新ヨーロッパコルリ採集記3


えいもん




さて、前回は運良くフォンテーヌブローのブナ林でヨーロッパコルリを採集することができました。 それでは、ブナ林があれば、パリ近郊の他の場所でも、果たしてコルリは見つかるのでしょうか。 インターネットを使ってフランス語で「ブナ」と検索すると、パリから北東に70kmほど離れた Villers-Cotterets (ヴィレール・コトゥレとでも読むのでしょうか)いう街を紹介するサイトがヒットしました。どうやら、その辺りには ブナ林があるようです。しばらく仕事や生活で忙しかったのですが、クリスマス休みに入った初日の12月23日、 地図を片手にその Villers-Cotteretes という場所を目指して、朝から車を飛ばしてみました。

ちょうど冬至の頃なので、夜明けはとても遅く、現地に着いた9時20分頃でもまだ早朝の気配です。車が行き交う国道沿いには、 大きな林が広がっています。と言うよりは、広大な林の中を国道が突き抜けている、と言った方が正しいでしょう。樹種を 見てみると、確かにブナが主体のようです。早速車道の脇に駐車スペースを見つけて車を止め、探索を始めます。

ブナ林

曇天の下、暗いブナ林の中


今日もあいにくの空模様で、時おりパラつく雨自体はさほど気にならないのですが、厚い雲のせいで、林の中が暗いのが ちょっと困ります。それでも何とか目を凝らして、コルリが入っていそうな落ち枝を探して回ります。車道の脇の駐車場の そばのせいか、林の中は結構ゴミが多くて、大自然に抱かれた登山採集とはだいぶ感じが違います。

歩き回りながら、これはと思える落ち枝を拾って確認していきますが、コルリの産卵痕が付いた材は、なかなか見つかりません。 まあ、広い林の中でブナの材がたくさんあるのですから、コルリだって最適な材を選ぶのでしょう。他に誰も採集する人が いないからといって、タコ採れできるなんて甘いことは全くなさそうです。

それでも、30分以上かけて、産卵痕の付いた材をようやく3つほど見つけました。まあ、丹沢でコルリの材採集をしたときも こんな感じでしたし、採集下手な自分としては、もともとこんなものかもしれません。さて、それをゆっくりと削ってみます。

一本目は、産卵痕がベタベタと多く付いた、「いかにも」という材です。しかし、これは幼虫が2頭見られただけでした。

コルリ産卵マーク

コルリの産卵マーク


ところが、あまり期待していなかった2本目の材が、ビンゴ! 柔らかい材だったので、手で割ってみると、成虫が出てくれました。 成虫を狙うには、やはり手で割れるくらいの材が良いようです。蛹室の中で仰向けだったので、黒っぽい腹部が見え、 すぐに♂だと思いました。しかし、日本のコルリ♂と比べて横幅がずいぶんとあり、まるで♀のような体型です。心なしか 顎も短いような…。色は、若干緑っぽいようです。

蛹室のコルリ♂

手で割ってみると、コルリ成虫が的中


コルリ♂

少し緑がかった色合いか


(注)腹部が黒いので♂だと思って持って帰ったのですが、あいあん氏の指摘で、♀であることが分かりました。 ♀でも腹部がオレンジ色でないことがあるのですね。勉強になりました。ちなみに、この個体の体長は10.5mmほど。 先般採集した♀よりは大きいのですが、図鑑の数字と比べると、これでもヨーロッパコルリとしては小型のようです。

その後はなかなか追加がなくて苦労しました。産卵痕を見つけ出すのは、それほど簡単なことではありません。 けれども、当たり材に出会うと、一本の細くて短い材の中に、所狭しと7頭もの3令幼虫が見られたりもしました。

コルリ幼虫

コルリ3令幼虫だらけの材


昼までに家に戻る約束をしていたため、残念ながら成虫の追加がないままに、タイム・アップ。それでも、初めての 場所で、たった1頭とはいえいきなり成虫に出会えたのですから、大いによしとしましょう。

これでどうやら、パリの周辺でもブナ林さえ見つければ、コルリ採集が大いに可能であることが確認できました。 同じようなブナ林でも、おそらく場所や方角によってコルリの数の濃淡はあるのでしょうが、そこまで分かるには、 まだまだ採集経験が足りません。

もっと採集に行けるように、クリスマスにしっかりと家族孝行をしておかなければ。

Special thanks to: あいあん氏

※「新ヨーロッパコルリ採集記1」及び「2」につきましては、あいあん氏のウェブサイト 「くわハウス」の「投稿作品の部屋」をご参照願います。


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