音楽療法

 

<音楽療法>


ストレスの多い現代社会の中で、ストレスリダクション(ストレスを解放する方法)として、<アロマテラピー>ヤ<クイックマッサージ>など、さまざまな方法が紹介されていますが、その中で一つの方法として<音楽療法>が注目を浴びています。欧米では、大学に<音楽療法学科>が設立され、既に多くの<音楽療法士>が活躍の場を持っています。エドワード・ポドルスキーは著書<音楽療法>に不安神経症・鬱病・神経衰弱・心身症等、さまざまな病気にあわせたクラシック音楽の処方をまとめています。<音楽療法>の多くは、クラシックを中心としていますが、<リラクセーション>や<ヒーリング>の為にはその目的に応じた<音楽>というものも必要になってくるかと思います。実際に、欧米では、スティーブン・ハルパーンやウインダム・ヒル、ナラダ・レーベル等、多くの作曲家や演奏家が<リラクセーション>のための、枠組みにとらわれない<音楽>を創造しています。すべての人に普遍的な特定の音楽があるのではなくて、そのときの感情やさまざまな環境や状況から、そのときに必要な<音>が組み合わさって<音楽>というものに成って行くのではないのでしょうか?

<音楽療法の歴史>


古代エジプト・インカ・マヤ・中国・チベット文明等の中でも、<音>と<ヒーリング>や<瞑想>との関係は、常に、密接なものでした。旧約聖書には3000年の昔、ダビデの奏でるハープの調べがユダヤの王サウルの鬱病を治したと書かれています。古代エジプトの<ヒーリング・テンプル(癒しの寺院)>では、<音楽>ヒーリングにハープが用いられ、司祭を兼ねたヒーラーたちは、婦人の受胎能力に効き目のある<音楽>を既に知っていたと言います。そして、ハープの弦の長さはきれいな黄金分割になっていて、古代エジプト新王国時代の壁画にはそのことが描かれていたと言われています。幻のインカの都と言われるマチュピチュにも、チャンティングをするための、共鳴を考えた洞窟が掘られていたと言われています。<音楽療法>はやがて古代ギリシャに伝わって、ピタゴラス・プラトン・アリストテレスといった賢人たちが論理的にこれを構築しました。彼らは、「<音楽>を運動現象として捉えて、それを聴く人の魂を動かすのだ」と考えたのです。特に、ピタゴラス学派の人々は、魂のカルタシス(浄め)を何よりも重視し、医術による身体の浄化と共に、<音楽>による感情の発散を説きました。プラトンは人間形成に音楽が欠くべからざるものであることを強調しています。中世にはいると、<医学>は境界の手に移されて、それと同時に、<音楽>も信仰の場へと移動しました。そして、近代的な医学がルネッサンスの時代から芽をふき始めると、それと同時に<音楽>も変化して、病気の予防に感情的な要因が重視されたり、怒りや悲痛や心労に変わって、希望とか幸福感とか健康の維持に有益な心的状態を<音楽>鑑賞によって創り出すことが求められたのでした。神童と言われたアマデウス・ヴォルフガング・モーツアルトは、楽譜を書くのに一度も書き直しをしませんでした。ムソログスキーは展覧会の絵の楽譜を書くのに、頭の中で鳴り響く<音楽>を書き留める、その手が間に合わなかったと言います。

<わが国での音楽療法の現状>


国内でも、CDショップに行くと、ヒーリング・ミュージックやα波ミュージック・1/fのゆらぎ・サブリミナル等と書かれた沢山のタイトルが並べられています。また、わが国の多くの音楽大学では、<音楽療法>の講義がすでに始まっていますし、いくつかの大学や音楽専門学校では<音楽療法学科>も設立されました。今後、音楽と、人々の健康の問題がより強く深くなって、さまざまな研究がなされていくものと思います。

<音楽療法協会>と<日本バイオミュージック学会>


<日本バイオミュージック学会>は聖路加国際病院院長・聖路加看護大学学長である日野原重明を会長に、河野友信・遠藤周作など、医師・看護婦・音楽家・心理学者等を中心として、音楽療法の研究と発展と教育・啓蒙・普及活動を行うことを目的として作られた学会です。東京女子医科大学のCCU(心臓病の集中治療室)では、心電図などの金属的なモニターの音のかわりに<音楽>が流れ、癌研究会附属病院では癌の手術前後の患者さんに<音楽>を用いたリラクセーションをはかっています。他にも、自閉症児や障害児の教育に、脳血管障害のこ後遺症のリハビリにと、数多くの試みがなされています。

 




 

ここで、引用した、そして、<音楽療法>を、学ぶのに最適な幾つかの本を紹介します。
<参考文献>
・音楽療法の理解:日本バイオミュージック研究会(日本音楽療法研究会)
・音楽療法の実践:日本バイオミュージック研究会(日本音楽療法研究会)
・音楽する精神 人はなぜ音楽を聴くのか?:アンソニー・ストー 白揚社
・音楽療法最前線:小松明/佐々木久夫編 人間と歴史社
・心理音響学:E・ツヴィッカー 西村書店
・アートセラピー:徳田良二・村井靖児 日本自然科学社
・音楽療法入門:櫻井仁監修 芸術現代社
・第五の医学 音楽療法:田中多門 人間と歴史社
・新音楽健康法:渡辺茂夫 誠文堂新光社
・バイオミュージックの不思議な力:貫行子 音楽之友社
・音楽療法:J・アルヴァン 音楽之友社
・フランス音楽療法:ジャック・ジョスト リブロポート
・モナリザのほほえみの謎 バイオミュージック音楽療法:井上久栄 星雲社
・音楽の霊性:ピーター・バスティアン 工作舎
・モーツアルトを科学する:アルフレッド・トマティス 日本実業出版社
・音楽療法の基礎:村井靖児 音楽之友社
・応用音楽療法:渡辺茂夫 學藝書林
・音楽の魔力:山松質文 チクマ秀版社
・こころに効く音楽:村井靖児 保健同人社
・音楽効果:水野和彦 情報センター出版局
・超人ピタゴラスの音楽魔術:斉藤啓一 学研
・モーツアルトを聴く人:谷川俊太郎 小学館