少年の指導に弱肉強食professionalismは必要ない

December 31, 2001

高槻FCはセレクションによって新中学1年生を採っている。生え抜きでも数名しか通らない狭き門である。

4年間で3人のJリーガーを出した実績は、育成ではJのチームにも劣らないと自負している。

選別をしておいて弱肉強食を論じる矛盾を承知の上で、選別した後の中学生の指導について基本理念を

述べたい。

2年前までは高槻FCは実力主義をとり実力のあるものを先発させ交代も少なかった。有力な下級生を上

で使った。ベストメンバーを組み、それでクラブをやめる選手が出るのは仕方ないと考えていた。

専任コーチも私もブラジルの日系二世、ブラジルでは毎週毎月選別がおこなわれ半年もたてば選手は

おろかスタッフまで全員入れ替わることもめずらしくない。代わりはいくらでもいるというわけだ。

また少年ながら選手もしたたかで少々の事ではめげない。かのルイ・ハモスなんか正確な数字は忘れたが

20回近くプロテストを受け続けている。

ここは日本である。少年達は一人かけ2人欠けして3年生になる頃にはエリートだけが残った。タレントだけ

で組織がもつわけない。大きな歯車やモーターのほかに小さな歯車やモーターがないと装置は働かない、

とネルソン吉村は述べている。チーム内はギスギスして団結できなくなり結果も出なくなった。

現2年から定員を25名に絞り力が均等な2チームをつくり試合ではハーフタイムに全員入れ替えるように

した。現1年をふくめて両学年ともただの1名もやめていないことを指導者として誇りに思う。選んだ原石を

大事に磨いてまったく落ちこぼれを出さなかった点では第1幕は成功だった。

過ぎたるは及ばざるがごとし。2年生に夏頃から初心を忘れて現状に安住する気持ちと現状に対する不満

からモチヴェーションの低下と自己中心的なプレイが目立ってきて、思った通りの結果も出せなくなってきた

ので、12月から競争の要素もとりいれることにした。甘辛にちょっぴり酢と胆汁を添加する。

12月いっぱい選手の適性を再チェックして1月から適度の競争を求める。ベストメンバー主義とレギュラー

制はこれまでどおり厳に慎むが、2チーム固定メンバー制をやめて先発メンバー制を導入する。

1週間の試合と練習を総括して先発メンバーとサブメンバーを発表する。毎回発表なのでだれも安閑として

おれない。第2幕の成否はJヴィレッジ予選の結果にあらわれるだろう。

小中学生は小さな大人ではない。親や指導者が過度のプレッシャーをかけて速成の戦士をつくってはなら

ない。自然にゆっくりと育てたい。友達という最高の宝を掘り出してほしい。一心不乱のひたむきさ、他者の

せいにしない責任感、自分で考え実行し反省する自立心、他者への思いやりと感謝等の人間性を育んで

ほしい。知的好奇心を豊かにし勉学とも両立させて立派な社会人に育ってほしい。自然放牧、庭飼いの牛

や鶏には文明病は出ない。

油断もスキもならない弱肉強食のジャングルの環境で鍛えようとしてはならない。逃げ出した選手の中に

は一生トラウマで苦悩するものもいるだろうしサッカーを見捨てるものも出るだろう。

卒業するひとり一人が、サッカーに関するかぎり小学生時代は幸せだった、中学生時代は幸せだった、と

振り返ることのできるサッカー環境を、指導者と保護者は用意すべきだ。逆の場合は指導または保護の

失敗として深刻に受け止める姿勢を忘れないようにしたい。


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