マダラクワガタのお尻のアワ
Seabat 2007/06
伊豆で採集したマダラクワガタ(Aesalus asiaticus)を飼育して1年半を過ぎ、WF1となる個体群が関東平野の室内常温飼育では4月に入って繁殖期に入りました。
その際に観察した行動、及び写真に写った不思議なお尻の泡について報告します。
まず、飼育環境ですが、ミニプラケにアセビの赤枯れ材と、赤枯れ材を粉砕したマットを使っています。
ゼリーも入れていますが、自然乾燥と区別がつかない程度に減っていますが、食事をしている様子をまだ見たことがありません。
それとミズゴケを少し入れ、それが乾燥しない程度に霧吹きをする程度の管理で累代しています。
2月頃に幼虫が入っている材に穴がいくつか開き、同時にマットにも同じように穴が開いたことを観察しました。
これは、新成虫が羽化し材から脱出した後、再びマットに潜ったのだと思われます。
この状態のまま静かに3月が過ぎ、4月になった途端にそれまで姿を見ることもなかった成虫が活発に行動するのが観察できるようになりました。
繁殖期を迎えたと思われます。
オスは材とマットの境を中心に穴を掘ります。
そして、その掘った穴の入口にお尻を出した「頭隠して尻隠さず」といった姿勢でジーっとたたずみます。
この時、マット上のメスは飼育ケースを登ろうとしたり、マット上をせわしなく動いたりとオスとは対照的に活発に動き回ります。
「なぜ、オスはお尻を穴から出して、しかもジーとして待っているのだろう?」
という誰もが思うだろう疑問を私も持ちました。
オスはメスが集まりそうな餌場などにたたずむことは他のクワガタでも観察できます。
しかし、今回の場所は餌場ではありません。
掘った穴の入口にただただジーっとしています。
そんな中、撮影したオスの写真の中にオスの尻部にアワが写っているものがありました。
このアワが「メスを誘うオスのフェロモン」に見えてしまいました。
「オスが産卵か交尾のための穴を掘り、その穴の入口でメスを誘うフェロモンをお尻から出して待っている」
というように思えてしまいました。
この仮説はマグソクワガタの飛翔採集で観察できるメスにオスが集まるという行動や、
メスを囮として使うフェロモントラップで、コルリクワガタやミヤマクワガタ採集できるという
「メスがオスをフェロモンで呼び寄せる」こととは正反対となります。
もし、クワガタで全く正反対の異性へのアプローチがあるとすれば面白い話です。
本当にそうなのか?
残念ながら今回の観察では交尾、メスがオスの掘った穴に入っていく様子などの観察が出来ていませんし、泡の成分・効果も不明です。
来年はもう少し観察しやすくできるよう個体数を増やして観察してみたいと思います。
以上、目で見た観察記録から完結したものではありませんが一報ということで報告させていただきました。
(この文章は私のブログ森のSeabatで書いた記事を再編して寄稿しました。)