ヨーロッパミヤマクワガタ(Lucanus cervus)探索記(その4)



6.それから

その後も、ミヤマとの出会いは少しずつながら続きました。

まず、7月に入った矢先、日中に職場のそばを歩いていたところ、なんと舗道の上でミヤマ♀を拾ってしまいました。パリ西側の 16区内です。パリの街中で成虫を拾ったのは、昨夏に次いでこれで2度目。直ぐ近くのブローニュの森から夜間に飛来したので しょうが、こんな市街地で見つかるとは、やはり驚きを禁じえません。しつこいようですが、なにせミヤマは、日本語では「深山」と 書かれるように、自然が豊富に残されている場所にしか生息しないであろうと思っていましたから。どうやら、6月中旬から 7月上旬にかけて、パリ16区のブローニュの森に最寄の場所一帯は、確率こそ高くはないものの、舗道の上などを歩いている ユーロミヤマに出会うことが可能なようです。

[ミヤマ♀] [ラネラーグ公園脇]
   
パリの歩道の上で歩いていた♀ その♀が歩いていた横断歩道付近

街灯採集ができる郊外のO町にも、何度か出かけてみました。7月2日は、月齢の良いのが幸いしてか、 1♂3♀♀を拾うことができました。しかし、その2日後、わざわざ米国より訪ねてきてくれた方と一緒に行ってみたのですが、 あいにく気温が下がってしまい、成果は出ませんでした。その後、7月中旬の15日と17日にトライしてみたところ、幸い17日に 1♂を得ることができましたが、どうもそれで季節は終わりのような気配でした。ミヤマ採集の頃合いとしては、 パリ近辺においては6月中旬〜7月中旬が最適期のようです。

[オニ♂1] [オニ♂2]
   
住宅街の歩道上の♀ 歩道上でひっくり返っている♀


[オニ♂1] [オニ♂2]
   
歩道の側石にしがみついている♀ 家の壁に貼り付いている♂

7.終わりに

こうして、幸運にもこの夏は、パリとその近郊においてユーロミヤマをそこそこ採集することができました。それでも、来年の夏に 向けて、いくつかの課題が残されているように思います。

結論としては、ユーロミヤマを探すのならば、少なくともパリ近郊においては、街灯廻りが最も効率的であると思われます。 パリ近郊にはカシワ(ナラ)の森がいろいろな場所で広がっているので、より良い街灯ポイントを開拓する余地が豊富に あるように思われます。

また、当初の念願であった、樹液や樹上にいるミヤマの観察も是非とも果たしてみたいところであり、何とか良い樹液ポイントを 見つけ出したいものです。

さらに欲を言うとすれば、ミヤマ♂のサイズです。採集できた♂はサイズとしては大きいものでも50mm台半ばと、せいぜい中型クラス であったため、もしも可能であるのならば、もっと大きくて大顎がしっかりと湾曲した、いかにもユーロミヤマらしい♂に 巡り会ってみたいところです。一般的に、フランス北部産は南部産よりも平均サイズが小さいと言われているところですが、しかし、 ブローニュの森で採れた♀は40mmを超す比較的大きなサイズであったことから、パリ近郊でも60mmを優に超すサイズの♂もきっといる のではないかと期待されます。

[ミヤマ♂]

7月17日に採集した♂(49mm)。ミヤマとしては小さいサイズだ

ユーロミヤマは、ヨーロッパで生息する甲虫のうちの最大種であり、さまざまな場面で昆虫のシンボルのように扱われている クワガタです。さて、来夏はどのような出会いが訪れてくれるのでしょうか。

(注5)
ユーロミヤマは、EU(欧州共同体)の協定によって保護対象種に指定されており、これを受けてヨーロッパのいくつかの 国では、その国内法令により採集や取引が規制されています。一方、フランスにおいては、ミヤマの広範囲にわたる棲息が確認されて おり、一定の保護措置の対象には指定されているものの、採集自体を規制する法令が定められていることはないようです。 (フランスにおける採集規制種の例:ルリボシカミキリ(Rosalia alpina)、オオカミキリ(Cerambyx cerdo)、オオチャイロハナムグリ (Osmoderma eremita))

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