14歳 :clumsyage

ぎこちなく、厄介な思春期

January 31, 2002

3月6日 更新


バイオ年齢では前後各2年の幅があることを承知の上で話をすすめる。

サッカーの動作習得に、脳・神経系と筋・骨格系の発達がもっともよく協調する一生に一度の機会である

ゴールデンエイジのつぎにはクラムジエイジがやってくる。身長が急伸し筋骨はアンバランスになる。

身長の伸びが落ち着き体のバランスが回復する頃には脳・神経系の可塑性、柔軟性は横ばいになっている。

即座の習得力は2度と戻らないばかりか、クラムジ期間にはつぎのようなメンタル、技術、戦術にわたる後退

すらみられる。

クラムジの語呂合わせのキーワードで傾向と対策について考える。

暗む時 ・・・14歳は心のアンバランスがいちじるしい時期である。

14歳の心の闇は深く理解しがたい。普通の子が突然豹変する。まれに凶悪な犯罪者となって世
間を騒がす。酒鬼薔薇聖斗の記憶は強烈で消しがたい。傍若無人で極端な優越感が注意された
だけで屈辱感に変わり弱者を集団で暴行し死に致らしめたホームレス殺人事件は記憶に新しい。
14歳はもはやこどもではない。さりとて大人でもない。両方のわがままは享受したいが、子供の
義務からは逃げたいし大人の責任は背負いたくない。自己を万能視しているから権威、科学に従
わない。私はそのころ自分だけは例外で死なないと思っていた。
ここから自己中心的な行動、プレイが目立つようになる。チーム戦術も個人戦術も低下し、それま
でできていたことができなくなる。技術の低下はみられないが伸びは停止する。総合すれば一見
下手になったように見える。

眩む時・・・14歳は誘惑に目がくらむ時期である。家でも学校でもクラブでも居場所が危うくなると欲望

    に負けてサッカー一筋から横道にそれる。勉強をしなくなるだけでなく授業を妨げる。

苦労を避け遊びにふける。けんか、弱いものいじめ、暴力、喫煙、深夜徘徊、かつあげ、万引き、
バイク泥、ひったくり、強盗・・・と、非行はエスカレートしていく。
サッカーでは、ファッションに凝ったり、うそをついて遅刻したりサボったりするようになるから早い
段階で非行に気づくことが多い。
非行に対しては当然指導がおこなわれるが、サッカー命の価値観がぐらついているのだから一筋
縄ではいかない。規律違反についても柔軟に対処し即退部にはしないで、学校、保護者と連携し
て善導すべきだろう。
なお、14歳にもなると素直だった子が親のいうことはまったく聞かなくなることもあるので、親は
「その時」を念頭に覚悟して、ふだんから正しいしつけと精神的自立のサポートにつとめるべき
だろう。小さい時に「うそは泥棒の始まり」と教えてやってほしい。またこどもの苦労を肩代わり
しないで「苦は楽の種、楽は苦の種」という格言を実体験させてほしい。
学校教師の苦労は察するにあまりある。本来保護者と地域社会が負うべき子育てと監督責任を
一身に背負わされるのだからたまったものではない。14歳が一番言うことを聞かないのは親と
教師であり、一番聞くのは仲間とTVのふざけショーである。
地域社会が崩壊している現状では、警察の少年課がデスクをはなれて校区に入り、ムラ社会の
代わりを引き受けるほかないだろう。
地域クラブも、21世紀型のムラ社会を担う存在に生まれ変わらねばならない。 これは私が
現中2の旧父母会と選手達に教えられて実行していることである。「選手達」はクラブに残った選
手と部活に移った選手のほかに紫斑病で1年間以上入院に耐えた後リハビリを続けているY君
を指す。
旧父母会と選手達は、母子家庭のY家を支えて来た。選手達はたびたび見舞いに行って絶望し
そうなY君を励ました。おやたちは月一回飲み会をもって母親の苦悩を和らげている。腰の重い
私をある母親がポンとうしろから押してくれた。
「センセイは卒業した子にとって一生センセイです。」
この日から高槻FCは新しいムラに生まれ変わろうとしている。クラブの現代的存在意義の再発見
というところか。

苦楽夢時 ・・・クラブでの精神論的対策

苦は楽の種、楽は苦の種、なる格言を実体験させる。サッカーを楽しませる風潮が強いがそれは
ゴールデンエイジまでのことだろう。14歳では苦を楽しみ勝利して歓喜に至るように指導者は仕
向けないといけない。ただ楽しいだけでも、ただ苦しいだけでもいけない。苦楽が表裏関係あるこ
とを実感させねばならないし、選手達はそれを心のどこかで期待しているから指導を受け入れる
ことができる。
それには夢をもたせねばならない。夢のない苦労は苦役でしかない。でっかい夢もささいな目標
も両方とももてるように指導者は情報をあたえ刺激をあたえたい。

競む時・・・これもクラムジと読める。押し競まんじゅう、とはどんな饅頭?

14歳の万能感、優越感に添う形で互いに競争させるのがよい。かれらは99.99%?サルと同じ
DNAをもっている。しょっちゅう仲間内で序列をつけたがる。
練習では毎回競争させたらよい。メニュー毎にそうしたら良いが、1対1の対決がいちばんよい。
さらに良いのは若いコーチが挑発して向かってきた相手を毎回負かすことだ。高槻FCの若いコー
チは毎週挑戦を受けてこてんぱんにやっつけ、目に見える成果を上げている。やっつけられる
ことによって14歳は精神的にこどもから大人に脱皮する。
もう一つ有効で必要なのは、ディベイト<論争>の習慣だ。欧米ではディベイトの授業がある。
コーチ対選手、親対子、子対子でもおおいに論戦をたのしみ、自己主張の表現術を身につける
ことが、子供が大人になるためにも国際競技力をつけるためにも必要だ。

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