誘電体BPFの実験

BPFとの格闘・・・
 いつもの事ながらBPFは奥が深い。
 @10Gの最初のBPFは、マキ電機の三段キャビティにセミリジッドの先をモノポール状に立てて、2本のネジを調整するものだった。これは、要するに「遮断導波路に10Gに同調しているネジ2本を結合させている」というものだ。このネジの間に仕切りを入れたり。結合窓を作ったりすると、特性は鋭くなるが、当然ながらロスも増える。
 A次に使いだしたのは、12mm外形程度の角パイプを使ったものだった。SMAコネクタを二つ取り付け、その間にやはりネジを2本程度だが入れるのだ。この場合、SMAコネクタに近いネジとの距離が大変に重要であり、これが遠いと特性は鋭くなるがロスが多く、近いと何をやってもザルみたいな広帯域になった。動作原理はほぼ同じである。ちなみに、角パイプの先は開放されていても、遮断導波路なので良いハズだが、実際にはやっぱり漏れるので、何かで塞いだ方が回り込みなどは少ない。また、同調ネジと直角にネジを入れるとトラップになったり、SMAの外側にネジを付けてトラップにしたりという手も使える。

 しかし、もっと「損失が少なくて、簡単で、かつ小型なのに鋭いフィルターは無いか」という事を考えると、これが難しい事になる。ちゃんと設計できる人は、BPFをパターンで作っても、かなりの特性のものができるはずだ。モーメント法とか、FDTM法とかの名前しか知らない方法とソフトで計算すると、かなりの特性の物が設計できるらしい。しかし、私にはその手の方法は???なので、「導波管フィルター」か「ジャンクにある誘電体フィルター」ができないかな、という事になった。

 このうち導波管フィルターは、これまた結構、設計もだが工作が難しい。遮断ではない導波管を使って、導波管を縦の金属線で区切って、空洞共振器の様に使って作れば、かなりの特性のものができるらしい。しかし、そのためには機械的には高い精度の工作が求められる。「イーカゲンにマイクロ」なんて言っているのでは、どうにもならない。また、導波管フィルターは10Gあたりではどうしても大型になるのが難点である。
 これに対してBSや衛星用LNBに使ってある誘電体を使ったBPFは、小型で鋭い特性ができる。ただ、希望する誘電体が手に入るのかという事や、どうやって誘電体の周波数を変えるのか、という事が大きな問題となる。まあ、あまり期待しないでやってみよう…というのがいつもながらの動機であった。

ジャンクは身を助ける?!

 今回もスタートはジャンクである。ある月の講習会で10.685Ghzの誘電体を使った二段のジャンクBPFが手に入った。小林君がいじっていたのを横で冷やかしていたが、これの蓋を浮かせてやると10.45Ghzあたりに同調する様だ。「ふーん、じゃあもう少し大きめの空間があったら、10.24Ghzにもなるかなぁ」等とこの時は考えた。

**この場合、DROの同調は誘電体とその周囲の空間で左右される。調整ネジを近づけて空間が狭くなると、周波数は当然ながら高くなる。昔いじった時に最初は、逆に勘違いしたが、どうやらそんな事の様だ。

10月10日 幽ノ沢がキャンセルになったので、BPFをいじってみた。使ったのは、ジャンクから取った誘電体BPFのケースと10.68GのBS用誘電体。ジャンクはもともとは10.6Gあたりだが、誘電体は外す時に割れてしまった。
11GDRO.JPG - 10,285BYTES 方法は単純でBS用誘電体を紙やすりで削り、電極の間において蓋をする。削るのは上下の厚みを削るようにした。これでHP8620の信号をスペアナで見て、通過する周波数を目的周波数あたりまで上げて行く事にした。まず、一つを削って、11.8Ghzあたりまで上がった。そこで、もう一つはこれを見ながら荒削りして、最後に微調整した。
 この固定方法は、本当は接着剤が良いのだが、たいてい周波数が大幅に下がるので、今回は両面テープで止めた。調整用ネジがきつくて回らないので微調整はしていない。

11GBPF2.JPG - 22,590BYTES11GBPF1.JPG - 17,662BYTES これをスペアナをMAXHOLDにして特性をとってみると、100M離れて30dB弱の減衰。ただし、通過損失は大きくて15dB程ある。うーん、やっぱり流用だと厳しいかな??でも、紙やすりでゴリゴリやって、測って・・・を繰り返せば、一応、BPFもどきができることはわかった。

 

10月12日 今日は仕事が休みだったので、午後から誘電体BPFをさらにいじってみた。同調可変用のビスを付11GBPF3.JPG - 17,825BYTESけるために前にビスをドリルで取り去り、別のネジが可変できる様に、ナットを接着剤で取り付けた。
 こうして可変してみると、100-200M程度は可変できる様だ。47090Mの1/4である11772.5Mあたりに中心が行くようにしてみた。すると、ロスは同調を調整すると-5dB程(大目に見て-10dB)となった。
 特性をとってみたら、少し上が甘いようだが、100M下で-40dB程とれるようだから、そこそこの性能になる様だ。

 これでとりあえず、逓倍用47Ghzに使えるBPFが出来上がった。ただ、このままでは「ジャンクのBPFの箱」が必要だ。これがなくてもできるように適当な材料で、簡単にできなくては再現性が無い。何か良い材料が無いかな・・・ という所でひとまず一段落となった。

U字アングルで作る誘電体BPF

12月5日 八ヶ岳で二日間はアイスクライミングの予定だったが、一日となって目出度く講習会・忘年会にも参加できる事になった。そこで、誘電体のBPFの続きを…と思って、朝、ゴリゴリと材料を切って持参した。

BPFTEST.JPG - 17,436BYTES 原理は簡単。15mm幅のU字型アルミを切ったものに、側面にSMAを二つ付ける。今回は、センターピンの間が偶然20mmとなった。この間にDROを置いて、適当なアルミ板で蓋をする…という単純なものだ。

 これを川崎に持ち込んで、DROとしてはセラミックの下駄付のBS/LNB用の物を載せて測ってみた。すると、どうも周波数は11.3Ghzあたりにセンターがあった。20mmの間に二つのDROを載せると、スパッと切れるようになった。

DROBPFTEST1.JPG - 19,656BYTESそこでセラミックの下駄(下から浮かせている物)と反対側を下にして、アルミ板に直接にDROを載せると12.6Ghz中心あたりに高くなった。いずれもうまく間隔をとると、損失は3dB以下程度になる。下駄を高くしたら…と適当なトリマーを下に引いてみたが11Ghzあたりまでしか下がらなかった。発振する周波数と違うのが不思議だ。

不思議だったので帰宅してから、自宅の他のBS用とおぼしき物でも直接にアルミにおいたら11GHZあたりになりました。多分、これで何か適当な下駄があれば、もう少し加減できそうだ。何か良い材料がないかな・・・・と思案中。ただ、11.45Gとか、11.8Ghzあたりの47G四逓倍段用のBPFならば、この手のDROを削れば、簡単に作れる。もう少し特性を急峻にするには、二つのDROの間に何かつけて狭くしたら…とも思うが、やってみないと分からないなぁ。

12月25日 今日は、部屋の掃除をしてから、誘電体BPFの続きをやってみた。誘電体のネジ止め用に西川で2mmのプラスチックネジを購入してきた。これとワッシャで下から浮かせた状態でどの程度に周波数が下がるか…と言うのが眼目だ。
 適当にネジの穴をあけて取り付けられるようにした。どうも、通りぬけがあるのは、幅が大きいからではないかと思う。でも、この状態でワッシャ無しで10.7Ghzあたり、ワッシャ付で10.2Ghzの下あたりにピークが出てきた。これに調整用ネジをつけた蓋を作ってやり調整してやれば、もっとピークははっきりとするはずだ。また、プロープからの結合度を変えると、特性・ロスが大きく変わるはずだが、ちょっと手間そうですだ。そうか、穴をたくさん開けた金具を作って、テストすればよいのかぁ…。

プラスチックのワッシャ二枚
をかました特性。               ワッシャ無しでの特性。
BPFTEST2.JPG - 18,742BYTESBPFTEST3.JPG - 17,384BYTES