No Fitness
負けるが勝ち
October 1, 2001
この夏、盆過ぎの二大少年サッカー大会で高槻FCは失点をすべて後半にこうむった。2週間に及ぶ盆休みが
いかにフィットネスに影響するか、思わぬ成果が得られた。
そこで、ドリルと体力について論じよう。ドリルには自発的ドリルと誰かの管理下にあるドリルとがある。
指導者あるいは親の管理下にある体力ドリルは成長期には下半身のさまざまな障害をひきおこすのでやっては
いけない。ふつうドリルといえば管理下にあって勝手にやめられないドリルを指す。
自発的ドリルはボール・ジャグリング等の技術向上には不可欠であり弊害が生じるとは考えにくい。しかし体力
向上ドリルではそうはいえない。
まったく自発的だったにもかかわらずジャンプのドリルで膝に数ヶ月サッカーを休まねばならないほどの障害が
生じた例が一つある。中学生のGKが家で自己練習をしすぎたために起った障害である。かれはうさぎ跳びの
危険は承知していたがジャンプ系のドリルについては無知であった。
ここでクラブの管理下にない、自発的活動がひきおこすオーヴァーユース障害に注意を喚起したい。
高槻FCはこの春23名の中学1年生の入部を得た。高槻FC出身者2名を含めてすべてセレクションで入った
選手である。彼らの中に使い過ぎ障害の重症者が5名いた。オスグット・シュラッテル2名。離断性骨軟骨炎
1名。ラルセン・ヨハンソン1名。イゼリン1名。オスグット以外ははじめて聞く病名で、内1名は入院、手術を余
儀なくされ9月半ば現在まだ復帰していない。残り4名も完全復帰ではない。
なぜオーヴァーユースになったか? かれらがサッカーに熱心で上昇志向が強く自発的活動を広げたからであ
る。小学生時代の所属クラブと個々のクラブ外活動先では体力の限度管理がなされていても、合計の限界管
理はやるべくもない。管理の責任主体が無いのである。各人がこのようなHPで研究して自己防衛、事故予防
するしかない。
JFAにも問題点を検討して対策を講じてもらいたい。協会がドラフトする行事で起るオーヴァーユース障害を予
防するために行事スタッフとクラブを橋渡しするコーディネーターを置いてはどうか。クラブも選手も弱い立場に
あり非協力不熱心の評価を恐れて休む事ができない事情を考慮すべきだ。
ちなみにかれらのクラブ外活動先は多岐にわたり、しかも市、地域、府の各レベルに及んでいる。営利サッカー
スクール、トレセン、選抜、代表。
さて話題をフィットネスに戻そう。かつて11,2年前神戸で国際少年サッカー大会が開催された。ブラジルから
ヴァスコ・ダ・ガマ、オランダからロッテルダム・・・等が参加したハイレヴェルな大会であったが、優勝は日本の
チーム、2回とも清水FCであった。外国のチームと日本のチームを比較して、西ドイツで修業した経験のあるF
氏が、フィットネスの差だ、と看破し喝破したのが思い出される。
実際、外国のチームは局面の技術、戦術で勝り局面を支配するが大きな展開をしないから日本のチームが裏
へ大きく蹴って走り込むと走り負けしてしまった。太めの子もいたがことごとく走り負けるのとロングキックをしな
いのが目立った。No Fitness, No Tactiics が徹底されていた。
少年のフィットネスはボールゲームをするだけで足りるが日本のチームはそれに加えてドリルで体力を鍛えて
いた。かたやオランダサッカー協会は指導指針で12歳までは、No Drill, No Tactics(戦術不可)を謳い、14
歳までは No Fitness と明記している。つまりイマジネーションの発育を最優先課題としたのである。
上記の大会には オランダを代表するスーパースター、クライファートが足跡をのこしているらしいが、むべなる
かな、と思う。負けた方が勝ったのである。