テレビのあるドキュメンタリー番組で心臓外科の名医が紹介されていました。命を救ってもらった患者が泣きながら先生にお礼を述べようとしている場面です。そのとき、その先生が発した言葉が印象的でした。「この手術の成功は私がもたらしたものではないですよ。あなたが私を見つけ、私の所までやって来て、あなた自身が自ら獲得した勝利なんですよ。」同じ番組で、様々な名医が紹介されていましたが、皆、大きな大学病院の教授というような肩書きがある医師ではなく、どちらかというと私的な小規模な病院で患者の身近に立って最良の医療を提供しようと奮闘努力する医師たちの姿でした。

  この番組を見た時点ですでに、僕はこれから紹介する西島脊椎クリニックの西島先生の手術を受けることが決まっていました。2月中旬に椎間板ヘルニアによる腰痛と左足の激痛のため立てなくなり、仕事を1ヶ月半休みました。命に関わる病ではないものの、風邪につぐくらいに多くの人たちが痛みに悩まされている重大な病であることをインターネットの様々な情報から知りました。地元の整形外科で保存的治療を受けながら、遅々として改善せぬ症状と向き合いながら自分の病気に関する情報を探し求めました。ネットの世界は今やどこへ足を運んでも、同じような状況が広がっています。様々な治療法があり、様々な意見が乱れ飛んでいる。検索すれば膨大な情報の大海原の中に放り込まれる。どれが正しく信頼できる情報で、どれが悪意に満ちた罠なのか。もう何年も前から言われているネット社会の功罪が、修正されないままに無限に膨張しているというのが実感でした。

  が、しかし、それならば現実社会はどうなのでしょうか。ネット社会とは逆に情報が全く開示されない暗闇の中で、私たちは自分にとって最良の道を選び進んで行くことができるのでしょうか。何らかの病に倒れ、近くの病院に駆け込む。そこで受け身的に与えられる医療。旧態依然とした医師と患者の力関係の中で、言われるままに治療を受けていくしかない。理想的にはインホームドコンセントやセカンドオピニオンの時代と言われながらも、現実には自分で最良のものを選ぶというような場面は決して与えられません。今回の僕の病気に関しても、地元の整形外科医にいくつかの他の治療法の可能性に関して問いかけましたが、「そんな治療を受けて、たいへんな目にあっても知らないぞ。」とか、「このまま良くならない場合は、大学病院で従来のやり方での手術を受けるしかないよ。」という答えしか返ってきませんでした。手術の危険度も高く、術後の回復に長い時間がかかる従来の手術は絶対に受けたくないと考えていた僕は、自分で自分にとって最良のものを発見し、それが与えられる場所まで足を運び、内容を確かめ選ぶしかないと決心しました。

  インターネットは僕たちに、一般的なものから専門的なものまで、ひと昔前では考えられないほど豊富な情報を提供してくれます。現実の社会が旧態依然として硬直していて可能な選択肢をすべて開示してくれないのなら、自らこのネット上の情報を慎重に吟味して、自分にとって最良の選択肢を選び行動するしかないと思います。椎間板ヘルニアで倒れて1ヶ月半後、3月の終わりに僕は伊丹から東京調布の西島脊椎クリニックへ飛んで行くことにしました。地元での硬膜外ブロック注射による保存的治療もそろそろ限界、このまま完全に治らないのならば手術をして大きなヘルニアを2カ所摘出しなければならない、それならば最新最良の患者に優しい治療法を選ぶというのが僕の結論でした。西島先生は、レーザーによる椎間板除圧術でもうすでに2000名以上の治療実績を重ねておられる有名な先生でした。僕自身、可能ならばレーザー治療を受けてみようという気持ちもありました。そして、椎間板ヘルニアのレーザー治療は大阪でも受けることのできる病院がいくつか存在しました。それなのにどうして西島先生を選らんだのか。それは、レーザー治療のやり方が他の病院とは違ったからです。内視鏡で常に観察しながら、冷却システムで椎間板を熱で痛めないので安全性が高いというのが、最終決定の根拠でした。さらに、僕のヘルニアがレーザー治療の適用外であった場合どうするのかというのがポイントでした。大病院へ行って、従来の大きな手術を受けるのか。苦しい検査を受け、大きく背中を開いて骨を削りヘルニアを摘出する。術後何週間も動けず、回復まで長い時間がかかり、そして神経損傷の可能性も5%もある。この選択肢は僕にとっては最初からないものでした。

  西島先生は、どのようなタイプのヘルニアにも適応する顕微鏡下ヘルニア摘出術も得意とされています。それどころか、脊椎専門のクリニックとして様々な最小侵襲手術で実績を重ねられている最先端を走られている先生です。レーザー治療適用外ならば、顕微鏡下摘出手術でヘルニアの根治を目指そう、腰に爆弾を抱え込んだまま怖々働くのではなく、すっきりヘルニアを取ってしまってもう一度体を鍛え直してしっかり生きようというのが僕の結論でした。3月末の診察で大きなヘルニアを2カ所再確認、予想通りレーザー治療適用外ということで、西島先生による顕微鏡下ヘルニア摘出手術を受けることに相談の上決定しました。ただし、人気のある西島先生の治療ですからその時点で手術の予約は2ヶ月待ち、5月23日が手術日ということになりました。

  今日は6月4日、一昨日に退院して大阪に帰ってきました。明後日から仕事に復帰します。手術直前に腰と左足の状態は少し良くなっていたので、術後は少々リバウンドしました。でも、手術当日の夜、歩いて自分の病室に戻れましたし、4日目からはリハビリのための散策に外に出れるようになりました。ゆっくりとしか歩けないけれど、激痛に悩まされて動きたくないというような状態では全くありません。むしろ積極的に動きたい気持ちでいっぱいです。入院の間、西島先生は毎朝7時半に回診に来られました。土曜も日曜もです。この小さな、だけど最新の設備が整えられとても清潔なクリニックが先生の城なんだなあと実感しました。月曜から金曜まで毎日午前中に2つの手術をこなされ昼からは外来の診察、西島先生は自ら築かれた城の中で、夢に向かって挑戦し続けておられます。

  長い文になりましたが、最初の話に戻ります。患者の身近に立って最良の医療を提供しようと奮闘努力する医者を自分で見つけて、そこまで足を運び内容を確認して選択する、これが「セカンドオピニオン」を超えた「ファイナルオピニオン」ではないでしょうか。今回の自分の経験を通して、良い医療は自分で獲得しなければならないということを痛感しました。お世話になった西島先生に感謝の気持ちを込めて、ここにもう一度、西島先生のクリニックへのリンクを掲載しておきます。

                  医療法人社団一志会  西島脊椎クリニック

 

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