エピローグは短めに海図のない船旅を続け、大海原に浮かぶ小さな島にようやく辿り着くことができた、そんな感じがする。ブナの森がいいのか人里近くがい いのか、倒木がいいのか切り株がいいのか、樹種は何を追い求めるべきなのか、模索し続けてきた末の幸運である。 しかし、何とか採集を果たした後においても、イッカククワガタの生息環境や生息条件がどのようなものであるのか、理解できた訳ではな い。「人里近くの開けた場所のクリかブナの切り株が良い」と言えるのか、単なる偶然だったのかは、全く分からない。実はこの2週間後 、同じ採集ポイントを再訪し、そのポイントに散在する切り株や太い倒木のみに絞ってイッカク探索を行ってみた。 しかしながら、3時間以上かけての様々な材との格闘もむなしく、イッカククワガタを見つけることができなかった。 イッカククワガタの追加が得られなかった理由として、次のようなものが考えられる。 1.陽気が良かった4月中旬が過ぎ、羽化成虫が既に材の中から脱出した後であった。(しかし、これは、幼虫すら見つからなかったこと の理由とはならないかもしれない。) 2.その地域において、イッカククワガタはそもそも多く見られない。(採集できたことがまさに幸運だったということになるが、そうだ ろうか。) 3.採集の仕方に改善の余地がある。(パラレリの幼虫やその明らかな食痕が出てくると、無駄な割出しを避けるためにそれ以上割るのを 止めてしまうが、もっと踏み込む必要があるのか。)
イッカククワガタの生態はどうなっているのか、どうしたら効率よく見つけ出すことができるのか。まだまだ模索は続く。確かな海図を得
られないまま、再び大海を漂い始めてしまったようだ。
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主な参考文献・ウェブサイト(本文中に言及したものを除く)
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