八ヶ岳の冬はアイス天国

 

 冬の八ヶ岳は、「風ヶ岳」だ。そして、雪は多くないが低温は半端ではない。勢い各滝は凍って、アイスクライミングの絶好のルートとなる。その中には初心者でも楽しめる場所もある。久しぶりに寒い冬となって、今年は11月からその時期がやってきた。

 

1) 11月25日 裏同心ルンゼ 2人 11月半ばにして裏同心ルンゼが凍ったとの情報に、ボッカ変じてアイスクライミングの登り始めに出かけた。美濃戸口を6時に出たが、ノリさんがどんどん歩き、鉱泉8時半前に到着のハイペース。一息ついて支度してから裏同心に入った。

 F1右側は水が流れてやや氷が小さい。シーズン最初なので慎重にロープを出して越えたが、既に多くの人が登ったために階段状だった。F2から上も雪がまだ少ないので、ほぼ氷が露出している。それでも、F4のナメは雪に埋まりかけている。核心部のF5上部も階段状で左側を難なく登った。右にルンゼの小さな氷にバイルを振るって登り、終了点となる大同心稜に出ると、ポカポカの日だまりが待っていた。輝く山々を見て、ああ、いいなぁ、八ヶ岳の季節がやってきた、と知る。下りの北沢登山道はツルツルだが、アイゼン無しで15時前には美濃戸口に降りることができた。

 

2) 12月23日 広河原沢左俣 三人 今日は、アルパイン・アイス入門ルートの広河原沢左俣だ。朝、サカちゃんの丈夫な軽自動車で、船山十字路までの凍った道を上がると、7時なのにほぼ車は満杯だった。なんとか駐車して林道をたどると、二俣も多くのテント。やはり考える事は、みな同じだ。

 

左俣に入ると水が流れているが、ほどなく3m程の氷が現れ、8:40頃にここで支度した。しかし、バイルを打ちこみアイゼンの前歯蹴り混んで越えると、また水が流れている。「大丈夫かな」と話題になるが奥に期待するしかない。沢は岩にうっすら雪がついて嫌らしく滑る。サカちゃんが一度滑ったが、吹きだまりに落ちて事なきを得た。やがて大岩を過ぎると氷が多くなり、数m程度のやさしい氷の滝を楽しくロープ無しで登ると下の大滝に出た。

2012HIROGAWARA.JPG - 60,169BYTESここには先行パーティがおり、5人が登り終わる一時間程を待った。下の大滝は、下部はやさしいが、途中から80度位でバーチカルな上に氷が硬い。核心部の前にスクリューハーケンをねじ込んで登り、一段上で左の緩い場所に逃げ、またスクリューをねじ込んだ。しかし、左側は氷が薄く岩が出ていた。四苦八苦して行こうとしたらアックスが外れてロープにテンション。スクリューで支点をとっておいて良かった…。一息、落ち着いて態勢を立て直し、バイルを打ち込み中央に出て越えたが、ここで力を使いきってしまった。

 

この先は、谷が広く・明るくなった。緩い氷の滝を登った所で、12時になるので日だまりでお昼を食べた。風が来ないとポカポカで昼寝をしたくなった。しかし、沢が右に曲がると上の大滝があった。見るからにバーチカルで、しかも右側は薄くてつらら状で氷が脆いようにも見える。なにより、下の大滝で疲れてしまった。この様子を見たのか、「巻きましょ!!」サカちゃんが言う。「そうすねぇ」と上の大滝は次の課題となった。もっともこの右からの巻きも結構悪く緊張した。

ここを過ぎると、谷は雪が深くなった。所々の氷を越えて、右の御小屋尾根に13時半上がると阿弥陀岳・権現岳が太陽に輝いていた。

船山十字路に長い道を下れば、さあ温泉だ。でも、来年も来るぞ、広河原沢!!雪が増える前の冬の八ヶ岳は、アイスの天国みたいなものだから。