採れない採集記/ 標本修理工T





思い出の島々
−採れない黒島−


いろいろな所で採集に行っていると、そりゃいっぱいクワガタが採れる時もあればまったく採れない時もある。 限られた時間、少ない休みと予算を使って採集に行くわけだから、行ってもなにも採れないというのはかなりショックなのだが、 それらがすべて自分の血となり肉となる(経験という意味でね)んだから良いんじゃね?
ま、いままで行った中で一番ショックだったのは、高い費用かけて行った無人島でなんも採れなかった時だけんど……。
今回書いたのは、そんな渡島記。残念ながらクワガタは登場しませんが、気分だけ味わっていただければいいかなーなんていう気分です(自分的に)。

さて、行った所は沖縄県八重山諸島の黒島。石垣島と西表島の間にある小さい島です。クワガタの記録は表面的には出ていない? 一応、ヒラタの噂はあるものの、石垣在住の虫屋さんに、「あんな島にクワガタはいない」と昔言われたことがありましたって程度の知識だけで、 「とりあえず調査に行ってみよう。ヒラタくらいいるだろ」ということで行ってみたのでした。
とゆーても、黒島が目的で八重山まで行くほど酔狂ではなく、真の狙いはヤエネブとヨナネブ。黒島はとーぜん『オマケ』なのだ。

放牧場内にある沖縄特有のお墓『亀甲墓』

放牧場内にある沖縄特有のお墓『亀甲墓』


2005年2月8日。
昼前に石垣島に到着した私は、12時半の船に乗って一路黒島を目指した。 いかんせん情報が少ない島ではあるが、レンタバイクがあるらしいので足の心配はいらなそうだ。まぁ、歩いてもたかが知れてる島っぽいけど。

小さい島でも一応商店がある。はっきり言って助かる

小さい島でも一応商店がある。はっきり言って助かる


船は約30分ほどで黒島に到着。 船の待合所がレンタバイクとレンタサイクルもやっているので、店の人に「レンタバイクを貸してください」と言うと、 「自転車で十分まわれますよ」と自転車を勧められた。 んなこと言われても、こっちゃ移動で労力を使いたくない。 「自転車でなくバイクが借りたいんです」と言うと、「バイクじゃなくても自転車で十分ですよ」と、なぜか食い下がってくる。 『なんでやねん』と思いながら、「イヤ、観光じゃないんでバイクが借りたいんです」と言うと、 やっと言った言葉が「いまバイクが全部故障してるんです」だそうだ。
最初っからそう言え!

その後、聞きたくもない島内の案内をされてやっとこ出発。 久しぶりの自転車だけど、これがなかなか爽快だ。 島は平坦でアップダウンもほとんどない。でも、やっぱりムダな労力は使いたくなかった……というのがホンネ。
観光目的だったら別に自転車でかまわないっちゅうか、最初から自転車を選択するんだけどね。

島の地図を眺めながら、目的地へ向かう。

林内の様子。倒木はあるんですが……

林内の様子。倒木はあるんですが……


地図で広葉樹のマークが付いているあたりまで来てみると、たしかに広葉樹は生えているのだがメチャ乾燥している。 海岸沿いにある、いわゆる防風林ってヤツだ。 どこまで行っても防風林は乾燥しまくりで、海岸沿いはダメだと見切りをつけ、島の中央部方面の広葉樹マークに狙いをつけて自転車を漕ぐ。
しかし、ホントに久しぶりのチャリは疲れる。本格的な採集は林に入ってからだというのに、移動で疲れたくない;;

くつろぐ牛さん達

くつろぐ牛さん達


島中央近くの東筋(あがりすじ)という集落に到着。 ゴミ捨て場(とゆーか、正規のゴミ捨て場じゃなくて、皆が勝手に捨ててるといった感じ)に良い感じの倒木を発見するが、 あまりにも人目に付きやすいところにあるため、泣く泣く諦めて別の場所へ移動。
言い忘れたが、この黒島は島のほとんどが放牧場で、林らしい林は先ほどの防風林くらいしかない。 それ以外の林というと、どれもこれも放牧場の中に点々と存在する小さなラグーンのような規模のものばかりだ。 防風林は乾燥が激しくてなんにもできなかったが、この放牧場の中にあるラグーンの方がよっぽど環境は良く、倒木の数も多くてけっこう期待が持てた。

民家の屋根にあったシーサー像

民家の屋根にあったシーサー像


が、クワガタは幼虫どころか食痕すら出てこない。 「いる!」という雰囲気というか気配がまったく感じられないのだ。 それでも、「これだろ!」という倒木を見つけてオノを入れてみると、ゴキブリみたいなすばやい動きの生物が材下に逃げていった。 なんだろうとよく見てみると、これがヤエヤマサソリ。 今回の採集の目的のひとつだった(とゆーか、知人に頼まれていた)ので大事に回収。 この倒木からはクワガタは出てこなかったが数匹のヤエヤマサソリが出てきてくれて、ちょっと嬉しかった。

さて、サソリはこの際どーでもいいのだ。私の目的はあくまでもクワガタ。こんなヘンピな所まで来たからには、なんか成果を出さにゃなるめえ。 しかし、良さそうな倒木はもう見当たらない。 どの材にオノを入れても、結局なんも出てきやしねえ。最後に残された希望はあの“ゴミ捨て場の倒木”だ。
この際、背に腹は変えられない。人に見つからないようにヤブに隠れながら、倒木に少しずつオノを入れてみる。

ゴミ捨て場にあったベスト倒木。けどいない

ゴミ捨て場にあったベスト倒木。けどいない


どう考えても、ヒラタがいるならこの木から出ないわけはないだろう、というくらいの材だったのだが、残念ながら食痕もない。 目立つ位置にある材なので全開で壊すこともできず、雨も降り出してきたので諦めて採集終了。

ヤエヤマオオコウモリ

ヤエヤマオオコウモリ


帰りの船の時間も迫っているのでさっさと帰りたかったのだが、意外と遠くまで来てしまっていて港まで行くのに時間がかかった。 これがバイクだったら簡単だったのに……と思いながら、やや筋肉痛気味になった足をさすりつつ石垣島に戻る私であった。
もう行かない! ……たぶん。

黒島の船着場

黒島の船着場


※私は採れなかったんですが、某村山氏はしっかりサキシマヒラタの幼虫を採集している。 いるこたぁいるんだろうけど、マジ採れないッス。
ああ、そういえば……。ヤエネブとヨナネブはしっかりと採りました。

離れ行く黒島。海はキレイッス

離れ行く黒島。海はキレイッス






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