☆☆☆☆ Jimmy氏、編集長特別記念企画 ☆☆☆☆

オオクワ探索記「九州、筑後川編」

ヒラタの鉄人


 はじめに・・・・
これはあくまでも、クワ友Jimmy氏編集委員記念スペシャル企画として特別に、投稿させて頂くものであり、この投稿による、一切の情報提供、御質問等には一切お答えできない(仲間の信頼喪失、及び自然破壊につながりかねない)事をご了承願いたい。


 1998年6月・・・・
我らが九州オオクワ探検隊にて、兼ねてから噂の高い筑後川流域の柳を攻めよう!という事になり、隊長、私、ドツキ棒氏、ハーレー氏の4人で、筑後川に攻め入った。
当日朝7時、隊長とドツキ棒氏が私を迎えに来た。そのまま隊長の車で、一路熊本へ・・・
熊本ICにてハーレー氏と合流。ウォーミングアップ採取という事で、私のポイントを探索。そこは、ミズナラのポイントであるが、程なく私が、ヒラタの♀をゲット。おおっ!ぴかぴかで、まるで新成虫のようだ!

 欲しくて仕方がなかったヒラタの♀が取れて、もう満足!というわけにはいかないが・・・
30分程、あたりを探索して、ノコギリ、コクワ等がいたものの、そのままにして、さあて、出陣!
高速に乗り、一路、久留米へ・・・・
車の中で、ハーレーさんに「何で鉄人さんは、私の地元の熊本のポイントを知ってるんだ!?」と突っ込まれ、たじたじ!まさか、営業中に見つけているとは言えず言ってるじゃねえか)、笑ってごまかしているうち、程なく久留米に到着!ちょうど昼になっていたので、じゃあせっかくだから久留米ラーメンでも・・・
とラーメン屋に入り、注文!すると、いきなりハーレー氏が、「ビール飲んでいいッスか?」と言いながら、缶ビールを飲み出した。つられて、ドツキ棒氏と私も飲み出す。運転手の隊長は、飲めずにプリプリ!
さあて、腹ごしらえも終わり、いざ出発!久留米市から若干小郡市寄りにある筑後川の支流(前回下見しておいた所)の柳林がかなり臭かったので、まずそこに向かった。
土手に車を止め、さーて、出陣!長靴に履き替えて・・・・
と、あれっ!もう隊長とハーレーさんが土手下に下りていた。

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土手下に下りて、柳に向かう隊長とハーレー氏


 慌てて、私とドツキ棒氏で後を追う!確か一個所、長靴でも危ないような深い湿地帯があったが・・・
と、恐る恐る草をかき分け、進むと、どぼっ!ぐわっ!長靴の中に水が・・・・
ひざの上くらいまでの水深ではひとたまりもなく、長靴の意味が無い!目的の柳に到着すると、ハーレーさんも完璧にはまったようだった。かくして長靴の中は、水浸し!そうこうしていると、先に到着していたハーレー氏と隊長が、「いたぞ!」「こっちも!」と叫んだので、慌てて向かうと、隊長が柳の木によじ登り、穴を覗いていた。
ハーレー氏は、懐中電灯で背丈くらいの位置にある穴を覗いている。隊長の「うーん!残念ながら、ヒラタだなあ・・・」(全然残念じゃ、ない!)と心でつぶやいていると、「うーん!出てこないなあ・・・・無理かも」と言ってきたので、「な、何とか採りましょうよ!せっかくだし・・・」と何とか取ってもらおうと頼む、私!!!

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木に登って穴をほじくる隊長、
両脇がハーレー氏とドツキ棒氏


 ハーレー氏の覗いている穴にも、確かにヒラタクワガタのお尻が見える。こりゃー、無理かな!と言いながら、恐る恐るピンセットを入れると、ああ残念!穴の奥に入ってしまった。
すると、ハーレー氏が柳の木をよじ登り出した。程なく、「いましたよー!ヒラタですねー!これは簡単に取り出せますよー!」といいながら、ピンセットで引っ張り出した。私が、大きさは?と聞くと「そんなに大きくないですねー。60mmくらいかな」だって!(全然大きいじゃねえかよー)彼から受け取ってみたが、おお、りっぱな♂60mmでした。

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木に登って、ヒラタ60mmをゲットし、
御満悦のハーレー氏


 ほどなく、隊長も苦戦していたが、穴の中からヒラタ♂をゲット!50mm程の大きさでした。しかし、足が一本もげていた。「ヒラタは、とりあえず私が」と、容器に入れようとしたら、隊長はいきなり草むらに向かって、ポイ!「足が取れているから逃がしてやろう!」げげっ!まあ、仕方がないか・・・・
とりあえず、その付近一帯の柳をチェック!他はあまり樹液も出ていなかったので、とりあえずここは退散!
筑後川の本流に沿って、川を下る!ここで、筑後川といっても、一級河川、しかも両岸にずらーっと柳が続いており、どこから手をつけていいのかわからない。土手の上から怪しそうな柳(でっかくて、大きく広がったような樹木)だけに絞り、幾度となく、土手に車を止め、徒歩で向かって調査したが、樹液はそこそこ出ているが、オオクワが隠れるようなウロがなく、期待が持てない!更に下って行き、水天宮付近を通過!前回下見しておいた河川敷に車を止め、いざチェック!

 程なく、木の割れ目からヒラタの♀、♂をゲット!河川に沿って歩くと、足元にカニがうようよ!穴ぼこだらけ!おまけに、いぼりそうに(ぬかるんではまりそうになる事)なるのを注意しながら、進む!
確かに樹液はでているし、 スズメバチもそこそこいるので、確かにクワガタはいるかも知れないが、オオクワとなると期待が持てないなあ・・・・

 ふて腐れた私は、流されてきたようなゴミの中から程度の良い朽ち木を探して、鉈を入れて行くと・・・・
おっ、食痕だ!慎重に削っていくと、おお、2令程の幼虫が・・・・
私の勘ではコクワと思うが、まあ場所が場所だけに、持ち帰ろうという事で、慎重に取り出して、ビンへ!
更に、進むと立ち枯れの柳が・・・・根っこが腐っている!早速、皆で鉈を入れていくと、クワガタの幼虫を2匹程ゲット!

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立ち枯れ柳の朽ち木を調査するハーレーさんと隊長・・・
佐賀県三根町付近にて


 「まあ、育ててみたら、結果が分かるよ!」という事で、幼虫をハーレーさんに何とか押し付けた。彼は「どうも、コクワだと思うんですけどねー」と言っていた。(実際私もそう思っていたし、後に羽化した成虫はやっぱりコクワだった)そうこうしているうちに、夕方5時に・・・・
再度ハーレーさんを熊本に送り届け、その場で解散となった!残念ながら、日本オオクワ3大産地である(と言われる?)筑後川流域ローラー作戦は不発に終わった。しかし、私にとっては収穫だった!何せ、ヒラタが採れるのだから・・・(^^);
あれだけの柳林・・・まともに調べていたら、きりが無い・・・
またピンポイントで調査していきたいと思っている。

おしまい・・・・

 となったら、何も特別企画でも何でも無い訳で・・・・
じゃあ、九州にオオクワはいないのか?というと、それは違う!ちゃんと九州にオオクワは生息しているのである。隊員の中にも、オオクワの採取経験者もいる訳だが、なにせ10年以上も前のこと・・・
今ではその時採った場所はもう無くなった!というのが現実のようである。ただいくらなんでも昔取れていた場所が全て消滅するというのは考え過ぎとは思うが・・・・

 クワ馬鹿の皆さんの中で、九州産オオクワを持っている人も少なからずいると思うが、そのほとんどが佐賀産ではないだろうか?私の認識では、佐賀、福岡、宮崎で取れた、または取った事があるという情報は数多くある。長崎でもあったと聞く。私は小学生の頃、一日違いでオオクワを友人に採られてしまった事があり、いまだ生まれてから一度もオオクワを自分の手で取った事がない訳でして、もう天然のオオクワには出会えないだろうと諦めていた。

 ニフティサーブや、インターネットで情報を募っても、「昔は採れたけど、今では」みたいな感じで、いつもスカされてばかりだった。ところが、今年の夏のある日、ある事がきっかけで、佐賀県に住むある親子と知り合う事になった。父親は50才くらいの人で、息子が高校生!その父親は、自称オオクワ採り名人!
った訳で、オオクワを取り続けて30年以上の超ベテランだったのです。

 その名人いわく、「オオクワは一個所の山でしか採れん!こっちでとれたからっちゅうて、あっちの山では採れん、ワシが採取する山は、通称オオクワの山と昔から言われておった。」だって!
確かに、こんな田舎でこんな所に住んでいたのであれば、オオクワくらい捕まえていてもおかしくないわけで・・・
更に、話を聞いていると、一番大きいオオクワは、中学校の時に採取した91mmだそうだ!(うそー!信じられん!外産オオクワやんけー、クワマニアが菌床飼育等を駆使して、70mmオーバーが夢だ!とか言っている昨今、とんでもない大きさだ!)その時は、穴の中に逃げられたので、ノコギリで木を切り倒して、採取したそうである。その後も、80mm台のオオクワも捕まえていたが、さすがに近年は、採取者も増えて、ほとんど取れなくなって来ているとの事だった。最後に採取したのは、昨年の夏で、♂と♀2匹だった。
早速、見せてもらい、「おお、これが始めて見る、天然佐賀産オオクワか」と感激しながら、デジカメに収めた!

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佐賀県産天然オオクワ♂68mm、天然♀2約38mm

 

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別角度からの同じ個体。手は隊員の手


 後程、その場所も案内してもらったが、聞きしにまさる素晴らしい所であった。ただ、残念なのが、ほとんどのウロに煙幕を炊いた痕があり、穴が真っ青になっていた。その他は、ウロを鉈ではがしたり、切り込みが入れられていたりひどすぎる・・・・

 その名人は、「こげな事するのは、業者じゃろう!あいつら外道や!」と悲しそうだった!
確かに、佐賀県産オオクワは、能勢産や韮崎産に比べて大きくなるという事で、かなり人気があるのは知っていたが、ここまでしてまで採ろうとは・・
ただ、韮崎や、能勢にしかないと思っていた台場クヌギが、ここ佐賀県にもあった事にエラく感動してしまった。そこいらの煙幕炊かれたクヌギでも、さすがにオオクワの産地だけあってか、樹液をドクドクと出し続けていたのが、妙にせつなかった・・・

 オオクワ名人が、このオオクワ持っていっていいよ!と言ってくれたが、「冗談じゃありません!」と断って来た。彼ら親子にすれば、いつでも採れるという自信があるのであろう。しかし、あの山の荒らされようでは
今後はなかなか採れないだろうな・・・
やっぱり天然のオオクワって益々少なくなっていくのかなあ・・・と悲しくもなってしまった。
幸いな事に、私の仲間にはそのような不心得者は一人もいないので、今後も慌てずに、来年、再来年と夢(天然オオクワゲット)を追いかけていこうと思う。

おしまい・・・・ 



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