田端と聞くとJRの操車場が広がっている街という印象を受けるが…、ここ田端は明治のおわりから昭和のはじめ頃までは多くの文士が住み「田端文士村」と呼ばれていた時期があった。室生犀星をはじめとして、芥川龍之介・堀辰雄・土屋文明・佐多稲子・菊池寛などんの名士がここに居を構えていた。

 芥川龍之介は自分にとっては特別な作家である。中学に入ってすぐの読書感想文で、自分なりにかなり背伸びをして、芥川龍之介の「河童」を読んで書いた。悲しいかな…、そこでは芥川龍之介を"茶"川龍之介と書いてしまって恥ずかしい思いをしたことを思い出してしまった。

 歩いていると、花屋の店頭のクマのぬいぐるみに「少しずつ秋の気配を感じるようになりましたね。身近な所を秋探ししてみませんか…。」とメッセージがつけられていた。
 秋の気配か…と思いながら路地を曲がると、道に柿の実が落ちていた。見るとキスマークつきである。見上げるとカラスが気まずそうにこちらを見ていた。

 住宅街に歓声が聞こえ、行ってみると…、保育園で運動会をやっていた。お遊戯で園児の「河童」の踊りがあった。

"秋"の運動会に「河童」か…、と田端にしてやられたと思った。


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