VK3XDK のNON-TUNE TRANSVERTER
KIT
JF1TPR 熊野谿 寛
はじめに
DUBUSの2011/3にVK3XDKが設計したトランスバーター基板が紹介されていました。アメリカ等で作られるNON-TUNEシリーズの最新版をめざしたとの事で、パイプキャップフィルターを使わずに430M-IFでの2.4G/5.7G/10Gのトランスバーターが設計・製作されていました。特に目を引いたのは、10Gのトランスバーター基板が六段のエッジカップル式BPFにて430MhzIFでLOを-45dBも抑圧している、との記載でした。基板上のフィルターだけで本当にそんなにできるのだろうか、と興味を持ちました。
VK3XDKのサイトを見ると配布価格も1バンド150豪ドルとの事です。「これは一つ試してみよう」と怪しげなメールを送ると返信があり、3バンド分をpaypalで送金して一週間程にて基板と部品のキットが届きました。また、「最近設計した1200Mもテストしてみるかい」との事で、基板と部品キットを送ってくれました。
特徴
・基板がむき出しで分厚いアルミ板に固定するだけ。全体をケースに入れる、という発想で作られている。(分厚いアルミ板を切ったものも送られてきました。) 基板の裏側を空洞にすることはありますが、カバー無しというのは初めて…。
・全体にMMICを多用しているが、受信部の初段はNE32584を使ってNFマッチとしている。
・各段のデカップリング回路に特徴があり、100Ωの抵抗2本をパラにしたものをへて、22pF/1nFとでグラウンドに落としている。さらにその先の電源ラインへの抵抗もなぜか2本を並列に使っている。
・BPFは、2.4GではセラミックBPF(JAでも一時期使われたもの)、5/10Gはエッジカップル型のフィルターを使っている。基板の素材は、0.4mmテフロンが使われている。1200Mでは四段の同調回路に2Pのセラミックコンデンサで固定式の同調をとっている。
・エッジカップル式のBPFでは、@最初の部分が1/4λから始まるのではなく、1/2λの中点でまげて、その近くに50Ωラインを接続している。これでインピーダンス整合をとっている模様だ。A最初の段から間隔が同じくらいあいており、「だんだん間隔を広げる」という手法をとっていない。 という二点が特徴がある。
各バンドの特性
1.2Ghz
同調回路をトリマ式に改造した。432M-IFとの事で三倍波が問題となる。144M-IFでは50dBc程度が確保できるが、全体として出力が少ない。(-3dBm〜0dBm程度)レポートを送った所、別のミクサーを試しているとの事だった。
2.4Ghz
MMIC二段で送信の飽和出力は、なんと250mWにも達した。ただし、これだとスプリアスが目立つので、430Mhz7dBm入力・100mW出力程度がおとなしい様だ。これでLOやLSB側は-45dBc程度となった。
5.7Ghz
逓倍基板はERA-3とNLB310を使用しているが、なぜか初段のERA-3を実験中に何度か飛ばした。LO-INとして、LOの1/2か1/3を入力する。出力は1/3での動作の方が僅かに多く出力されるが、C/Nは当然ながら1/2の方が良い。逓倍部の最後にウィルキンソンで二分岐している。
トランスバーター基板では、ミクサーにHMC219、送信のMMICにERA-3とNLB310を使って20mW程度の出力を得ている。送信では、432MIFにてLO/LSBは-45dBc程度に抑圧できており、HPAとBPFを別付けすると-60dBが確保できそうだ。
10G
逓倍基板はMMIC四段となっており、消費電流が180mA程度とトランスバーター部よりも多くなる。これも1/4か1/6を入力するが、1/6の方が出力は多くとれる。BPF部が10386Mhz帯用になっているが、少量の半田をBPFに盛ったら9800Mhzでも出力が落ちなくなった。
トランスバーター基板では、ミクサーにHMC220、送信のMMICにはERA-3とNLB310を使って、15-20mWを出力している。ERA-3はカタログでは3Ghz迄だが、Grahamによると「10Gで9dBのゲインがある」との事だ。注目すべきはBPFで、送信でLo/LSB共に-45dBcも抑圧できている。少し半田を盛ったが、なくてもこちらは10240Mhzで使える模様だ。この性能は、基板上でのBPFとしてはすばらしいのではないか。
参照 http://www.vk3xdk.net46.net/