「夫唱婦随」 〜ある秋晴れの林道にて〜

by クリ




それは、秋晴れに恵まれた9月の林道での事でございます。

その、恐らく50代半ばであろうと思われるご夫婦は、
私と同行のくわたけ氏が、
朝一番の林道でのヒメオオ採集を終え
その成果に意気揚々と林道を下っている時
我々の300メートルほど下手のコーナーから
ゆっくりと登って来られたのでございます。

遠目ながらに拝見するそのお姿は、
ご夫婦揃って片手に補虫網を携えており。
奥様は、おそらく採集したクワを入れるためと思われる
やや小さめの虫かごを首から掛けられ
まるで幼子のカップルのように
それは、それは大変仲睦まじいものでございました。

また、お二人が歩を進めるその間隔も
「妻は三歩下がって夫の影を踏まず。」
まさに、この言葉どおりのものであり。
長年にわたる幸せな夫婦生活をおくって来た者でしかなしえない
絶妙なものでございました。

やがて離れていた距離も3メートル程に近づき
私が照れながらも、ご挨拶させていただくと、
奥様は、その品の良い笑顔で挨拶を返されたのでございます。
そして、その様子を傍らから微笑ましい顔で見つめられるご主人・・・
まさに「夫唱婦随」の、すばらしいご夫婦でございました。

何でもご主人に聞く所によると  ..
ヒメオオを採るため、わざわざ横スカから来られているとの事。
ご夫婦そろってのヒメオオ採集とは
ほんに羨ましい限りでございます。

生憎ご主人が目的とされていたヒメオオに限っては
既に私とくわたけ氏が採集した後の事もあり
思ったほどの成果は挙げられなかったのではないでしょうか。
今思い出しても心苦しい限りでございます。

もし、そのご夫婦がこの投稿をご覧になっておられるようでしたら
この場をお借りしてお詫び申し上げます。
   ..
「横スカの仲睦まじきご夫婦、誠に申し訳ございませんでした。」



ちなみに同行していただいた、くわたけ氏の家では
「妻は10歩先を進んで、夫に影を踏ませず。」だ、そうです。(^^;




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