかった。悔しく て、「このままでは終われない」と、この秋の北尾根計画は始まった。

 それにしても朝の涸沢は、トイレ待ち渋滞 が30分。おかげで出発は6時を過ぎてしまった。昨日は、仕事の後に出たので上高地16時50分発・涸沢20時50分着。夜で見えなかったが、大変なテントと人の数だ。でも、ヒュッ テ前で先発の二人と合流できて、トイレ先の階段から北尾根に向かった。
  朝日にカールが輝いて美しい。でも、ぼんやりしていたら北尾根へのふみ跡を外したのか、X・Yのコルに上がるはずが、Y・Zのコルに上がってしまった。そ れにしても先週の富士山に続いて、なんだか息がすぐにあがってしまう。風邪か、アレルギーが出ているのか。ともあれ、冬は最低鞍部から登るのだからと、こ こで支度した。ウエケンがトップでスタートだ。
  Y峰への登りは、しっかりとした道になっていた。富士山が左に見え、紅葉の山々とカール、そしてピークからは大展望が広がる。X峰へのコルに下ると、なる ほどこちらにはしっかりしたふみ跡がついている。X峰、W峰とルートを選べば、トレースが続いてザイルは不要だ。遠くの展望だけでなく、左側の奥又白の池 と横に張られたクライマーのテントが神秘的だ。

V峰への登りからは、コルで順番を待ちザイル を結んで登攀している。遠回りしたので、我々はラストだ。ウエケンがリードでザイルを組み、W級の岩場に取り付いた。なかなか進まない。どうしてと思い取 り付くとなかなかショッパイ。ビバーク全装備をかついでいるのもあるが、クラックから右のフェースに入るあたりで身体がぐっと外に出る。細かいホールドを 慎重に進んだ。左側には階段状の岩場もあるのだが、このルートはガッチリと登り甲斐があった。

その後は、ルートを探しながらVのピークに出る。ザイルをたたみ、Uのピークを過ぎた所 からコルまでは懸垂下降だ。下部が崩れやすいガレ場で、流れが悪くザイルの回収に四苦八苦した。あとはギャラリーも減りだした前穂高の山頂にひと登りして 終了。ああ、無事に登れたぞ。三人で握手して写真をとりあい、一息を入れる。

明日は仕事で降りる二人とは山頂で別れ、私は無線運用。1200Mで四国・香川と交信し てから、奥穂高に進む。ここでは、延々と待っていてくれた金沢の局と5Ghzで交信した。よかった。、機材一式をザックに入れてきた甲斐があった。夕日のジャンダル ムが山頂からは目に焼きついた。明日は、あれを越えて久しぶりに西穂高まで行こう。あとは、陽の傾く中を奥穂高山荘に下り、小さなツェルトを狭い隙間にな んとか張るだけだ。その夜、ツェルト内では水に薄い氷が張り、翌日の晴天を約束してくれた。
 すばらしい秋の前穂・北尾根。次は、ぜひ積雪期に登りたい。