恐縮・・・共縮 co-contractionの概念化

2008/06/04 23:23:16


100mの世界記録保持者パウエルが世界陸上大阪大会でライバルのタイソン・ゲイに敗れた。NHKスペシャルがその原因と経過を映像と筋電図を使い解説して

いた。快調に走っている間は脊髄反射だけで大腿四頭筋とハムストリングが収縮と伸張をリズミカルに繰り返していたが、後半横を走るタイソン・ゲイのアシが

見えたとたんにリズムに乱れが生じ失速した。負けるかもしれないという思考が働いた瞬間、かれの脳が別の指令を発したのだ。それがアドレナリンなのか

「頑張れ」なのか脳科学にうといわたしには分からない。現象的には、力みであり乱調である。VIDEOはかれの手がパーからグーに変わって縮んでいるのを

鮮明に映し出していた。運動科学ではこれを共縮というそうだ。聞きなれない言葉だがNHKの超高速度カメラのおかげで、その意味をしっかりとイメージできる

ようになった。

それではサッカーの指導では共縮の極意をどう概念化して選手につたえるか。

われわれは、試合で先制されたとき、とか、PKに勝負がかかったとき、しばしばこの現象に見舞われる。始末がわるいのは、選手個人のパフォーマンスが、

キック、ダッシュ、競り合い、声だし等全身的に現れ、しかも全員に伝染することである。そのつど原因は精神力、ハートの弱さに帰せられる。たしかにそうだが

「心」にとどまっていては進歩がない。「思考」に踏み込もう。

ふだん考えながらプレイするように仕付けているのに、いまさら考えるな、とはいえない。あることを考えるのをやめよう、と指導したい。あることとは「負ける

かもしれない」「しくじるかもしれない」という、余計な考えである。

共縮を起こす引き金は恐れである。それならばそれにふさわしい日本語「恐縮」を借用しよう。恐れて縮む、これである。

かつて韓国の学者が日本人は縮み思考だと書いた。ブラジル育ちのわたしもそう思う。国民性を変えるのと同様、個人の心性を変えるのはむずかしい。

マインド・コントロールならできる。よい方向にコントロールしよう。

この一文はU-12の全国大会府予選を勝ち抜くための自らの心得として予選の渦中で書いた。金君が「頭二つ抜けている」と評してくれるほど今年の6年は

強力であった。わたしも高槻FC史上最強の戦力だと自負している。そのチームがLast8を前にして40分間自分のサッカーができないまま敗退した。

1ヶ月間敗因を考え続けてようやく結論を出すことができた。はからずもこのエッセイがヒントを提供してくれた。敗因は恐縮ではなかったが源は同根であった。

彼らが強いときはおもに脊髄反射でプレイしていた。今回は不要な大脳思考が脊髄反射を抑えた。大脳は脊髄よりも足から遠い。要らぬ戦術的判断が

かれらの出足を鈍らせた。やはり敗戦の責任は監督にあったのだ。


参考文献・・・共縮現象を予防する方法

その1) アレクサンダー・テクニーク  Wikipedia

その2) 初動負荷理論  Wikipedia 


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