さて今回は、2003年の11月に催された、第32回東京モーターショウでの写真をもとに、各社からデビュー間近となった50ccスクーター用のフューエルインジェクションシステムを中心に見てみたいと思います。

●まずはこれ。ホンダブースの一角に展示されていた、スマートDioZ4・PGM−FIです。ホンダでも原付スクーターを始め小排気量バイクのインジェクション化は、環境技術への取り組みとして紹介されていました。
●このユニットは「5−CR」という型番のケイヒン製で、従来のスマートDioのキャブレター/インテイクマニホールドに替わって取り付けられそうです。
右側の四角い部分がスロットルボディコンポーネント、左側の電極カプラとパイプジョイントがある部分がインジェクターのようです。
ヤマハ・スズキでは今のところここまで市販可能と思われるモデルは発表されていません。原付の4ストローク化で先行したホンダが、また1歩リードするかたちになりそうですね。
●右の写真は、スロットルボディコンポーネントのカットモデルです。コンパクトにまとめられており、従来のキャブレター仕様からの変更を容易にしているようです。
このコンポーネントに搭載されているのは何なのか。現在のところ詳細不明ですが、スロットルポジションセンサーの他にも機能を持っていそうです。
何かがあるのが、カット面でわかりますね。吸気温度か、空気量のセンサーでしょうか?それともバイパスエアバルブ?
●左の写真は、インジェクターと思われる部分です。電磁コイルがニードルを上下させ、あらかじめ燃料ポンプで加圧された燃料が細い穴を通して霧化されながら出てくるという構造です。
このインジェクターで噴射される燃料の最大量が決まります。50ccのエンジンにはそれに適した容量のものが必要とされますが、これまでは適合するサイズのものは殆どなかったようです。この製品化にあたって、新たに開発されたもののようですね。
●右の写真は、燃料ポンプコンポーネントです。燃料タンク内に設置されています。こちらもスロットルボディのコンポーネントと同様の考え方で、燃料ポンプ・燃料レベルセンサ、更に燃料タンクまでを一体のユニットとしてコンパクトに扱うことができるようになっています。
燃料ポンプはキャブレターのモデルに対してサイズが大きくなっています。これはインジェクション化にあたって、より高圧で燃料を送る必要があるためなのでしょうか。
●尚、インジェクションのエンジンを排気量アップさせるような場合には、原則的には吸気量センサによって補正されます。しかしインジェクターの最大容量を超える燃料が必要とされるような場合には、インジェクターそのものをそれに適したものに交換する必要があります。しかしベースが50ccの場合、より大きな排気量のインジェクションモデルが他にありますから、それらを応用することで容量アップが可能そうですね。
●またこのZ4のエンジンは、吸気経路が非常に細いのがわかります。もともとクレア系のエンジン自体がこのくらいの細さだったのではないかと思われますが、もっと太く・短くしてみたくなるかもしれません。
その場合、最低でもエンジンコントロールユニット(Engne
Contlorl Unit:以下「ECU」と略)のプログラミング補正が必要になると思われます。
他の部分は流用などによってサイズアップが可能そうですが、このECUだけは個々にあわせた仕様が必要となりそうです。
●この部分、実は従来のキャブレター仕様でも高度な調整が必要とされていたのです。しかしキャブレターでは空気の流れを利用してやっていたので、各部のジェット経路の口径をカンによって調整するのが普通で、目に見えず複雑な分野ではありました。
これがECUによる調整となることで、直に目に見える数字で行うことになります。これによってよりわかりやすいかたちでの調整が可能になると見込んでいます。


●こちらはケイヒンのブースです。まず目に飛び込んでくるのがこの、レース用のインジェクションシステムです。
このシステムは、実績のあるFCRキャブをベースに開発されたもののようでした。その名も「FCR−i」
スロットルボディそのものはFCRキャブと良く似ています。インジェクターが単体で飛び出すように配置されています。
これは展示用だからじゃないのかな・・・とか思っていたのですが、他のブースで展示されていたF1用エンジンでも同じ様なことになっていました。ということは、この配置のまま使っているのでしょうか???
同じ様なスロットルボディーを使ったシステムが同じブースの他の場所にもあったのですが、こちらは一般的な位置にインジェクターがついているようでした。普通の市販車両に使う場合はこういうタイプになるのでしょうか?

(左:レーシングFCR−iのアップ / 右:フェラーリF1エンジンのインジェクター部)

(FCR−i 市販車両搭載型?)
●ケイヒンブースにも、スマートDioZ4についていたものと同じユニットが展示されていました。
こちらでは、他の排気量向のラインナップといっしょに、シリーズで展示してありました。これはもしかしたら・・・やはり同じシリーズを搭載する排気量の大きなモデルとの、インターフェイスの互換性があるという事でしょうか?
えーと、ちょっと手に持ってみたり。。。よかったのかなあ
バタフライ弁を採用していることや、サイズが具体的にわかると思います。口径でいくと12ミリくらい?
あ・・・これはスロットルボディコンポーネントだけですから、これとは他にインジェクターを付ける必要がありますよ。

(ちょっと手にとってみました。)

(「KEIHIN 5−CR」がユニットの名前のようです。)

(燃料ポンプコンポーネント単体)
●こちらは、ミクニのブースです。
ここではなんと、ジョルカブのフレームごとエンジンのカットモデルが中央に展示されていました!
ミクニでは、ケイヒン以上に50cc用のインジェクションシステムをアピールする姿勢のようです。
また、ミクニブースはケイヒンに比べてブースそのものは小さいものの、より親切でわかりやすい展示がなされていてとてもありがたく感じました。
このミクニのシステム、なんとPDAでのダイレクトモニタリングをもさせた状態で展示されていたのです!どうやら設定変更もPDAでできちゃう???
これってスバラシイ事です。まさに理想的なインターフェイスに近いのではないでしょうか!
話を聞くと、このシステムも来春のモデルに搭載されて発売だそうです。この展示の様子では、カブ系にまずラインナップされるのかな?
あとミクニのキャブを採用しているヤマハのスクーターとの関連もあるのかもしれませんね。
●これがミクニのブースでの展示。解説図に実物をつけて、とても親切でわかりやすくなっています。
これでどんなセンシングをする必要があるのかがわかります。クランク角センサーやエンジン温度(空冷なのでシリンダーそのものの温度をセンシング)、排気のO2センサーも装備しているようです。
あと、燃料ポンプコンポーネントはケイヒンのものと同様のタンク内蔵タイプの他、パイプラインに割り込ませるタイプのものもあるようです。

(「DCP」というミクニのシステム)

(バイパスエアバルブ・スロットルポジションセンサが一体化
/エンジン温度センサーはシリンダ温度を直にセンシング)

(PDAのモニタリング画面/2種類の燃料ポンプモジュール)

(PDAのモニタリング画面表示)
 

●次はインジェクションでもスクーターでもないのですが、ミツバにあったちょっと凄いエコランカーです。

●これは一見、ただの燃費競技のマシンに見えますが、なんと燃料電池搭載車なのです。燃料電池車は大手の自動車メーカーのものだけではないのです。
コンパクトに納められた燃料電池及び補機類、高効率を意識したホイールダイレクトドライブのモーター。水素タンクは水素貯蔵合金など、興味深い技術を搭載したマシンです。

(電源・モーターコントローラ関係)

(ホイールインモーターもコンパクト)
●他にはこんなものも・・・

(左:樹脂製の油圧シリンダー。軽い?/右:電動ブレーキキャリパ)

(スカイウェイブ650のエンジンと電子制御CVTをまるごと搭載した手作りフォーミュラカー。
軽自動車のエンジンやCBRのエンジンを搭載したフォーミュラと同じクラスで競っているそうです。スカイウェイブのミッションのコントロールユニットを独自プログラムに変更しているのだとか。
このマシンで燃費競技や0−75mといった種目があるんだそーです。
これってある意味、究極のスクーターなのではないでしょうか!?) |


(これは輸入車らしい三輪自動車です。スクーターのエンジンをまるごとフロントフォークとして搭載しているようです。フロントフォークからマフラーのタイコが覗いてる姿はちょっと圧巻) |
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※改造は、自分の責任にて行いましょう。
安全第一、ルールを守って楽しい改造ライフを。無限会社A工房の願いです。

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−KEIHIN−
37回東京モーターショーにケーヒンブース出展

(株)ミクニ
”夢をかたちに ときめきに”

株式会社 ミツバ
東京大学
フォーミュラファクトリー |