オオクワ採集記

by TS



[採集歴とか] [26-June-98] [21-July-98] [20-August-98]
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TS@オオクワ採集ファンです。

はじめにお断りしておきます。採集地その他については一切を伏せさせていただきました。

最近の心無い一部の採集者による言語道断・禁手乱発なさまを身近でも目にするようになり

とても公開する気にはなれませんでした。材割りで発生源を叩くことや酢酸エチル

(揮発してしまうとはいえ、出て来れずに悶絶死してしまう固体があると聞いたことがあるので)

は採集に使用しません。これは私の好みであって決して押付ける気などないので了承下さい。

ただし、花火の使用やチェンソーを使用して生木の洞を断ち割るような採集は論外だと思っています。




採集歴とか方法など [Page Top] 私にとってオオクワの採集歴は小学校の頃からであったと思います。 今でこそ車で乗り付けられる軟弱なポイントになってしまった場所も当時は道路事情が悪く 雨が降ったらぬかるんでしまって自転車が前に進まない。そんな田舎道をひたすら探索した 記憶があります。今でこそ一般的になった夜間の樹液採集も当時は許してもらえるはずもなく 夏休み中の早朝採集では限られたポイントでしか採集できた経験がありません。 本当に良かったというかピークを経験できたのは高校時代で、あまり勉強したような記憶も ありませんから、夏場はオオクワとタマムシ採集ばかりやっていたのでしょう? また、当時は現在のように飼育方法も確立されていませんでしたので標本の作成がメインでした。 オオクワ、タマムシ・・・ どちらも簡単に採集できなかったのであれほど夢中になったのかも しれません。 当時も夏場の樹液採集がメインで今もやり方はあまり変わっていません。 アルミ梯子を3本持っていたり、8mのライト付きワイヤーキャッチャー(注1)を使ったり してますので装備はかなり充実したのかもしれませんね。 去年は2mの折りたためないハシゴを使うことが多かったのですが、今年は延ばすと 4mの折りたたみ脚立をけっこう使いました。逆に6mの長尺は車に積めなくなった ので使っていません。使いかたはポイントの状態に合わせています。 (注1: 8mのライト付きワイヤーキャッチャーは捕虫網として使います。電気工事会社が 工事に使用するものです。先端に絶縁ビニルテープで1枚100円程度のナイロンの玉網を 固定して使用します。玉網の直径が20cm程度ですので狭い場所にも使用できるのと クワガタをネットに引っ掛けるようにして使うのがコツです。今年になってからの使用ですが 確認用にしか使っていません) 夏場に採集して回るのはもちろん楽しいのですが、下見を含めると1年を通して活動しています。 私の場合、山師(林業従事者)が活躍する冬場の探索に占めるウエイトが高いとも言えます。 ご存知のようにオオクワは非常に樹洞性? が強く臆病でクヌギに樹液さえ出ていれば 採れるというものではありませんし、洞の状態も含めて木を選ぶ虫だと考えています。 冬場に来るべきシーズンの樹液の状態をも考えながら広い範囲から絞り込んでゆきます。 もちろん周囲の状態から発生源とおぼしき立ち枯れまで考慮しながら探索します。 材割り採集をされる人でも最初から1ケ所にとどまってコツコツやるよりも時には無駄を承知で 広範囲を探索してみると意外な発見があるかもしれません。冬場でさらに都合の良いことには 夏場あれほど行く手を阻んだ猛烈なブッシュや害虫、毒蛇も活動していません。 スケジュールその他の要因で夏場に下見をして消耗した経験を持つ人は多いと思いますが 冬場も採集シーズンのひとつに含められてみてはいかがでしょうか? また、普段は入らない雑木林の中にも思いがけない高所で良いポイントを発見したり、見落としがちな 民家近くにも良いポイントが隠されているものです。特に雑木林の中では風の通り道も 考慮すると良いかもしれません。クワガタ虫が飛来してくるためなのはもちろんのこと 樹液を出すための条件であるボクトウ蛾、コウモリ蛾、カミキリ虫がつく条件も限られます。 一定の条件を満たせば隠されたポイントは見つかるものです。 良く似た台木が2本あったとします。片方にはオオクワが入るのにもう片方ではコクワしか 見たことが無い。こんな経験をされた方はいませんか? 100%とは言いませんが確かに棲み別け はあるように思います。逆にコクワやヒラタに混じってオオクワも採集できる台木も存在します。 地域事情などにより若干事情が異なるとは思いますが、樹液採集により♀がなかなか姿を見せない 私の地元では半枯れの洞がある台木で樹液が出ていれば♀がついています。(半枯の洞にもぐり こんでいると考えられる)オオクワは♂♀ペアでいることが多いですから、そのような台木では コクワやヒラタを見かけることがあってもオオクワを採集することが可能で、ヒラタが好みそうな 裂け目にもオオクワは入ります。♀がつくかどうかを判断することによってコクワの木であるとか 樹皮めくれや裂け目しかないのでヒラタの木だとかを判断しています。 ただし、5月の連休明け〜6月頃にかけては洞もなにもないのっぺりしたクヌギやコナラ樹液に ついていることがあります。それはまだ条件にあった自分の住処を探しきれていない移動中の 虫ではないかとも考えられます。 独自の考えかもしれないが非常に暑がりではないか? とも考えています。 夏場の日中に樹液酔いした他のクワガタ虫のように平然と活動する個体を見たことが無いこと。 過去に条件の合う台場クヌギであって、僅かに採集者側にとって都合が良かったケースにおいて 採集した経験はあります。具体的には、根ともから大きく洞が口を開いていて、下から洞の内部を ライトで照らしたときにどこか木の外側から内部に流れ込んだ樹液にはりついていたケース。 別な例では台場のてっぺんに洞があり生い茂った枝葉により洞の存在さえも分からなかった場合 です。洞の中には流れ込んだ樹液と雨水が溜まり、わずかに手を伸ばせば届く位置で採集できた ケースです。このようなポイントはもちろん夜間の採集でも良い条件を満たしていると言えます。
小歯捕獲の日 6月26日(金)不明 [Page Top] 某掲示板にカキコしたのみで採集のことをすっかり忘れていました。 その日の天気については思い出せませんが、雨じゃなかったことだけは確かなようです。 夏場は夜間の樹液採集がメインになりますが、雨降りの日は限りなく期待値が低いので採集にはいきません。 天気が良ければほぼ毎日出かけますが、雨降り前の蒸し暑い夜は逆に期待値が高いような気もしています。 今年は特に天候不順であったため2日に1回程度の頻度でしたが、昨年はほぼ毎晩採集に出ていた ような気がします。この日は今年になって初めてのネイティブ♂小歯を捕獲しました。 定置網よろしく採集コースはほぼ決まりきっていて、10ケ所程のポイントを同じような時間帯 (6時〜10時の間)に見回ります。場所は○○○の台木です。 本命っぽい上の段では何も出ずに下の段の縦割れの樹液にて見つけましたが、 逃げもせずにじっとしてるので最初は気にもとめませんでた。 本来なら付かないだろうなと思われる場所なので少々驚いています。 3本ある台場の真中でこれといった洞もなく幅、深さともに10cm程度の縦割れが1m程度ある普通の クヌギの樹液に付いていました。少し擦れた感じがありますが越冬組かどうかは不明です。
I氏のポイント 7月21日(火)晴れ [Page Top] 夏休みで帰省してるI氏より連絡がありお互いのポイント交換ということで ○○町から△町にかけての極秘ポイントを案内してもらうになりました。 まずは私のテリトリーから・・・ 地元では□□町との町境方面までを案内し(最近の傾向として北部寄り) 一部ではハシゴも架けてみましたが何もでませんでした。 移動中の車ではかつてのポイントについて盛り上がってしまうほど最近の実績は芳しくありません。 次は彼のテリトリーへ 彼の自宅へ車を置いてから4駆の軽トラに乗り換えです。 体力勝負になるとは聞いていましたが、これほどの場所とは思いもよりませんでした。 ○○林の林道をもうこれ以上は入れないとこまで車を乗り入れ、あとは延々と歩きになりました。 長靴に履き替えてからナラが主体の雑木林に突入です。 延々30分程度歩いたところが第一のポイントだということなのであたりを確認しますが ナラの大木はあってもそれらしい感じが全然しません。 あたり一帯に樹液が充満していますがまるでノコ & ミヤマのポイントといった趣きです。 私「ほら見てみ? やっぱりノコやん?」(ノコ発見の第一声) I「違いますよ! あそこの立ち枯れ削り込んであるでしょう?」 私「ゲ? ホンマや」(見事に削られた○○○のカワラあり) I「削らないんですか? 今でも出ますよ?」 私「材割りやんないんでね。 でも里子のワイルド♂ここで削り出したん?」 I「もすこし進んだ場所の立ち枯れからです」 念入りの削り跡を照らしてみましたが確かにコンディションは良さそうですし 大きな食跡も確認できました。先日のK西方面ではかつての有名どころにて ほとんどの立ち枯れにナタが入っていましたが、まったく無意味に削られた場所もあり 採集者のレベルに幅があるようにも感じました。I氏の場合はツボを心得ているようです。 しかし感心というか、こんな場所まで一人で削りに来たのかと思うと内心あきれてしまいました。 私「樹液採集とかはでけへんの?」 I「コナラの樹洞でかなり良いコンディションのとこがありますが、高所ですよ?」 私「ハシゴは車に置いてきたし、クヌギはどこ?」 I「これから案内します。」 踏み跡を南斜面の崖沿いにトレースします。このあたりはイノシシが多いそうなので 一突きされたらひとたまりもありません。二人で来ているのでいいようなものの 内心はビクビクものでした。 目当ての台場のコンディションは今年も変わらないだろうと聞いていましたが かなりな昔より土地境界線上に植えてあるという穴だらけの台場らしいです。 何本かあったうち残るはそれ1本のみらしいのであまり期待もしていなかったのですが・・・ 細目のクヌギが多くなってきたなと感じた場所にその木はありました。 確かにそのたたずまいといい樹液といい最高のコンディションなのですが周囲にはこれ1本のみです。 打ち合わせどおりライトを照らしましたが無数に流れる樹液には出ていません 勝手も分からず台場を眺めていると「いましたよ、♂ 60くらい?」の声がしました。 知らないまに2mの足場まで登ったI氏は入念にチェックした縦われの洞から捕獲したらしいです。 ♀もいるかもしれないので選手交代して他の洞を入念にチェックするがいませんでした。 幹はひとかかえ以上あり、洞も5ケ所くらいにあるのですが台場の中身は完全に空洞であるように 思われました。もぐられてしまったらそれっきりなので採集できたのは運も良かったのかもしれません。 まわりにそれらしいポイントも他にないとのことなので採集は終わりです。 来た道をひっくり返すのかと思っただけで嫌になっていたのですが違うルートでした。 15分ほど南東に向けて下ると植林帯にでましたがその中をどんどん下っていきます。 かなり下ったところから細い踏み跡を延々と40分の登りです。時計を確認したら深夜0時 を過ぎていました。登りきった場所で最後のブッシュを越えると見覚えのある林道に出ました。 ここからは車の場所まで遠くないのでやれやれです。 今、思い出しながら書いていますがポイントの位置が良く分かりません。 あとで聞いたのですがI氏も夜間の採集は初めてだったようです。この場所は山師でもあった 彼のおじいさんから教えてもらったそうです。植林のために何本かあった台木も今では 1本きりですからポイントは非常に局所的です。
無題 8月20日(木)晴れ [Page Top] その日は午後9時頃、ふだんより遅目の出発になりました。 いつものポイントから始めたんですがいきなりの大失敗です。 休耕田のぬかるみに足をとられて長靴の中まで浸水してしまいました。 見回りをやめてしまう程のトラブルでもないので採集は続行しましたが・・・ 当日の服装はTシャツに短パンに長靴。数日前に捕虫網の柄でさんざんウルシをはたいたので 軍手はしてましたが決して人には薦められない採集スタイルです。 採集OFFでもないかぎり夜中の単独行がメインですがこれもお勧めできませんね。 夏場は特にマムシ、毒蛾、ムカデ、スズメバチ・・・ また、ウルシなどの植物にやられる こともあるので完全防備していくのがお勧めです。 最後に○○○のクヌギ(台場ではないがかつての定番ポイント、花火の跡が痛々しい)を見ようと 車をスローで走らせているとライトの明かりが暗闇にゆれています。 さっそく状況を尋ねるべく近寄ってあいさつです。 あとで名刺交換(夜中に山中で名刺を交換するのもなんか変ですが?)して分かったんですが 初対面ながら地元でも名の売れたトリコの方でした。九州のプロも同行されていたのには驚きましたが。 私「今年はどうですか?」 M氏「○△×では70mm出ましたよ」 私「○△×???」 M氏「一番手前の木で、行きがけは何も出てなかったんですが帰りに見ると出てました。 カブトかなとも思ったんですがオオクワでした。違う日ですが奥から5本目でも落としましたよ? 多分60クラスですが・・・」 M氏「○○君、彼も68mm出してますよ。あそこで・・・」 ○○君を含めると私の小歯も下の段で出ているので合計♂3頭出てる計算。 今では消滅してしまった往年のポイントも含めて某プロと私のポイントがすべてオーバーラップ。 私「○札はどうです?」 M氏「地主の方も了解ずみですが、かつての名ポイントですね。今年は樹液の出が悪いですね」 私「九州含めて他はどうですか?」 M氏「▲▲で材ですが、3桁は出てます。ただし、どのあたりの樹液場に出てるか不明です」 私「3桁ですか?」 九州プロ「うちでも3桁当たり前でしたよ」 私「・・・」 彼らと別れてから最後のポイント○△×へ。 狙い目としては正解だった訳ですが捕れるか捕れないかは時の運! を強く感じました。 M氏は発見当日、洞に潜られてしまったので翌日に再びチャレンジして採集できたとのことでした。 問題の台木をじっくり眺めてみました。高さが約2.5m太さ30cm程度で大きな木では ありません。天辺あたりに乾いた洞がありそのまわりに何箇所か樹液は出ています。 50cmの高さにゴルフボール大の洞がありますが内部で上部の洞とつながっています。 木の内部は空洞であるようです。
最後に 5月の連休明けから始まった樹液採集も10月の上旬で一応の区切りになります。 棲息条件は満たしているものの未確認なポイントやK西にもまた行きたいと思ってますので 今年の冬も走り回ることになりそうです。

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