伊豆諸島のクワガタムシ

阿達 直樹

教材としての走査型電子顕微鏡画像集ホームページへ


イズミヤマクワガタ

Lucanus maculifemoratus adachii TSUKAWAKI)

分布 大島、利島、新島、神津島、三宅島

本州のミヤマクワガタと比べて以下の点で変異が見られます。

1.大腮が体長の割に未発達で短い。

2.腹部が発達し末端に丸みを帯びる。

3.耳状突起が未発達で大型でも上方に向かってせり上がらない。また、左右に張り出さず前胸の幅とほぼ同じである。

4.耳状突起の末端に丸みがない。

5.大腮は基本的にはフジ型で先端は二又部はより狭い。エゾ型、基本型は現れない。

6.交尾器がほぼ同体長の基亜種にくらべ極端に大きい。

 その他、島ごとに多少の変異があり、大島のものは黒化し、利島のものは大腮の発達がもっとも悪く、神津島のものは細身で赤みを帯び、三宅島のものは本州のフジ型個体に近い特徴のものが見られ、赤みを帯びる。

オオバヤシャブシの樹液や燈火に集まる。雌は雄に比べて少ない。


大型個体の比較

 左は大島産、右は京都府産でほぼ体長は65mm。
大島の個体は黒みが強い。耳状突起の発達が悪く、前胸の幅とほぼ同じで横に張り出さない。また、写真ではわかりにくいが上方への反り返りも少なく平らである。
イズミヤマクワガタでは最大級の大きさ。
オオバヤシャブシの若木に静止中を採集。


交尾器の比較

 左は栃木県産、右は大島産で体長60mm。
後胸及び腹部の大きさはほぼ同じであるが交尾器の大きさは明らかに異なっていて大島産が大きくなっている。
オオバヤシャブシの樹液で採集。やや古い個体で先端が摩耗し、鞘羽の剛毛はなくなっている。


雌の違い

 左が大島産、右は鳥取県産。
大島産は腹部末端が丸みを帯びる。頭部の発達も悪い。
雌の個体数は非常に少なく、年に数頭見られる程度。
交尾中の個体はまれで習性がまだよくわからない。


ミクラミヤマクワガタのように発生の時期にずれはない。


中型個体の比較

 左が大島産、右が岐阜県産でエゾ型。
大島産は50mm前後。
腹部の大きさはほぼ同じであるが頭部の発達が悪い。
イズミヤマクワガタにはエゾ型は見られない。
燈火で採集。燈火の採集例も少なくない。


小型個体の比較

 左が鳥取県産、右が大島産。
小型個体でも明瞭な違いがあり、最初に得た40mm前後の個体で変異に気づいた。
第1内歯は小型個体でもはっきりしている。




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