俺様の宝石さ浮谷東次郎氏、著作表題より引用

コルリのブリード  〜by 古谷



ここ数年すっかり虫の飼育に飽きた私であるが、たまたまコルリをブリードしたら卵を産み孵化し、 やがて羽化してしまったのでその経過を報告する。


親虫   昨年6月初旬某場所で捕獲したコルリの♂1匹、♀3匹を使用

2004年上半期号で “愛しのZ、おさらば採集” を報告させていただいた。その採集の翌日、 採集したコルリを全部〆て干物にしようとしたが、いざその段になって〆るのがかわいそうになってしまった(怖い顔してよく言うよ)。 せっかくこの世に生を受けたもの、産むかどうかわからないけどせめて産むチャンスを与えよう、 と捕まえた♀すべてを使ってブリードすることにした。


セットの概要

ケースの大きさはプラケースのミニを使用。私の場合、飼育スペースが狭い為に(ようは、金がなくてでかい家が買えない) 他のクワガタのブリードでもほとんどミニを使用している。したがって、コルリもその大きさから当然ミニを使用することに決定した。

横から見ると
   
上から見ると


そのミニケースに無添加醗酵マットを水分多めにして硬めに詰め、産卵木(コナラ)をほぼ埋めるように配置をした。 念のためにゼリーを置き、そこにコルリの♂1匹、♀3匹を入れた。 ケースの設置場所は、飼育部屋の棚の一番下で比較的に温度の低い場所にした。 設置場所の温度は、夏場20度前後、冬場14〜15度である。

棚の中ほどの現在の温度   一番下の現在の温度

飼育部屋は一年中エアコンが稼動させており、さらに部屋の場所によってあまり温度のばらつきがでないように扇風機をまわしっぱなしにしている。 その結果、棚の上の部分は夏場冬場ともに22度前後で、一番下は先程書いたように夏場20度、冬場14〜15度になっている。


経過

ブリード開始が確か採集の翌日の2004年6月6日である。その後、7月の下旬には、ケースの底に幼虫が観察されている。 詳しい観察記録をつけていないが(いまだかつて1回も記録したことがない)、7月下旬に某Nさんの家に皆で集合して打合せ (酒を飲んだ)を行った時にコルリが湧いたと報告した記憶があるので、少なくても7月下旬にはすでにケースの底で幼虫を発見していたことは確かである。 私の場合、産卵木をほぼ埋めてしまった為に、産卵マークを見ていない。 また、マットに産むことは考えにくいので、産卵木の幼虫密度が高くなりすぎてマットの中に出てきたものと思われる。

盛んに食ってますな(^^;;
   
げげげ、調子にのって剥いたら幼虫が出てきた

さて、その数量だがはっきり数えていないのでわかないが、最初から小分けする意欲が無くなるくらいケースの底にウジャウジャ居た(確認できた)ということで、 おおよそ100以上であろうか。その後、昨年の猛暑もエアコンの効いた飼育部屋のもっとも寒い場所に置いた為に、順調に経過した(成長していった)。

いつの間にか成虫に1 (^^;;

成長過程であるが、一週間に一度程度の頻度でしかケースを見ていないので、詳しい変化を観察してない。 また、幼虫もある程度成長すると目に見えて大きくならないので、びっくりするような現象も観察されなかったと思う。 そして先日、いつものようにケースを覗いたところ、羽化した個体を発見した、という事で、1年で無事成虫になってしまったのである。

いつの間にか成虫に2 (^^;;
   
見えにくいですが♀です・・・写真ヘタクソ (^^;;

そんな感じで今もほったらかしの状態だが、唯一はっきりと変化が現れたのは3月頃であろうか。 それまで盛んにマットを食べていた幼虫がほとんど動かなくなり、自分の周りを蛹室のように固め始め、そしてその中でほとんどじっと動かなくなったのである。 前蛹になる前に幼虫の状態で動かなくなるのは他の虫でも同じだが、コルリの場合ここからが長く、幼虫のままで前蛹になるわけでもなく3月からすでに3ヶ月、 なんと今もそのままの個体がいる。自然の状態と比べると温度変化に乏しい為であろうか。

私は、まだ幼虫してます   私は、蛹になりました


私が勝手に考えた飼育のポイント

個人的に感じたポイントは以下の通り。

  • 飼育温度はとにかく低く、特に蛹になる前後から羽化までは20度以下が好ましい。
  • 幼虫に食わせるマットは無添加の醗酵マットか材が好ましい。(本当か)
  • 出来るだけ、いじらず、さわらず、見ないでほったらかし。


飼育下の疑問

  • 私の場合ほとんど苦労せずに産卵、孵化、蛹化、羽化、とたまたまブリードに成功したわけであるが、はたしてこうも簡単にブリードが可能な種類なのであろうか。 もともと、発生時期に採集のポイントさえ抑えておけば比較的沢山採集することが可能な種類の為、ブリードする人が少ないということもあるのだが、簡単かどうかは、 もう少し件数を増やして検証する必要があると思われる。
  • 先の飼育でのポイントで書いたが、幼虫に食わせるマットは本当に無添加マットか材だけなのか。 このあたりは他のマット等を試していないのでなんとも判断のしようがないのだが、今後の挑戦すべき課題だと思われる。
  • 自然の状態では(山などの生息域では)、2年1化もしくは3年1化だが、今回は1年で成虫になった。 今回のブリードでは室内飼育かつエアコンで温度管理をおこなった為、冬場の温度が比較的に高かったことが原因だと私は思っているのだが、本当にそうなのであろうか。
  • 虫の大きさにしては、前蛹になる前から蛹になるまでの期間が他の虫に比べて非常に長かったように私は感じたのだが、この原因はなんなのであろうか。 また、本当にすべてのコルリに当てはまる現象なのだろうか。 私は、この点が非常に興味を感じている(ある意味、疑問に思っている)。 また関連することなのだが、幼虫から前蛹、また蛹になるきっかけ(現象)はなんなのだろうか。 私は、おそらく自然の状態では急激な温度変化がその引き金になるのでは、と想像しているのだがどうなのであろうか。


以上、簡単ではあるが報告を終わりたいと思う。 なお、何度も書いたが、私はほとんど観察らしい観察もせずほったらかしの状態でブリードをした。 したがって、きちんと観察すると実はまったく異なった結果、もしくは現象が見られるかも知れない。 その場合はいいかげんな性格の私が報告したということで、どうかご勘弁願いたいと思う。 また、是非皆様も挑戦してさらに報告していただきたいと思う。

最後に、表題の‘俺様の宝石さ’は、今は亡き伝説のレーサー浮谷東次郎氏の著作の表題より勝手に引用させていただきました。

ごめんなさい  m(_~_)m


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