マット裏情報

桑山虫太郎



 このところ、すっかり秋めいて来た感じがする。つい10日ほど前までは、連日の熱帯夜で夜も寝苦しかったのがウソのようだ! 私は寒いのも苦手だが暑いのにも弱いので、ここはオホーツク海高気圧に心より感謝申し上げたい。

 クワ馬鹿にとっては、樹液採集シーズンも一段落といったところだが、累代飼育している者にとっては、これからが忙しい。マットや菌糸ビン、飼育材の確保は大丈夫だろうか? この辺りで自分が『アリ』か、はたまた『キリギリス』であったか、否応なしに再認識させられるのだが、もちろん私は来年のゼリーまで用意した。しかし口の悪い人に言わせれば、『ただ単にゼリーを買うのが好きなだけ』だそうだ。失礼千万な話だが、ゼリー業界に貢献したのは紛れもない事実だと思う。
今年は、3000個以上のゼリーをひたすら剥き続けたため、すっかり手には剥きダコが出来てしまったが、今となってはそれが日課となってしまったので、シーズン終了とともに、手持ちぶさたになるのが寂しい。仕方がないので、2才になる息子のおやつ用ゼリーを剥いて、寂しさを紛らわせよう。

 さて、今月は何と行っても、クワガタ飼育のし過ぎでダウンしたJ氏の話題を取り上げずにはいられない。何しろ、関係諸氏に多大な迷惑をかけたと聞いているので、ここではその顛末を取り上げ、皆さんの前で懺悔してもらおうと思う。

 聞くところによると、J氏は今年の1月現在、幼虫を500頭以上飼育していたようで、その大半が5月から6月にかけて続々と蛹化、羽化し始めたらしく、既にペアリングしていた50ペア以上のクワガタに続き、これらの新成虫の世話が加わったため、土日の大半が餌交換に費やされていたようである。
そのような状況であるにも関わらず、採集の神G氏や、オリックスファンのSB氏、カラオケの帝王ks氏に採集に誘われるばかりか、自分でも採集に出かける始末で、とうとう耐えきれずにダウンしたらしい。
いわば、倒れるべくして倒れたとも言えるだろう。自業自得とはこのことだ!!

 何やらJ氏に近い筋からの話によれば、金曜日の夜に帰宅後、寒気がしたので熱を計って見ると、すでに39度近くあったとのことだ。すぐに解熱剤を飲んで寝たらしいが、朝になっても熱が下がらないので、かかりつけの医者に診て貰ったところ、扁桃腺から来る熱と診断され、痛い注射を打ってもらって一件落着とゆく予定であった。
ところが、自宅で安静にしていたにも関わらず、いっこうに熱が下がらないので、心配になったJ氏は月曜日にもう一度診てもらいにいったところ、病状が悪化しており、扁桃腺炎の中でも最もひどい症状との診断を受け、入院を勧められたそうだ。
しかしながら、クワガタのことが気になったJ氏は医者の忠告を断り、自宅療養で治すことに決めたそうだが、日々症状は悪化するばかりで熱も40度を超えるほどになった上、喉が痛くて何も食べられず脱水症状の兆候が現れてきたため、とうとう木曜日の午後に救急病院に運び込まれたとのことだ。

 病院で点滴に次ぐ点滴を受け、見る見るうちに回復してきたJ氏は、またまたクワガタのことが気になり始め、早く退院したくて仕方がないあまり、まだ微熱と下痢の症状があるにもかかわらず体温計測をごまかし、無理に元気な振りをして、医者から退院の許可を取り付けたそうだ。
しかし、本当は胃カメラの検査が怖くて逃げ出したかったのが本音のようである。
何とも、肝っ玉の小さいJ氏ならではの話ではなかろうか! 私はこの話を聞いて、思わず落涙しそうになってしまった。
臆病なJ氏は、いつかきっと病因の発見が手遅れで命を落とすだろうが、それも致し方ないだろう。
Let it be、Blow in the windである!

 ちなみに、退院したJ氏は、自宅に戻らすにその足で実家に赴き、さっそくクワガタの餌交換をし始めたらしいが、さすがに病み上がり身体にはこたえたのか、30分もしたら腰が痛くなって横になったそうだ。それでも嫁さんにゼリーを剥いてもらいながら、餌交換を続けたらしい。
まったく、この人に付ける薬は中国4000年の歴史を遡ってもないだろう。彼には長銀問題もテポドンの脅威もどこ吹く風といった感じがする。ご家族のことを思うと、お気の毒と言うかご愁傷さまであるが、所詮人ごとだ。知ったことではない(知りたくない)!!

 ところで、このようにJ氏が病に倒れた原因のひとつには、福岡在住のHの鉄人氏が絡んでいると言う噂だ! 何でも、Hの鉄人氏は九州を代表する採集の達人で、特にヒラタにかけては、一夏に100頭以上を軽く採集してしまうらしい。しかも、その採集スタイルが尋常ではなく、ビジネススーツ姿のまま採集にでかけるとのことだ。
本人の話では、顧客訪問を早く切り上げ4時頃から出動するそうだが、明らかにフライングである。
強いて言うならば、早退採集とでも表現できよう。
とにかく、服を着替える時間も惜しいぐらいの勢いで採集に向かう姿は迫力満点。地元の農家の人に、『兄ちゃん、どんぐり取りだんべ?』と尋ねられたこともあったそうだが、蜘蛛の巣まみれのスーツ姿はどう考えても変だし、たとえどんぐり取りとしても、そうとう怪しい。関西方面では、間違いなく通報されているだろう。
本人の弁によると、スーツのクリーニング代も馬鹿にならないらしいが、今後ともアバンギャルドな採集スタイルを継続し、ヒラタならぬスーツ採集の鉄人として、九州のクワ馬鹿連中を引っ張って言って欲しいものだ。なにしろ、鉄人氏は九州オオクワ探検隊のリーダーでもある。
ところで、この九州オオクワ探検隊は、福岡在住のクワ馬鹿連中と熊本在住の某Hレー氏が集まって結成された精鋭部隊だが、得意技のひとつはバーベキュー採集だそうで、必ず採集の前にはバーベキューで気勢を上げるらしい。
まさか、バーベキューの煙でクワガタを燻り出すとは考えられないが、ところかまわず宴会を始めてしまうあまり、警官に強制的に中止させられたこともあるそうだ。しかし、そのようなことに屈せず、採集前の儀式として後世に伝えていってほしい。

 だいぶ話がそれてしまったが、なぜ鉄人氏がJ氏の病気に関わりがあるかと言うと、J氏は鉄人氏に容赦ないヒラタ送りつけ攻撃を受けたらしく、毎週のようにワイルドヒラタが届くため、受け入れに忙殺されていたということだ。
それでなくとも、膨大なクワガタの世話でパニック状態だから、新たに里子を受け入れることなど不可能なはずなのに、ヒラタと聞いただけで冷静な判断力を失ったJ氏は、喜々として送られて来るヒラタの世話をしていたらしい。身の程知らずにも程があると言うものだ。

 しかしながら、さすがに今度ばかりはJ氏も懲りたようなので、退院後はすっかりおとなしくなったと聞いている。噂によると、鉄人氏のヒラタの一部は、堺のF本氏に委託飼育してもらっているらしい。
F本氏は、先月3人目赤ちゃんが産まれたばかりで、育児手伝いに忙しいらしいが、やはり近畿支部の精鋭クワ馬鹿であることに変わりなく、身重の奥さんを残して採集に行ったりしている。これでは、採集の神であるG氏と何ら変わりないようだが、当のG氏はその後も近畿支部のたまり場と化したクワガタショップBに頻繁に顔を出し、お手伝いと称して社長のN氏の邪魔をしたり、学生アルバイトのKJ君に先輩風を吹かしていると聞く。今はそれよりも、ベビーのおしめを率先して取り替えてほしいことを、この場を借りてお伝えしておく次第である。京都在住のT谷氏や、大阪のM本氏を見習ってほしい。ただし、神戸在住のKズ氏は同じようなことを考えているようなので、見習わなくても結構!

 さて、J氏はその後リストラが順調に進んだようだが、それを素早く察知した関東支部のT氏から、無差別里子攻撃を受けるようになった。
実を言うとT氏も成虫に加え、既に相当数の幼虫を飼っているようで、しかもそれらのほとんどが菌糸ビンの名作「H山ビン」で飼育されている。信頼できる筋からの情報では、すでに60本を超えているらしい。しかも、T氏は東京転勤後、公私ともにつき合いが増えたため、一杯引っかけて帰ることが多くなり、金欠病に陥っていると聞く。
飲み屋では、「水割り二杯=H山ビン一本」と思ってセーブしているようだが、なかなか誘惑に打ち勝つことが難しいらしい。このような事情から、T氏もリストラ必至との決断を下し、巡航ならぬ里子ミサイルの着弾点を、射程圏内にあるJ氏宅に定めたようだ。
こう考えてみると、J氏はHの鉄人氏とT氏からツープラトン攻撃を受けているわけで、逃げ場がないように見えるが、J氏はこの里子攻撃を凌ぎ、20デシベルほど増幅させた後、来年あたり強制送還しようと企んでいるらしい。これまでの経緯をみる限り、相手の都合に関わらず実行されるのは必至であろう。まるで、インドとパキスタンの核兵器開発競争のようだ。きっと隣国にも飛び火するだろうし、彼らとつき合いのあるクワ馬鹿仲間は来年以降、標的にされる恐れがある。予報円は日本全国に及ぶと思われるので、特に居所を知られている人は覚悟しておいた方がよいだろう。

 話は変わるが、近畿支部の総帥、カラオケの帝王ks氏は、病み上がりでリハビリ中のJ氏を強引に誘い出し、東京から出張してきたKカブト氏迎撃オフミを敢行した。
Kカブト氏は、春に引き続き2度目の来襲となるが、幾分太ったようである。(大丈夫かな!)
当日は、オリックスの試合観戦のためならば、約束もすっぽかすと言うSB氏と、今やH山氏の追っかけと化しつつある京都在住のO石氏も加わって、マット飼育や菌糸飼育の良否について、白熱した議論が展開されるはずもなく、最初に入った店では看板まで粘ったあげくに追い出される始末で、その後はいつもの如く、ks氏お奨めの店でカラオケ三昧となったらしい。それにしても、ks氏はあまり飲み屋には詳しくないが、カラオケのできる店には異常に詳しいことが証明された。何と、路上駐車が出来るか否かまで知り尽くしているとのこと。
これには、参加者一同唖然としたらしいが、もっと驚いたのは、SB氏が素晴らしい喉を披露したことだそうだ! 何でも、学生時代はコーラス部に在籍していたと言うことだが、その風貌からは似つかわしくない澄んだ美声を披露し、皆を圧倒したという。
まさに、人は見かけに寄らないと言う典型的なものだろう(失礼!)

 念のため、極秘に入手したメモから、当日歌われた曲目をご紹介しよう。

J氏   
 伽草子、いつか街であったなら などを切々と唄っていたらしい。人柄は唄にもでる。

Kカブト氏
 モーニングムーン、ゲッターロボ、みちのく一人旅(これ最高に上手かった、こぶしがきいてた。カブト飼育より上手いのではないかとの噂だ)アニメ主題歌も山ほどSB氏と歌い続けていたそうだ。O石氏とks氏が呆れ果てていたのはいうまでもない。

O石氏 
 もうひとつの土曜日、嵐の金曜日、その他ビートルズいっぱい。

SB氏  
 Everything it's you、beautiful peaple、La La La Love Songなど今の唄が多い。チキショー! で、ハンドルネームが「唄う菌糸瓶屋」に変更されるとの噂もある。

ks氏  
 海(サザン)、I Love You(尾崎)、あとイ駒山氏の命令でオフコースものなど。

(注1)Kカブト氏&ks氏は、亜麻色の髪の乙女でハモッタりもしたそうだ!
(注2)SB氏は伽草子を案山子と間違えたそうで、J氏は隅っこで泣いていた。

 午後10時半から始まったカラオケ大会は盛り上がり、J氏は最終電車に間に合わなくなるので先に帰ったそうだが、残りのメンバーは何と4時間も唄い続けたため、当然の如く終電に乗り遅れ、ks氏はSB氏の装甲車に便乗し、かろうじて帰宅したが、Kカブト、O石両氏は始発電車が来るまで大阪駅の待合室ベンチでクワガタ談義をしていたらしい。わざわざ断る必要もないと思うが、決してまねをしないでほしいし、この話は誰にも口外しないように願いたい。あなたの品格を疑われないためにも、忠告しておく!
そんなこんなで、今回は関西、九州地区が中心の話題に終始した感があるが、来月は関東、東日本地区の話題もご紹介出来ると思う。まだまだ、お聞かせしたい情報もあるのだが、来月のネタがなくなるのでこの辺で失礼させていただく。
では、みなさん、くれぐれも飼育材料の確保だけは念入りにしておくように!!

補遺: ks氏がパソコンを買い換えようとしていることが発覚した! ウウウ...(泣)


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