北尾根よ、また来るぜ

 今年は、涸沢からの前穂高北尾根、北穂高から涸沢岳縦走と意気込んで、四人で出かけた。しかし、北アルプスは29日前後に涸沢カールで60cmもの降雪があり、「入山自粛勧告」などが県警から出されていたらしい。入山した1日には天候は回復したが、2日までは気温は低く、風は冬だった。

5月1日 夜行バスで上高地に入る。6:30前にゆっくりと出発。今日は涸沢までなので、まあまあボチボチだ。久しぶりに30Kgを担いだら辛い。軽量化ばかりしていると、体力が落ちる様だ。横尾までは運動靴だが、道の横に所々だが雪が残っている。フキノトウも見えていて、いつもより雪解けが遅かったようだ。本谷橋は、まだかかっていなかったので、久しぶりに沢底を歩ける。この方が歩きやすいが、距離は長くなるようだ。嫌になった頃に涸沢に到着して、テントを設営してから生ビールを飲みに行く。でも、晴天ながら寒いのでテラスで一杯飲んだら早々に退散した。どうも低温のようだ。
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2010GW3.JPG - 9,158BYTES5月2日 朝2:30起床だったが、のんびりペースで4時半前に出発となった。先行パーティがあり、五・六のコルへのトレースを追ったが、どうも昨日のものとはずいぶん違うので、途中からは別に自分たちで別にトレースを付けた。
 コルには、二番手で到着したが、先を行くパーティは、結構、苦労している様だ。なんでだろうか、と尾根に取り付いてわかった。二番手なのに、足場がどんどん崩れるのだ。新雪がまだ締まっていない感じで、前のトレースもともすると崩れるので、一歩一歩に時間がかかる。
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 五峰を越えて、四峰へのコルで見上げると、先行パーティはザイルを出してルートを探っている。さて、無雪期はどっちから登ったかな、と思い起こすが、私は左手を巻いた気がするが、セイさんは右から行ったという。先行が右から取り付いたので、素直にこれを待ったが、後から来た二人が左から巻いて、ルート工作をしていった。ずいぶん待ったな、と思ったら、なんとこの待ち時間が二時間に及んでいた。

2010GW5.JPG - 14,371BYTES 四峰の登攀では、アイスハンマーとのダブルアックスでリードした。結構、回り込むところが厳しく、50m一杯になっても、確保支点は無かった。先行は、スノーバーを使っていた。私たちも自作品を持ってきたのだが、「どうせ岩場だから使わないだろう」と、ビレイ点に置いてきてしまったのが悔やまれる。仕方なく、ピッケルとアイスハンマーを埋めて、支点とした。セカンドでゴロウさんが登って来た所で、ザイルさばきの名手だけあって、次のピッチに行けるように固定ロープを変えてくれた。そもそもここは全員がそろうには狭いので、埋めたピッケルの替わりにゴロウさんのを借りて、ナイフリッジの先まで登った。しかし、こんな具合で登っていたら、他ルートをとったパーティに抜かれてしまい、五番手になったしまった。やはり、ここは左手が正解だったようだ。
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 小さなナイフリッジを越えて、三・四のコルに降りると、早くも12時になった。先行した三人組は、ここからエスケープするらしい。この時刻で、さらに三峰の登攀で順番待ちをすると、二時間くらいはかかりそうだ。そして、核心部を越えて前穂高まで行くと、山頂15時か16時を過ぎるだろう。しかも、今日の登攀している大半が、岳沢下山組の模様だ。吊尾根にも手間取めと、日没は避けられないだろうか。…こんなことを考えて、残念だが三・四のコルから涸沢に下りることにした。
 降りると決めてしまえば、最初は急だが早いもので、14時前に帰着して、生ビール生活となった。

5月3日 今日は、北穂高から涸沢岳への稜線のミニ縦走だ。2:30起床、4:30出発は変わらない。ゴロウさんは前日に足が痛くなったので、テントで静養するとの事だ。朝は一緒に出たテルさんも北穂沢の登りで気分が悪いとの事で、北穂高からテントに戻り、セイさんとと二人で稜線を歩くことになった。
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 最初、バケツが涸沢カールに続いていたが、よく見たらこれはスキーで2010GW9.JPG - 11,517BYTES滑るためのトレースだった。よく見ると、稜線にそっては、アイゼンの歯の跡がくっきりとあり、これをしばらく辿った。南峰から最低コルまでの下りでは、ガレ場が雪に埋まっていて夏よりも歩きやすい。一か所だけ岩場をこわごわと降りる場所があったが、ママヨ、エイと飛んでしまった。最低コルまで一時間で、ここからのエスケープだろうか、トレースがカールに続いている。でも、ここで降りてはつまらない。
 涸沢岳への登りは鎖が半ば氷に埋まっていた。先を単独の人が登って行ったが、怖そうなのでザイルを出して、一応はコンテに結んだ。もっとも、これは精神的なもの2010GW10.JPG - 37,507BYTESで、下手の所で落ちたらモロトモである。従って、精神的にはより緊張した中で登攀すること2010GW11.JPG - 24,140BYTESになった。鎖をテカテカの氷が覆う場所が目立ち、アイスクライミングの経験がとても役立った。氷を過ぎて雪のリッジを通って、いったんコルに下ると、最後の登りが雪のついた壁状だ。ここでザイルを伸ばして、最後の1Pだけスタカットとした。岩角でランニングを取ったが、落ちたら岩角で切れるかもしれない。でも、最初の一歩が悪いだけで、後は見かけほどではなかった。10時前に涸沢岳に到着。涸沢岳から稜線を振り返るとトレースが輝いて見えた。
 奥穂高岳の方を見ると、梯子の上がテカテカと光っており、ザイルで懸垂して降りてくるパーティがあった。今日も県警がコルに張っていて、装備と技術のない人には登山自粛を求めているらしい。これは、北尾根で突っ込んでいたら、夜になってのここの下りは大変だったろう。でも、涸沢岳がいつもとは違い、枯れ木も花の賑わいという感じで、人でいっぱいである。
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 コルに下って一息入れて、カールの下りにかかる。いやはや、やはりとことん暑い。下の方に来て、尻セードの跡に「一人用銀マット座布団」を引いて、尻セードで滑ってみると、これがすごいスピードになる。もう少しではるか先にいた先行者にぶつかりそうになって、左に回転して逃げた。うーん、でも、これを尻あて風にしたら、最高の尻セードができそうだ。涸沢のテントに戻ると、テルさん、ゴロウさんが迎えてくれた。ほどなくセイさんも降りてきて、昼過ぎには涸沢のテラスで生ビール三昧となった。ともかく、この日はとても暑い一日となった。

5月4日 今日は撤収して下るだけ。やはり暑くて、松本は27度だそうだ。横尾で運動靴に履き替えて、10時半過ぎには河童橋についた。でも、村営のお風呂は11時半からだったので、しばらく待つことになった。この日は、上高地も20度位あった模様。もちろん、風呂に入ってからはお昼と生ビール…やはり、GWには生ビールが欠かせないようだ。

2010GW15.JPG - 17,378BYTES 今回は、条件が厳しく時間切れとなった前穂高・北尾根。ぜひ、来年、再度登ってみたい。雪が締まっていたらもっと楽に登れたはずだから。